166 / 255
17章 隊服
3
しおりを挟む
二日後。
お休みをいただいたわたしは、ルーク様をお見送りした後、お仕着せからワンピースに着替えて出掛ける準備をする。
何故、お休みなのにルーク様のお見送りはするのかって?
だって、いつも通りに振る舞わないと、ルーク様は怪しむから。
最近、ルーク様はわたしの行動に慣れてきたみたい。
というか、ジーナの頃のちょっと後先考えないような行動をニーナであるわたしもすると考えているようだ。
当たりだけどね。
人間、一度死んだからって、そうそう性格が変わるわけじゃない。だって、何をしたってわたしはわたしだから。
だから、ルーク様がダメだって言っても、わたしは討伐当日はルーク様のお側にいる! 絶対に!
意気込んだわたしが向かった先は、王都中心にある大聖堂だ。
陽の光を浴びて、ステンドグラスの窓がキラキラと光るそれは、荘厳な威圧感を持っている。
街の教会も綺麗なステンドグラスがはまっているけど、やはり大聖堂は纏う雰囲気も違っていた。
街の教会はミサをしたり、告解室で懺悔を聞いてくれたりと街の人に開かれているけれど、教会の総本山はどうなんだろう……。
物陰に隠れて、教会の様子を見ていると、白い聖職者のローブを着た男の人が出てきて、教会の前の掃除を始めた。
男の人は、屈んで教会の入り口などの拭き掃除をしている。
顔が見えないのではっきりとは言えないけど、若い人ではなさそう。
でも、丁寧に門を拭いている様子を見て、わたしはその人に話しかけることを決めた。
だって、誰も見ていないのに、あんなに丁寧に掃除をするってことは、いい人に決まっているもの。
建物の陰から出て、そっとその人に近付いて行く。
えーと、なんて声を掛けようか。
やっぱり、懺悔を聞いてもらいたいと言うのが一般的かな。
「あの、」
わたしが声を掛けると、その人は振り返る。
実際には普通に振り向いただけなんだけど、わたしの目にはその様子がスローモーションでこちらを振り向いたように見えた。
だって、だって……
「お、父様……」
口をついて言葉が出てしまう。
わたしの方に振り向いたその顔は、前世のジーナのお父様だった。
わたしの記憶の中のお父様は、もっと若くて、いつだって毅然とした態度で仕事にもわたしたち子どもにも接していたけど、今のお父様は髪は全て白髪となっていて、お顔は皺が増えていたけど柔和な顔付きになっていた。
わたしの記憶の中のお父様よりお年を召していらっしゃるけど、間違いなくこの人はお父様だ。
わたしの頭は混乱する。
何故、こんなところで掃除をしているの?
何故、教会の人間であることを示す白いローブを着ているの?
次の言葉が告げられなくなったわたしを、お父様はじっと見つめる。
少し屈んでわたしの瞳を覗き込むと、お父様は安心したような笑顔を見せた。
「ああ、やっぱりジーナだ。やっと還ってきたんだね。おかえり」
お父様はそう言って皺の深くなったお顔で微笑むと、立ち上がってわたしをきゅっと抱きしめた。
混乱するわたしの頭に、お父様の涙がひとつこぼれ落ちた。
*****************
みなさま、こんにちは。
前回の更新の時に、夏休み中は更新不定期ですと記載をいたしましたが、申し訳ありません。
不定期どころか一度も更新できませんでした…。。。
家族全員夏休みで家に居ましたが、なんとなく側をウロチョロしている気配がすると、書き進めることができなくて…
まだ、しばらく不定期になりますが、最終回まで更新がんばります!
どうぞよろしくお願いします。
雪野 結莉
お休みをいただいたわたしは、ルーク様をお見送りした後、お仕着せからワンピースに着替えて出掛ける準備をする。
何故、お休みなのにルーク様のお見送りはするのかって?
だって、いつも通りに振る舞わないと、ルーク様は怪しむから。
最近、ルーク様はわたしの行動に慣れてきたみたい。
というか、ジーナの頃のちょっと後先考えないような行動をニーナであるわたしもすると考えているようだ。
当たりだけどね。
人間、一度死んだからって、そうそう性格が変わるわけじゃない。だって、何をしたってわたしはわたしだから。
だから、ルーク様がダメだって言っても、わたしは討伐当日はルーク様のお側にいる! 絶対に!
意気込んだわたしが向かった先は、王都中心にある大聖堂だ。
陽の光を浴びて、ステンドグラスの窓がキラキラと光るそれは、荘厳な威圧感を持っている。
街の教会も綺麗なステンドグラスがはまっているけど、やはり大聖堂は纏う雰囲気も違っていた。
街の教会はミサをしたり、告解室で懺悔を聞いてくれたりと街の人に開かれているけれど、教会の総本山はどうなんだろう……。
物陰に隠れて、教会の様子を見ていると、白い聖職者のローブを着た男の人が出てきて、教会の前の掃除を始めた。
男の人は、屈んで教会の入り口などの拭き掃除をしている。
顔が見えないのではっきりとは言えないけど、若い人ではなさそう。
でも、丁寧に門を拭いている様子を見て、わたしはその人に話しかけることを決めた。
だって、誰も見ていないのに、あんなに丁寧に掃除をするってことは、いい人に決まっているもの。
建物の陰から出て、そっとその人に近付いて行く。
えーと、なんて声を掛けようか。
やっぱり、懺悔を聞いてもらいたいと言うのが一般的かな。
「あの、」
わたしが声を掛けると、その人は振り返る。
実際には普通に振り向いただけなんだけど、わたしの目にはその様子がスローモーションでこちらを振り向いたように見えた。
だって、だって……
「お、父様……」
口をついて言葉が出てしまう。
わたしの方に振り向いたその顔は、前世のジーナのお父様だった。
わたしの記憶の中のお父様は、もっと若くて、いつだって毅然とした態度で仕事にもわたしたち子どもにも接していたけど、今のお父様は髪は全て白髪となっていて、お顔は皺が増えていたけど柔和な顔付きになっていた。
わたしの記憶の中のお父様よりお年を召していらっしゃるけど、間違いなくこの人はお父様だ。
わたしの頭は混乱する。
何故、こんなところで掃除をしているの?
何故、教会の人間であることを示す白いローブを着ているの?
次の言葉が告げられなくなったわたしを、お父様はじっと見つめる。
少し屈んでわたしの瞳を覗き込むと、お父様は安心したような笑顔を見せた。
「ああ、やっぱりジーナだ。やっと還ってきたんだね。おかえり」
お父様はそう言って皺の深くなったお顔で微笑むと、立ち上がってわたしをきゅっと抱きしめた。
混乱するわたしの頭に、お父様の涙がひとつこぼれ落ちた。
*****************
みなさま、こんにちは。
前回の更新の時に、夏休み中は更新不定期ですと記載をいたしましたが、申し訳ありません。
不定期どころか一度も更新できませんでした…。。。
家族全員夏休みで家に居ましたが、なんとなく側をウロチョロしている気配がすると、書き進めることができなくて…
まだ、しばらく不定期になりますが、最終回まで更新がんばります!
どうぞよろしくお願いします。
雪野 結莉
2
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる