121 / 255
13章 確信
オレがいる意味
しおりを挟む
演習場で少し見学をした後、国王と王太子はオレとオリバー義兄上を呼び出した。
「これから会議をおこなう。隊長と副隊長は出席するように。光の魔術師団は、ローゼリア以外はそのまま隊士と訓練続行、ローゼリアは隊長らと共に城へ」
国王からそう言われてしまえば、オレ達に拒否権はない。
ただでさえ、オレとローゼリアの魔力は相性が悪いらしく、せっかく掛けた魔法が役に立たないのだ。
ならば、剣の腕を磨くしかないのに……。
城へと向かう馬車の中は、オレと義兄上の2人だった。
王族は専用の馬車で移動をするからだ。
あんな奴らと同乗せず助かるけどな。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で、オレは口を開く。
「王族はオレが死のうが関係ないと言いやがった」
義兄上は窓の外からオレに視線を移す。
「……そうだろうな」
この義兄は聡い人で、結構なんでもお見通しだ。
普通の子爵家嫡男であれば、王族は尊ぶべき遠い存在のはずだが、義兄上は王族という化けの皮を剥がしたヤツらの本性を見ている気がする。
そして、その後は無言のまま、馬車は城へと到着した。
広間に通され、その扉を開けると、大臣達が勢揃いしてこちらを見ていた。
「これは?」
オレは上座に着席していたこの国の宰相に問いかける。
「軍事会議をおこないます。ルーク・デイヴィス、オリバー・ミラーはそこに着席するように」
宰相は一番の下座を指し示す。
爵位を継いでいないとは言え、オレの家は侯爵家だ。
この扱いはなんなのだ。
不満に思いながら、大臣の中で一番下位の子爵の横に義兄上とならんで腰掛けた。
オレ達が席に着いたのを見計らって、国王と王太子がお出ましになる。もちろん、ローゼリアは一緒に城に帰ってきたのに、会議には出ない。
国王たちが上座に着席すると、宰相が立ち上がり議事進行を始める。
「これより、軍事会議を始めます。まず、第二騎士団団長から報告がございます」
宰相が座ると、今度は騎士団団長が立ち上がる。
「魔物の森の警護をしております第二騎士団団長のホセ・トリニティです。今から報告することは、外にもらさないようにご注意願います」
30代半ばの団長は、国王から始まり、周りの全ての者に顔を向けてそう言った。
「今まで、魔物の森は結界の薄くなるところはありましたが、その強度を保っておりました。ルーク殿が襲われたあの時と、学園に魔獣が侵入したあの時は、不運としか言いようがない事態だったのです。まさか、まだ新しい結界が綻びるなど、誰も思いませんでした。森と結界の境界をうまく利用し、魔獣が抜け出しました。また、そのようなことがおこらぬように警護しておりました。しかし、ここのところ結界が弱くなっているようで、光の術者に綻びを補修してもらっても、薄く瘴気が漏れ出してしまいます。おそらく、魔物の復活が近いのではないかと」
まるで発見したのは自分の手柄のように語る団長に、汚物を見るように視線を向けた。
こいつらがちゃんと守っていなかったから、魔物の森から魔獣が抜け出し、ジーナの命を奪ったんだ。
ふと、拳に力が入ってしまい視線を落とすと、オレと同じように握りしめた拳を膝の上に置く義兄上が見えた。
「討伐隊隊長ルーク・デイヴィス殿。出撃が早まりそうですが、訓練の方はどうですか?」
宰相がこちらを向くので仕方なく立ち上がり、国王に顔を向けて発言する。
「隊士達の仕上がりは上々です。早まることは予想できていましたので、すぐにでも出撃可能です」
あんたのところの役立たずなお姫さんだけ、仕上がってないけどな。
そう思ったが相手は王族。
大人になったオレは余計なことは言わない。
オレの言葉に、宰相をはじめとする出席者がホッとした表情をする。
しかし、それを覆えすように王太子が立ち上がる。
「だがルーク、ローゼリアからはおまえ達の訓練の成果は、目に見えないと聞いている。そこのところはどうなんだ?」
「これから会議をおこなう。隊長と副隊長は出席するように。光の魔術師団は、ローゼリア以外はそのまま隊士と訓練続行、ローゼリアは隊長らと共に城へ」
国王からそう言われてしまえば、オレ達に拒否権はない。
ただでさえ、オレとローゼリアの魔力は相性が悪いらしく、せっかく掛けた魔法が役に立たないのだ。
ならば、剣の腕を磨くしかないのに……。
城へと向かう馬車の中は、オレと義兄上の2人だった。
王族は専用の馬車で移動をするからだ。
