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15章 加護
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ワゴンに乗せておいたものに、温めたものを追加で乗せて、ルーク様のお部屋へと急いだ。
ノックをしてお部屋に入ると、ルーク様は部屋着に着替え、ラフな格好で出迎えてくれる。
いつものように、少しドアを開けておいたら、ルーク様にしっかり閉めるように言われる。
演習場での話をしたいそうだ。
そう言われて、わたしは素直にドアを閉めてから、テーブルまでワゴンを押して行った。
「あれ? ニーナの分は?」
「わたしは後でいただきますから」
「一緒に食べたいって言っただろう?」
そんなこと言われても、元はジーナと言えど、使用人なので、なかなか本気でルーク様と一緒にお食事なんてしずらい。
不貞腐れるルーク様をよそに、わたしはどんどんテーブルに食事を並べていった。
ルーク様は渋々テーブルに着く。
並べ終わったところで、ルーク様はフォークを手に、首を傾げた。
「なんですか? ルーク様、何か不手際がありましたか?」
「ああ、ちょっとこれを見てごらん」
「え? どれですか?」
「ほら、ここにきて。これこれ」
わたしの目には、まだ何が不手際か見えて来ない。
ルーク様と同じ目線で見るために、テーブルを見ながらルーク様に近付くと、後ろからいきなりルーク様に抱きしめられ、そのまま膝の上に乗せられた。
「ルっ、ルーク様! 何やってんですか!?」
「んー? 膝抱っこ」
「ちょっと、離してください! これじゃ、ルーク様がお食事できません」
「できるできる」
ルーク様はわたしを膝に抱えたまま、器用にローストビーフを切り分け、口へと運ぶ。
「うん。うまいよ」
ゆっくりと味わうと、また切り分けて、今度はわたしの口へと運んだ。
「あの、食べさせてもらうのなんて、恥ずかしいんですが……」
「ちゃんと自分の分を持ってこなかった罰だよ。大人しく口を開けて」
あーん、とルーク様に言われてしまえば、わたしに抗う術はなく。
もぐもぐ。
あー、美味しい。
もうやけ気味で、ルーク様から口に入れられる食べ物を頬張った。
お腹もいっぱいになり、背中にルーク様の温もりを感じて、わたしはうとうととし始めてしまった。
「ルークさ、ま。立たせてください。この、ままじゃ、寝て……しまい、ま……すぅ」
がんばって言葉を絞り出すけど、ルーク様は離してくれない。
わたしの首筋に口元を寄せて、何かを囁いている。
いるけど、眠いわたしの脳は、その言葉を理解できなかった。
「今日はありがとう。ニーナ。疲れたろう。このままおやすみ」
もう、その頃には完全にわたしは夢の中へ旅立って行った。
くーっ、くーっ、恥ずかしいけど寝息が出ている。
そのまま、横抱きにされて、わたしはルーク様のベッドに横たわった。
靴を脱がされて、上掛けを掛けられる。
そして、ルーク様もその横に入ってきて、わたしを抱き枕のように抱きしめて、ルーク様の手がランプを消そうとした時、ダンダンっと激しいノックの音がした。
不機嫌にルーク様がドアを開けると、フランクさんとサリーさんが部屋の中に入ってくる。
「ニーナはまだ嫁入り前の娘です。いくらルーク様と言えど、寝室に連れ込む等、言語道断です」
フランクさんはそう言うと、サリーさんをベッドに向かわせた。
「ニーナはオレが嫁にもらうが?」
ルーク様が不機嫌そうに言うと、フランクさんがバシッと嗜める。
「そんなことは王女との婚約を破棄なさってからおっしゃってください。身辺整理をきちんとしてからでないと、悪く言われるのはニーナなんですぞ」
「わかってるよ」
フランクさんは笑顔でルーク様に言う。
「おわかりでしたら結構。では、ニーナは連れて帰ります」
サリーさんがルーク様のベッドに寝ているわたしを抱いて、フランクさんがそれを助けながら、ルーク様の部屋を出た。
