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13章 確信
オレがいる意味
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演習場で少し見学をした後、国王と王太子はオレとオリバー義兄上を呼び出した。
「これから会議をおこなう。隊長と副隊長は出席するように。光の魔術師団は、ローゼリア以外はそのまま隊士と訓練続行、ローゼリアは隊長らと共に城へ」
国王からそう言われてしまえば、オレ達に拒否権はない。
ただでさえ、オレとローゼリアの魔力は相性が悪いらしく、せっかく掛けた魔法が役に立たないのだ。
ならば、剣の腕を磨くしかないのに……。
城へと向かう馬車の中は、オレと義兄上の2人だった。
王族は専用の馬車で移動をするからだ。
あんな奴らと同乗せず助かるけどな。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で、オレは口を開く。
「王族はオレが死のうが関係ないと言いやがった」
義兄上は窓の外からオレに視線を移す。
「……そうだろうな」
この義兄は聡い人で、結構なんでもお見通しだ。
普通の子爵家嫡男であれば、王族は尊ぶべき遠い存在のはずだが、義兄上は王族という化けの皮を剥がしたヤツらの本性を見ている気がする。
そして、その後は無言のまま、馬車は城へと到着した。
広間に通され、その扉を開けると、大臣達が勢揃いしてこちらを見ていた。
「これは?」
オレは上座に着席していたこの国の宰相に問いかける。
「軍事会議をおこないます。ルーク・デイヴィス、オリバー・ミラーはそこに着席するように」
宰相は一番の下座を指し示す。
爵位を継いでいないとは言え、オレの家は侯爵家だ。
この扱いはなんなのだ。
不満に思いながら、大臣の中で一番下位の子爵の横に義兄上とならんで腰掛けた。
オレ達が席に着いたのを見計らって、国王と王太子がお出ましになる。もちろん、ローゼリアは一緒に城に帰ってきたのに、会議には出ない。
国王たちが上座に着席すると、宰相が立ち上がり議事進行を始める。
「これより、軍事会議を始めます。まず、第二騎士団団長から報告がございます」
宰相が座ると、今度は騎士団団長が立ち上がる。
「魔物の森の警護をしております第二騎士団団長のホセ・トリニティです。今から報告することは、外にもらさないようにご注意願います」
30代半ばの団長は、国王から始まり、周りの全ての者に顔を向けてそう言った。
「今まで、魔物の森は結界の薄くなるところはありましたが、その強度を保っておりました。ルーク殿が襲われたあの時と、学園に魔獣が侵入したあの時は、不運としか言いようがない事態だったのです。まさか、まだ新しい結界が綻びるなど、誰も思いませんでした。森と結界の境界をうまく利用し、魔獣が抜け出しました。また、そのようなことがおこらぬように警護しておりました。しかし、ここのところ結界が弱くなっているようで、光の術者に綻びを補修してもらっても、薄く瘴気が漏れ出してしまいます。おそらく、魔物の復活が近いのではないかと」
まるで発見したのは自分の手柄のように語る団長に、汚物を見るように視線を向けた。
こいつらがちゃんと守っていなかったから、魔物の森から魔獣が抜け出し、ジーナの命を奪ったんだ。
ふと、拳に力が入ってしまい視線を落とすと、オレと同じように握りしめた拳を膝の上に置く義兄上が見えた。
「討伐隊隊長ルーク・デイヴィス殿。出撃が早まりそうですが、訓練の方はどうですか?」
宰相がこちらを向くので仕方なく立ち上がり、国王に顔を向けて発言する。
「隊士達の仕上がりは上々です。早まることは予想できていましたので、すぐにでも出撃可能です」
あんたのところの役立たずなお姫さんだけ、仕上がってないけどな。
そう思ったが相手は王族。
大人になったオレは余計なことは言わない。
オレの言葉に、宰相をはじめとする出席者がホッとした表情をする。
しかし、それを覆えすように王太子が立ち上がる。
「だがルーク、ローゼリアからはおまえ達の訓練の成果は、目に見えないと聞いている。そこのところはどうなんだ?」
「これから会議をおこなう。隊長と副隊長は出席するように。光の魔術師団は、ローゼリア以外はそのまま隊士と訓練続行、ローゼリアは隊長らと共に城へ」
国王からそう言われてしまえば、オレ達に拒否権はない。
ただでさえ、オレとローゼリアの魔力は相性が悪いらしく、せっかく掛けた魔法が役に立たないのだ。
ならば、剣の腕を磨くしかないのに……。
城へと向かう馬車の中は、オレと義兄上の2人だった。
王族は専用の馬車で移動をするからだ。
あんな奴らと同乗せず助かるけどな。
ゴトゴトと揺れる馬車の中で、オレは口を開く。
「王族はオレが死のうが関係ないと言いやがった」
義兄上は窓の外からオレに視線を移す。
「……そうだろうな」
この義兄は聡い人で、結構なんでもお見通しだ。
普通の子爵家嫡男であれば、王族は尊ぶべき遠い存在のはずだが、義兄上は王族という化けの皮を剥がしたヤツらの本性を見ている気がする。
そして、その後は無言のまま、馬車は城へと到着した。
広間に通され、その扉を開けると、大臣達が勢揃いしてこちらを見ていた。
「これは?」
オレは上座に着席していたこの国の宰相に問いかける。
「軍事会議をおこないます。ルーク・デイヴィス、オリバー・ミラーはそこに着席するように」
宰相は一番の下座を指し示す。
爵位を継いでいないとは言え、オレの家は侯爵家だ。
この扱いはなんなのだ。
不満に思いながら、大臣の中で一番下位の子爵の横に義兄上とならんで腰掛けた。
オレ達が席に着いたのを見計らって、国王と王太子がお出ましになる。もちろん、ローゼリアは一緒に城に帰ってきたのに、会議には出ない。
国王たちが上座に着席すると、宰相が立ち上がり議事進行を始める。
「これより、軍事会議を始めます。まず、第二騎士団団長から報告がございます」
宰相が座ると、今度は騎士団団長が立ち上がる。
「魔物の森の警護をしております第二騎士団団長のホセ・トリニティです。今から報告することは、外にもらさないようにご注意願います」
30代半ばの団長は、国王から始まり、周りの全ての者に顔を向けてそう言った。
「今まで、魔物の森は結界の薄くなるところはありましたが、その強度を保っておりました。ルーク殿が襲われたあの時と、学園に魔獣が侵入したあの時は、不運としか言いようがない事態だったのです。まさか、まだ新しい結界が綻びるなど、誰も思いませんでした。森と結界の境界をうまく利用し、魔獣が抜け出しました。また、そのようなことがおこらぬように警護しておりました。しかし、ここのところ結界が弱くなっているようで、光の術者に綻びを補修してもらっても、薄く瘴気が漏れ出してしまいます。おそらく、魔物の復活が近いのではないかと」
まるで発見したのは自分の手柄のように語る団長に、汚物を見るように視線を向けた。
こいつらがちゃんと守っていなかったから、魔物の森から魔獣が抜け出し、ジーナの命を奪ったんだ。
ふと、拳に力が入ってしまい視線を落とすと、オレと同じように握りしめた拳を膝の上に置く義兄上が見えた。
「討伐隊隊長ルーク・デイヴィス殿。出撃が早まりそうですが、訓練の方はどうですか?」
宰相がこちらを向くので仕方なく立ち上がり、国王に顔を向けて発言する。
「隊士達の仕上がりは上々です。早まることは予想できていましたので、すぐにでも出撃可能です」
あんたのところの役立たずなお姫さんだけ、仕上がってないけどな。
そう思ったが相手は王族。
大人になったオレは余計なことは言わない。
オレの言葉に、宰相をはじめとする出席者がホッとした表情をする。
しかし、それを覆えすように王太子が立ち上がる。
「だがルーク、ローゼリアからはおまえ達の訓練の成果は、目に見えないと聞いている。そこのところはどうなんだ?」
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