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9章 一筋の光は
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わたしとお父さんが目当ての物を探し当てて部屋に戻る。
「ルーク様、お待たせしました」
ソファに腰掛けたわたし達を、ルーク様はじっと見ていた。
「ルーク様?」
「いや、なんでもない」
「お母さん、ルーク様に何か言ったの?」
お母さんに目を向けると、お母さんはコロコロと笑った。
「ニーナの小さい頃の話とかね。つい、可愛かった頃のこととかを話してしまったわ」
「えー! 何話したのよ」
わたしがどんなに聞いても、ふたりは教えてはくれなかった。
「それで、ニーナ。何を持ってきたのだ?」
ルーク様に声を掛けられて、我にかえる。
「あ、これです」
わたしは持っていた箱を開けて中身を見せた。
箱の中には柔らかな手触りの、タオル地のおくるみが入っていた。
うすいすみれ色のそれは、とても綺麗で、タオル地だけど裾に刺繍が施されていた。
「ルーク様、いかがですか? すみれ色はよくお似合いでしょうし、おくるみはブランケット代わりにしたり、授乳ケープにもなるし、お勧めですよ。肌触りもバツグンです。触ってみてください」
ルーク様は恐る恐る手を伸ばす。
「なるほど……。これは、気持ちいいな」
「はいっ! 赤ちゃんもこれで包まれたらぐっすり寝れそうです」
「では、これをもらおう。他にも、調度品など良いものがあれば、一緒に用意してくれ」
お父さんは、ルーク様に調度品のカタログを見せて、ルーク様はチェストなどを何点か選んでいた。
わたしはその隙に、新品のおくるみを用意して、それと一緒におくるみとお揃いのハンカチを包んだ。
おくるみと同じすみれ色で、おくるみよりは薄手のタオル地でできており、縁にレースが付いている物だ。
お母さんに聞くと、刺繍もしてもらえるということだったので、エマお姉様の名前を刺繍してもらうことにした。
これは、わたしのお給料から見ると、とても高価なものだけど、このハンカチだけはわたしのお給料から払った。
「ルーク様、これらのお品物は、直接相手先に送りますか?」
わたしがそう聞くと、ルーク様は少し考える。
「いや、どんな物か見られるものは見たいし、手紙も付けたい。一度、デイヴィス侯爵家に届けてくれ」
ルーク様の声を聞き、お父さんを振り返る。
「と、言うわけだから、お品物が揃ったらルーク様のお屋敷に届けてね」
わたしが言うと、お父さんは笑ってわたしにデコピンをした。
「生言ってんなぁ。ニーナに言われなくても、お父さんは商売人だから、ちゃんとうまく商いするぞ」
「お父さん、痛いよお。デコピンしなくてもいいじゃん」
「なんとなく、な。ニーナは外に出て、少し大人になった気がするな。すっかり、デイヴィス侯爵家の使用人だ」
珍しく、ルーク様も笑顔を見せる。
「我が家も、お嬢さんがきてから、明るくなったんですよ」
ルーク様がお父さんとお母さんに言うと、2人は誇らしげに胸を張っていた。
夕方、ディヴイス家に戻る馬車の中で、ルーク様は何か物想いに耽っていた。
エマお姉様に、赤ちゃんが生まれたんだもの。
そりゃ、感慨もひとしおだろう。
いつか、わたしもエマお姉様の赤ちゃんを見に、行ってみたいな。
いつか、いつか……。
「ルーク様、お待たせしました」
ソファに腰掛けたわたし達を、ルーク様はじっと見ていた。
「ルーク様?」
「いや、なんでもない」
「お母さん、ルーク様に何か言ったの?」
お母さんに目を向けると、お母さんはコロコロと笑った。
「ニーナの小さい頃の話とかね。つい、可愛かった頃のこととかを話してしまったわ」
「えー! 何話したのよ」
わたしがどんなに聞いても、ふたりは教えてはくれなかった。
「それで、ニーナ。何を持ってきたのだ?」
ルーク様に声を掛けられて、我にかえる。
「あ、これです」
わたしは持っていた箱を開けて中身を見せた。
箱の中には柔らかな手触りの、タオル地のおくるみが入っていた。
うすいすみれ色のそれは、とても綺麗で、タオル地だけど裾に刺繍が施されていた。
「ルーク様、いかがですか? すみれ色はよくお似合いでしょうし、おくるみはブランケット代わりにしたり、授乳ケープにもなるし、お勧めですよ。肌触りもバツグンです。触ってみてください」
ルーク様は恐る恐る手を伸ばす。
「なるほど……。これは、気持ちいいな」
「はいっ! 赤ちゃんもこれで包まれたらぐっすり寝れそうです」
「では、これをもらおう。他にも、調度品など良いものがあれば、一緒に用意してくれ」
お父さんは、ルーク様に調度品のカタログを見せて、ルーク様はチェストなどを何点か選んでいた。
わたしはその隙に、新品のおくるみを用意して、それと一緒におくるみとお揃いのハンカチを包んだ。
おくるみと同じすみれ色で、おくるみよりは薄手のタオル地でできており、縁にレースが付いている物だ。
お母さんに聞くと、刺繍もしてもらえるということだったので、エマお姉様の名前を刺繍してもらうことにした。
これは、わたしのお給料から見ると、とても高価なものだけど、このハンカチだけはわたしのお給料から払った。
「ルーク様、これらのお品物は、直接相手先に送りますか?」
わたしがそう聞くと、ルーク様は少し考える。
「いや、どんな物か見られるものは見たいし、手紙も付けたい。一度、デイヴィス侯爵家に届けてくれ」
ルーク様の声を聞き、お父さんを振り返る。
「と、言うわけだから、お品物が揃ったらルーク様のお屋敷に届けてね」
わたしが言うと、お父さんは笑ってわたしにデコピンをした。
「生言ってんなぁ。ニーナに言われなくても、お父さんは商売人だから、ちゃんとうまく商いするぞ」
「お父さん、痛いよお。デコピンしなくてもいいじゃん」
「なんとなく、な。ニーナは外に出て、少し大人になった気がするな。すっかり、デイヴィス侯爵家の使用人だ」
珍しく、ルーク様も笑顔を見せる。
「我が家も、お嬢さんがきてから、明るくなったんですよ」
ルーク様がお父さんとお母さんに言うと、2人は誇らしげに胸を張っていた。
夕方、ディヴイス家に戻る馬車の中で、ルーク様は何か物想いに耽っていた。
エマお姉様に、赤ちゃんが生まれたんだもの。
そりゃ、感慨もひとしおだろう。
いつか、わたしもエマお姉様の赤ちゃんを見に、行ってみたいな。
いつか、いつか……。
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