夢うつつでいたわたしは、これが夢の出来事か、実際の出来事かはわからない。
ノックをしてお部屋に入ると、ルーク様は部屋着に着替え、ラフな格好で出迎えてくれる。
いつものように、少しドアを開けておいたら、ルーク様にしっかり閉めるように言われる。
演習場での話をしたいそうだ。
そう言われて、わたしは素直にドアを閉めてから、テーブルまでワゴンを押して行った。
「あれ? ニーナの分は?」
「わたしは後でいただきますから」
「一緒に食べたいって言っただろう?」
そんなこと言われても、元はジーナと言えど、使用人なので、なかなか本気でルーク様と一緒にお食事なんてしずらい。
不貞腐れるルーク様をよそに、わたしはどんどんテーブルに食事を並べていった。
ルーク様は渋々テーブルに着く。
並べ終わったところで、ルーク様はフォークを手に、首を傾げた。
「なんですか? ルーク様、何か不手際がありましたか?」
「ああ、ちょっとこれを見てごらん」
「え? どれですか?」
「ほら、ここにきて。これこれ」
わたしの目には、まだ何が不手際か見えて来ない。
ルーク様と同じ目線で見るために、テーブルを見ながらルーク様に近付くと、後ろからいきなりルーク様に抱きしめられ、そのまま膝の上に乗せられた。
「ルっ、ルーク様! 何やってんですか!?」
「んー? 膝抱っこ」
「ちょっと、離してください! これじゃ、ルーク様がお食事できません」
「できるできる」
ルーク様はわたしを膝に抱えたまま、器用にローストビーフを切り分け、口へと運ぶ。
「うん。うまいよ」
ゆっくりと味わうと、また切り分けて、今度はわたしの口へと運んだ。
「あの、食べさせてもらうのなんて、恥ずかしいんですが……」
「ちゃんと自分の分を持ってこなかった罰だよ。大人しく口を開けて」
あーん、とルーク様に言われてしまえば、わたしに抗う術はなく。
もぐもぐ。
あー、美味しい。
もうやけ気味で、ルーク様から口に入れられる食べ物を頬張った。
お腹もいっぱいになり、背中にルーク様の温もりを感じて、わたしはうとうととし始めてしまった。
「ルークさ、ま。立たせてください。この、ままじゃ、寝て……しまい、ま……すぅ」
がんばって言葉を絞り出すけど、ルーク様は離してくれない。
わたしの首筋に口元を寄せて、何かを囁いている。
いるけど、眠いわたしの脳は、その言葉を理解できなかった。
「今日はありがとう。ニーナ。疲れたろう。このままおやすみ」
もう、その頃には完全にわたしは夢の中へ旅立って行った。
くーっ、くーっ、恥ずかしいけど寝息が出ている。
そのまま、横抱きにされて、わたしはルーク様のベッドに横たわった。
靴を脱がされて、上掛けを掛けられる。
そして、ルーク様もその横に入ってきて、わたしを抱き枕のように抱きしめて、ルーク様の手がランプを消そうとした時、ダンダンっと激しいノックの音がした。
不機嫌にルーク様がドアを開けると、フランクさんとサリーさんが部屋の中に入ってくる。
「ニーナはまだ嫁入り前の娘です。いくらルーク様と言えど、寝室に連れ込む等、言語道断です」
フランクさんはそう言うと、サリーさんをベッドに向かわせた。
「ニーナはオレが嫁にもらうが?」
ルーク様が不機嫌そうに言うと、フランクさんがバシッと嗜める。
「そんなことは王女との婚約を破棄なさってからおっしゃってください。身辺整理をきちんとしてからでないと、悪く言われるのはニーナなんですぞ」
「わかってるよ」
フランクさんは笑顔でルーク様に言う。
「おわかりでしたら結構。では、ニーナは連れて帰ります」
サリーさんがルーク様のベッドに寝ているわたしを抱いて、フランクさんがそれを助けながら、ルーク様の部屋を出た。
夢うつつでいたわたしは、これが夢の出来事か、実際の出来事かはわからない。
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