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9章 一筋の光は
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「オリバー様。今日は見学をさせていただき、ありがとうございました」
わたしは立ち上がり、お兄様にお礼を言った。
お兄様は悲しそうな笑みを浮かべる。
「どうだった? ルーク様の剣は、上達しただろう」
「はい。ご立派になられました」
「……今日は、帰ったら荒れるかもしれないから、よろしくな。侍女殿」
「……はい」
わたしは返事をしながらも俯いた。
「あの、どうして連携できないのでしょうか?」
お兄様に聞いても、答えなんかわかるはずないのに、前世の癖で、つい問いかけてしまう。
お兄様は、ジーナが小さい頃、わからないことを口にすると、いつも丁寧に答えてくれたから。
お兄様は腕を組み、口を開く。
「さあな。わかっていたら、なんとかしてるよ」
ですよねー。
「でも、祝福を与えるのが英雄の婚約者だということを前提としているなら、やっぱりそこには愛情か信頼かが関係しているんだと思う。そして、あいつらにはそれは皆無だ」
「では、今から愛をはぐくんだりとかは……」
わたしが上目遣いでそう言うと、「無理だな」とバッサリ切られた。
「他の人ならともかく、ルーク様はローゼリアを憎んでいる。婚約者を取り替えるしかないだろうが、国民に向けて発表もしちまってるし、無理だろうな」
「あの、ルーク様の祝福を、誰か別の人にやってもらうことはできませんか? えーと、ローゼリア様に内緒で」
わたしがそう言うと、お兄様は顎に手をあて少し考える素振りを見せた。
「内緒で、か。光の術者によっては有効な手だな。だが、その光の術者に心当たりがない。光の術者と分かっている者は、全て国に登録されており、今回の光の討伐隊に登録されている。ローゼリアの目を盗んで祝福させるのは難しいだろうな……」
「では……国で管理していない光の術者が居れば……!」
わたしが希望の目を向けると、お兄様は首を振った。
「生まれてすぐ、魔力判定を行い、国に登録するんだ。それは、スラムに住む者達も例外ではない。それは無理な話なんだよ」
そう。
全ての国民は、魔力判定を受け、国に登録をする。
でも、わたしなら。
魔力判定では「風」と出て、二属性を持つわたしなら、可能なんじゃないかしら。
でも、わたしは今、剣への祝福もできない。
ましてや、討伐当日はルーク様の身体全体を覆うような大きな祝福をしなければならない。
今は、お兄様にもこの可能について、話すべきではないだろう。
「せっかく、ルーク様はあんなに剣が上達されたのに、もったいないです」
わたしは、当たり障りのない返事を返した。
お兄様は、何か言いたげではあったが、わたしの言葉に同意した。
ルーク様が鍛練する姿を見ているお兄様は、思うところがあるのだろう。
「オリバー様。わたしはそろそろ帰ります」
わたしは立ち上がり、オリバー様にそう告げた。
「ん、ああ。ご苦労様。ところで、侍女殿は名はなんというんだ?」
「わたしですか? わたしはニーナと申します。以後、お見知り置きくださいませ」
わたしはすましてカーテシーをした。
顔を上げると、お兄様は微笑んでいた。
「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」
お兄様に背を向け、階段を降りて二階席から出口の方へ歩いて行くと、お兄様が二階からわたしを呼んだ。
「ジーナ! 無理はするな。何かあったら、オレに相談しろよ。必ず、力になるから!」
わたしは振り向いて、大きな声で返事をした。
「はい! オリバー様。ありがとうございます!」
二階から手を振るお兄様に、腰を折って挨拶をした。
さて。
わたしにもやるべき事ができた。
これまで勉強していなかった、光の魔法を勉強して、祝福を授けられるようにしなくてはいけない。
前世でもできなかった祝福を、誰の指導も受けずにできるようになるかはわからないけど、やらなければならない。
ルーク様を御守りするためには、それしか方法がないのだから。
わたしは立ち上がり、お兄様にお礼を言った。
お兄様は悲しそうな笑みを浮かべる。
「どうだった? ルーク様の剣は、上達しただろう」
「はい。ご立派になられました」
「……今日は、帰ったら荒れるかもしれないから、よろしくな。侍女殿」
「……はい」
わたしは返事をしながらも俯いた。
「あの、どうして連携できないのでしょうか?」
お兄様に聞いても、答えなんかわかるはずないのに、前世の癖で、つい問いかけてしまう。
お兄様は、ジーナが小さい頃、わからないことを口にすると、いつも丁寧に答えてくれたから。
お兄様は腕を組み、口を開く。
「さあな。わかっていたら、なんとかしてるよ」
ですよねー。
「でも、祝福を与えるのが英雄の婚約者だということを前提としているなら、やっぱりそこには愛情か信頼かが関係しているんだと思う。そして、あいつらにはそれは皆無だ」
「では、今から愛をはぐくんだりとかは……」
わたしが上目遣いでそう言うと、「無理だな」とバッサリ切られた。
「他の人ならともかく、ルーク様はローゼリアを憎んでいる。婚約者を取り替えるしかないだろうが、国民に向けて発表もしちまってるし、無理だろうな」
「あの、ルーク様の祝福を、誰か別の人にやってもらうことはできませんか? えーと、ローゼリア様に内緒で」
わたしがそう言うと、お兄様は顎に手をあて少し考える素振りを見せた。
「内緒で、か。光の術者によっては有効な手だな。だが、その光の術者に心当たりがない。光の術者と分かっている者は、全て国に登録されており、今回の光の討伐隊に登録されている。ローゼリアの目を盗んで祝福させるのは難しいだろうな……」
「では……国で管理していない光の術者が居れば……!」
わたしが希望の目を向けると、お兄様は首を振った。
「生まれてすぐ、魔力判定を行い、国に登録するんだ。それは、スラムに住む者達も例外ではない。それは無理な話なんだよ」
そう。
全ての国民は、魔力判定を受け、国に登録をする。
でも、わたしなら。
魔力判定では「風」と出て、二属性を持つわたしなら、可能なんじゃないかしら。
でも、わたしは今、剣への祝福もできない。
ましてや、討伐当日はルーク様の身体全体を覆うような大きな祝福をしなければならない。
今は、お兄様にもこの可能について、話すべきではないだろう。
「せっかく、ルーク様はあんなに剣が上達されたのに、もったいないです」
わたしは、当たり障りのない返事を返した。
お兄様は、何か言いたげではあったが、わたしの言葉に同意した。
ルーク様が鍛練する姿を見ているお兄様は、思うところがあるのだろう。
「オリバー様。わたしはそろそろ帰ります」
わたしは立ち上がり、オリバー様にそう告げた。
「ん、ああ。ご苦労様。ところで、侍女殿は名はなんというんだ?」
「わたしですか? わたしはニーナと申します。以後、お見知り置きくださいませ」
わたしはすましてカーテシーをした。
顔を上げると、お兄様は微笑んでいた。
「ああ。こちらこそ、よろしく頼む」
お兄様に背を向け、階段を降りて二階席から出口の方へ歩いて行くと、お兄様が二階からわたしを呼んだ。
「ジーナ! 無理はするな。何かあったら、オレに相談しろよ。必ず、力になるから!」
わたしは振り向いて、大きな声で返事をした。
「はい! オリバー様。ありがとうございます!」
二階から手を振るお兄様に、腰を折って挨拶をした。
さて。
わたしにもやるべき事ができた。
これまで勉強していなかった、光の魔法を勉強して、祝福を授けられるようにしなくてはいけない。
前世でもできなかった祝福を、誰の指導も受けずにできるようになるかはわからないけど、やらなければならない。
ルーク様を御守りするためには、それしか方法がないのだから。
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