もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

文字の大きさ
161 / 255
16章 討伐前

討伐前会議

しおりを挟む
いつ来ても城の会議場というのは息が詰まる。

昨日までニーナと楽しく旅行をしていたから、その落差もあるだろう。

義兄上と共に席に着く。

円卓には、この国の宰相、騎士団団長、副団長、近衛隊隊長、そして、それぞれの地域の領主が席に着いていた。
真ん中の、一際大きな椅子には、国王、王太子、光の討伐隊取りまとめのローゼリアが座っている。

全員揃ったところで宰相が立ち上がり、議事進行を務める。

「討伐の日程についてですが、以前からの話を鑑みまして、3ヶ月後とさせていただきます。これについては、デイヴィス侯爵子息討伐隊隊長のいつでも討伐に行けると言う言葉を信じて、日程を決めております。3ヶ月後のこの日ではいかがでしょう」
宰相は円卓の上に大きな暦を広げて、青の月の13日を指さした。

今はまだ赤の月の13日だ。今日からちょうど3ヶ月後に設定をするというわけだな。
まったく。
少しは余裕を持てばいいものを。

以前に討伐の日程を話し合ったときには、ニーナから光の加護をもらえると思っておらず、適当なことを言ってしまったが、ニーナと連携の訓練をしなければならない。もう少し余裕があればよかったのだが……。

しかし、これ以上延ばしてもどうなるかわからない。
王族もうるさいだろうし、ここは、根を詰めてやるしかないだろう。

「問題ありません」

オレは、問題ありを隠すよう、キッパリと言い切った。

「では、大蔵大臣より、討伐費用の目算をお話いただきます」
「では、討伐隊の後方支援としての騎士団の編成を考えましょう」
「では、万が一のために近衛の配置をどうするか」

それぞれが自分の役目を果たし、会議は進んでいく。

オレたち討伐隊は王都から少し離れた結界の張られた森の中へほぼ全員行くので、王都の市民やそれぞれの領地の守りはそれぞれで担う。

魔物の森の結界の外に、討伐塔があり、そこを拠点としてオレたちは動く。
もちろん、光の討伐隊は討伐塔で待機して、加護が切れた隊士に新たに加護を与えるのだ。

討伐隊と騎士団で守りの配置をしていく。
討伐塔は討伐隊2名と騎士団で守りを固めるのだ。

「討伐塔はロレンスとアランが守りに着く。この二人は機動力に欠けるため森の中へ入るのは向かないが、その場を動かず守るというのなら、この2人が適任だろう。安心して任せられる」
義兄上が副隊長として、騎士団団長と話す。

「騎士団は街の方にも人員を割かなければならないからな。討伐塔の護衛は10名と考えているが、どうだろう」
「結界から魔獣が逃げ出すことがないとは言い切れないが、今代の討伐隊は精鋭揃いだ。魔獣が逃げ出すことはないだろう。万が一の備えであれば、それだけ居れば大丈夫だろう」

そして、団長から10名の騎士の名が挙げられ、みんなが納得をし、空気が落ち着いた時に、ローゼリアの声が会議場に響いた。

「わたくしは光の討伐隊を率いる者として、副隊長が討伐塔の護衛をすることを希望します」

ざわっ、と会議場全体が揺れた。

「畏れながらローゼリア様。我が討伐隊の副隊長はオレの片腕だ。討伐中に片腕をもがれては仕事ができない。魔獣が結界の外に出るのは通常で行けば、ありえない。討伐塔や市街に護衛を配置するのは、本当に万が一の事を考えているからだ。それを、隊の中で隊長オレに次いで実力のある副隊長を護衛に回すなんてありえない!」

オレの言葉に王太子が反応する。

「おかしいぞ、ルーク。王族であるローゼリアが討伐に加わること事態が異例なんだ。最強の英雄でないと魔物が倒せないから、おまえが護衛に付けないのはわかる。だが、ナンバー2の実力を持つ者が、ローゼリアを護るのは当然のことであろう」
「そもそも、討伐がうまくいけば森の外に魔獣が出ることはないんだ。静も動もこなす優秀な人員を仕事がないかもしれない護衛にまわすことなどできない」

オレと王太子が睨み合っていると、今まで言葉を発しなかった国王が口を開く。

「ルークよ、討伐が近く気が立っているのはわかる。だが、おまえが一番に護る者はローゼリアではないのか」
「しかし、陛下」
オレが反論しようとすると、義兄上がオレの上着の裾を引っ張った。

「ルーク様、オレは構わない。討伐塔の護衛をしよう」
「義兄、オリバー殿……」

いつものように義兄上と言いそうになり、慌てて言い方を変える。
以前、王太子の前で義兄上と呼んでしまい、大変不評を買ったからだ。
その後しばらく、義兄上は王太子にいびられていた。

義兄上はにこりと笑う。

「オレは討伐の方にも参加しなければなりません。しかし、一番見渡せるところにいて、討伐塔に危険が及ぶことがあれば、一番に駆けつけましょう」
義兄上の言葉に、王太子は眉を寄せる。
「ローゼリアの側でずっと護衛をするわけではないのか?」
「オレが森に一度も入らずに済めばいいのですが、それでは他の隊士には厳しいでしょう。森の中に入り、何体か倒したらすぐに様子を見に討伐塔に行くようにします。ことが起これば、すぐに対応しますよ」

国王と王太子は、渋い顔をしながらもそれを了承した。
ローゼリアは、副隊長が現場を離れる時間があるなら討伐塔の隊士を二人増やせと言い、オレがそれを了承することで、この場は収まったのだった。





会議が終わり、城を出た後で、オレは義兄上に問いただした。
「何故、あんな無茶苦茶なローゼリアの戯言を受けようとしたんですか」

オレの言葉に義兄上はにこりと笑う。

「ご本人のご希望なんだ。叶えてやらなくちゃいけないよな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

転生皇女はフライパンで生き延びる

渡里あずま
恋愛
平民の母から生まれた皇女・クララベル。 使用人として生きてきた彼女だったが、蛮族との戦に勝利した辺境伯・ウィラードに下賜されることになった。 ……だが、クララベルは五歳の時に思い出していた。 自分は家族に恵まれずに死んだ日本人で、ここはウィラードを主人公にした小説の世界だと。 そして自分は、父である皇帝の差し金でウィラードの弱みを握る為に殺され、小説冒頭で死体として登場するのだと。 「大丈夫。何回も、シミュレーションしてきたわ……絶対に、生き残る。そして本当に、辺境伯に嫁ぐわよ!」 ※※※ 死にかけて、辛い前世と殺されることを思い出した主人公が、生き延びて幸せになろうとする話。 ※重複投稿作品※

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...