あんな奴らと同乗せず助かるけどな。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で、オレは口を開く。
「王族はオレが死のうが関係ないと言いやがった」
義兄上は窓の外からオレに視線を移す。
「……そうだろうな」
この義兄は聡い人で、結構なんでもお見通しだ。
普通の子爵家嫡男であれば、王族は尊ぶべき遠い存在のはずだが、義兄上は王族という化けの皮を剥がしたヤツらの本性を見ている気がする。
そして、その後は無言のまま、馬車は城へと到着した。
広間に通され、その扉を開けると、大臣達が勢揃いしてこちらを見ていた。
「これは?」
オレは上座に着席していたこの国の宰相に問いかける。
「軍事会議をおこないます。ルーク・デイヴィス、オリバー・ミラーはそこに着席するように」
宰相は一番の下座を指し示す。
爵位を継いでいないとは言え、オレの家は侯爵家だ。
この扱いはなんなのだ。
不満に思いながら、大臣の中で一番下位の子爵の横に義兄上とならんで腰掛けた。
オレ達が席に着いたのを見計らって、国王と王太子がお出ましになる。もちろん、ローゼリアは一緒に城に帰ってきたのに、会議には出ない。
国王たちが上座に着席すると、宰相が立ち上がり議事進行を始める。
「これより、軍事会議を始めます。まず、第二騎士団団長から報告がございます」
宰相が座ると、今度は騎士団団長が立ち上がる。
「魔物の森の警護をしております第二騎士団団長のホセ・トリニティです。今から報告することは、外にもらさないようにご注意願います」
30代半ばの団長は、国王から始まり、周りの全ての者に顔を向けてそう言った。
「今まで、魔物の森は結界の薄くなるところはありましたが、その強度を保っておりました。ルーク殿が襲われたあの時と、学園に魔獣が侵入したあの時は、不運としか言いようがない事態だったのです。まさか、まだ新しい結界が綻びるなど、誰も思いませんでした。森と結界の境界をうまく利用し、魔獣が抜け出しました。また、そのようなことがおこらぬように警護しておりました。しかし、ここのところ結界が弱くなっているようで、光の術者に綻びを補修してもらっても、薄く瘴気が漏れ出してしまいます。おそらく、魔物の復活が近いのではないかと」
まるで発見したのは自分の手柄のように語る団長に、汚物を見るように視線を向けた。
こいつらがちゃんと守っていなかったから、魔物の森から魔獣が抜け出し、ジーナの命を奪ったんだ。
ふと、拳に力が入ってしまい視線を落とすと、オレと同じように握りしめた拳を膝の上に置く義兄上が見えた。
「討伐隊隊長ルーク・デイヴィス殿。出撃が早まりそうですが、訓練の方はどうですか?」
宰相がこちらを向くので仕方なく立ち上がり、国王に顔を向けて発言する。
「隊士達の仕上がりは上々です。早まることは予想できていましたので、すぐにでも出撃可能です」
あんたのところの役立たずなお姫さんだけ、仕上がってないけどな。
そう思ったが相手は王族。
大人になったオレは余計なことは言わない。
オレの言葉に、宰相をはじめとする出席者がホッとした表情をする。
しかし、それを覆えすように王太子が立ち上がる。
「だがルーク、ローゼリアからはおまえ達の訓練の成果は、目に見えないと聞いている。そこのところはどうなんだ?」
4
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

転生したら災難にあいましたが前世で好きだった人と再会~おまけに凄い力がありそうです
はなまる
恋愛
現代世界で天鬼組のヤクザの娘の聖龍杏奈はある日父が連れて来たロッキーという男を好きになる。だがロッキーは異世界から来た男だった。そんな時ヤクザの抗争に巻き込まれて父とロッキーが亡くなる。杏奈は天鬼組を解散して保育園で働くが保育園で事件に巻き込まれ死んでしまう。
そしていきなり異世界に転性する。
ルヴィアナ・ド・クーベリーシェという女性の身体に入ってしまった杏奈はもうこの世界で生きていくしかないと心を決める。だがルヴィアナは嫉妬深く酷い女性で婚約者から嫌われていた。何とか関係を修復させたいと努力するが婚約者に好きな人が出来てあえなく婚約解消。そしてラノベで読んだ修道院に行くことに。けれどいつの間にか違う人が婚約者になって結婚話が進んで行く。でもその人はロッキーにどことなく似ていて気になっていた人で…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる