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15章 加護
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「サリーさん、ルーク様のお部屋のお掃除終わりました。応接室のお支度お手伝いいたしましょうか?」
昨夜はバタバタとしてしまったが、ルーク様を送り出したら、わたしは侍女としての仕事に戻る。
しばらくミラー子爵家に居たから、少し体もなまっているし。
「え、あぁ、そうね。では、お願い」
サリーさんはわたしを見て少しびっくりしたようだけど、応接室とメインダイニングの飾り付けを手伝うように指示を出した。
わたしがお願いしたんだけど、今日はルーク様のお客様である、ミラー子爵家嫡男のお兄様がいらっしゃるから、綺麗に調度品を整えたりしている。
大きな花瓶にお花を生けたりしていると、サリーさんはじっとわたしの動きを見ていることに気がついた。
「……サリーさん、わたしの顔に何かついてます? さっきもなんか驚いたようなお顔してましたよね?」
「はっ、え、あ、いえね、ほんとにニーナはジーナ様なんだなって、思って」
「はい?」
「ううん。あのね、わたしの中のジーナ様はね、ルーク様のことを一番に考えてくださって、ルーク様の頑なな心を溶かしてくださった方なの。改めてニーナの行動を見ていると、本当にジーナ様と重なるのよ。だから、こんな使用人の仕事をさせてしまっていいのかしらと……」
とまどいながらもそう言う。
「サリーさん、よく見てください。わたしは何も変わっていませんよ? 最初からジーナの記憶を持ったニーナでした。だから、今まで通りにしてもらえたら嬉しいです。使用人のお仕事も、バリバリやりますよ!」
わたしがそう言うと、サリーさんはしばらくわたしの顔を見ていたけど、ふんわりと笑った。
「そうね。何も変わらないわね。じゃ、オリバー様をお迎えするために、がんばって綺麗にしましょう」
「はいっ!」
あ、そうそう。
ゼンに言っとかなきゃ。
お夕飯、お兄様の分も必要だって料理長に伝えてもらわないと。
お兄様リクエストのぶ厚いステーキ分は、後でこっそりお金渡しとかなきゃ。
く~っ。わたしは薄給なんだからねっ! お兄様!
応接室と、お兄様がルーク様と一緒に夕食を取られるだろうダイニングは綺麗にして、それが終わった後でサリーさんとフランクさんとで少し打ち合わせをした。
今後、わたしは朝の仕事をしてルーク様の後を追う。
演習場で剣に光の加護を付与する魔法を使い、帰ってきてからルーク様の身の回りのことをして、1日が終わる感じになる。
もちろん、昼間はほとんどお屋敷にいないので、その間働いてくれる人を頼むことになるのだけれど、ルーク様のお世話はわたしがするので、わたしが雇われた時のように慎重に探すわけではなく、昼間だけのパートさんを雇うらしい。
もし見つからなければ、本館から応援を頼んでもいいってフランクさんは言っていた。
さあ!
お兄様を迎える準備はできたわ!
なんと言ってお兄様を丸め込もう。
きっと、ルーク様に反対するように言われてるだろうから、お兄様もわたしが演習場に行くのは反対するかも知れない。
でも、わたしの決意は変わらない。
なんとしてでも、ルーク様のお力になるのよ!
いざとなれば、お兄様の幼少期の恥ずかしい過去をバラすと脅してでも、説得しなきゃ。
あーでもないこーでもない。脅しのネタはどれがいいかと、悩んでいるうちに夜になり、ルーク様とお兄様がお屋敷に帰ってきた。
「おかえりなさいませ」
わたしはデイヴィス家の使用人らしく、丁寧にお迎えをして、お兄様をダイニングへとお通しした。
ルーク様は着替えに一度お部屋に戻ると言って、お部屋に入って行った。
ダイニングの椅子を引き、お兄様をそこへ促す。
「すぐにルーク様は来ると思いますので、まずはごゆっくりなさってください」
そう言って腰を折ると、お兄様は目を細めてわたしを見つめた。
「? どうかなさいました?」
「いや、ミラー家で迎えられるのもアットホームでよかったけど、ちゃんとデイヴィス家にきたら、格式高いデイヴィス家の侍女っぽくていいなと思って。あのそそっかしいジーナが侍女をやってるなんて心配したが、これなら大丈夫だな」
にこにこと、兄妹の温かい空気が流れる。
そんなに妹であるわたしのことを心配してくれてたんだ。
お兄様はお変わりなく、昔からのお優しいお兄様ですよ。
なんかちょっと、昔のことをネタに脅すのは、申し訳ないかなって気分になった。
昨夜はバタバタとしてしまったが、ルーク様を送り出したら、わたしは侍女としての仕事に戻る。
しばらくミラー子爵家に居たから、少し体もなまっているし。
「え、あぁ、そうね。では、お願い」
サリーさんはわたしを見て少しびっくりしたようだけど、応接室とメインダイニングの飾り付けを手伝うように指示を出した。
わたしがお願いしたんだけど、今日はルーク様のお客様である、ミラー子爵家嫡男のお兄様がいらっしゃるから、綺麗に調度品を整えたりしている。
大きな花瓶にお花を生けたりしていると、サリーさんはじっとわたしの動きを見ていることに気がついた。
「……サリーさん、わたしの顔に何かついてます? さっきもなんか驚いたようなお顔してましたよね?」
「はっ、え、あ、いえね、ほんとにニーナはジーナ様なんだなって、思って」
「はい?」
「ううん。あのね、わたしの中のジーナ様はね、ルーク様のことを一番に考えてくださって、ルーク様の頑なな心を溶かしてくださった方なの。改めてニーナの行動を見ていると、本当にジーナ様と重なるのよ。だから、こんな使用人の仕事をさせてしまっていいのかしらと……」
とまどいながらもそう言う。
「サリーさん、よく見てください。わたしは何も変わっていませんよ? 最初からジーナの記憶を持ったニーナでした。だから、今まで通りにしてもらえたら嬉しいです。使用人のお仕事も、バリバリやりますよ!」
わたしがそう言うと、サリーさんはしばらくわたしの顔を見ていたけど、ふんわりと笑った。
「そうね。何も変わらないわね。じゃ、オリバー様をお迎えするために、がんばって綺麗にしましょう」
「はいっ!」
あ、そうそう。
ゼンに言っとかなきゃ。
お夕飯、お兄様の分も必要だって料理長に伝えてもらわないと。
お兄様リクエストのぶ厚いステーキ分は、後でこっそりお金渡しとかなきゃ。
く~っ。わたしは薄給なんだからねっ! お兄様!
応接室と、お兄様がルーク様と一緒に夕食を取られるだろうダイニングは綺麗にして、それが終わった後でサリーさんとフランクさんとで少し打ち合わせをした。
今後、わたしは朝の仕事をしてルーク様の後を追う。
演習場で剣に光の加護を付与する魔法を使い、帰ってきてからルーク様の身の回りのことをして、1日が終わる感じになる。
もちろん、昼間はほとんどお屋敷にいないので、その間働いてくれる人を頼むことになるのだけれど、ルーク様のお世話はわたしがするので、わたしが雇われた時のように慎重に探すわけではなく、昼間だけのパートさんを雇うらしい。
もし見つからなければ、本館から応援を頼んでもいいってフランクさんは言っていた。
さあ!
お兄様を迎える準備はできたわ!
なんと言ってお兄様を丸め込もう。
きっと、ルーク様に反対するように言われてるだろうから、お兄様もわたしが演習場に行くのは反対するかも知れない。
でも、わたしの決意は変わらない。
なんとしてでも、ルーク様のお力になるのよ!
いざとなれば、お兄様の幼少期の恥ずかしい過去をバラすと脅してでも、説得しなきゃ。
あーでもないこーでもない。脅しのネタはどれがいいかと、悩んでいるうちに夜になり、ルーク様とお兄様がお屋敷に帰ってきた。
「おかえりなさいませ」
わたしはデイヴィス家の使用人らしく、丁寧にお迎えをして、お兄様をダイニングへとお通しした。
ルーク様は着替えに一度お部屋に戻ると言って、お部屋に入って行った。
ダイニングの椅子を引き、お兄様をそこへ促す。
「すぐにルーク様は来ると思いますので、まずはごゆっくりなさってください」
そう言って腰を折ると、お兄様は目を細めてわたしを見つめた。
「? どうかなさいました?」
「いや、ミラー家で迎えられるのもアットホームでよかったけど、ちゃんとデイヴィス家にきたら、格式高いデイヴィス家の侍女っぽくていいなと思って。あのそそっかしいジーナが侍女をやってるなんて心配したが、これなら大丈夫だな」
にこにこと、兄妹の温かい空気が流れる。
そんなに妹であるわたしのことを心配してくれてたんだ。
お兄様はお変わりなく、昔からのお優しいお兄様ですよ。
なんかちょっと、昔のことをネタに脅すのは、申し訳ないかなって気分になった。
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