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5章 別れ
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ルーク様は、うまく魔獣の首を一突きにし、魔獣は絶命した。
ドサッと大きな音を出して、魔獣は倒れた。
よかった。
そう思ったのに、わたしも魔獣と同じように、その場に倒れた。
「ジーナ!」
ルーク様がわたしを抱きとめてくれる。
さっきまで仮面をつけていたのに、今はどこかへ仮面が飛んでいってしまい、わたしがよく見る素顔のルーク様が、泣きそうな顔をしてわたしを覗き込んでいた。
もぉ、大きくなったんだから、泣きそうな顔しないの。
そう言いたいのに声が出ない。
そして、背中がとても冷たい。
冷たい?
あぁ、そうか。
過ぎた痛みは冷たく感じるんだ。
わたしは魔獣の爪で、背中を引き裂かれている。
背中、きっとひどい怪我だ。
だんだんと、指先にも冷たさが広がっていく。
そんなわたしを見て、とうとうルーク様の目から涙が溢れて落ちた。
わたしの顔に落ちた涙だけが、とても暖かく温度を感じることができた。
「ジーナ、ジーナ、きっと助かるから、がんばってくれ」
ルーク様の悲痛な声が聞こえる。
そして、ザワザワと人が集まってくる気配がする。
ほら、ルーク様。
泣いてたらみんなに見られちゃいますよ?
ルーク様は、顔をくしゃくしゃにして、ポロポロと涙を流し続けている。
あぁ、わたし、死んじゃうんだな。
やだな。
ルーク様を残して死んじゃうなんて。
ルーク様の火傷、まだ残っているのに。
わたしは力を振り絞って、ルーク様の顔に手を伸ばした。
ルーク様はわたしの手を取ってくれて、自分の頬に充てる。
わたしは目を閉じて、残りの自分の命を、全て魔力に変えて、ルーク様の火傷に集中させた。
わたしにできる限り、ルーク様の火傷を消してあげたかった。
その火傷のせいで、ルーク様は寂しい思いも、悲しい思いもしてきた。
だから、それをできるだけ取り除いてあげたかった。
ぷつん。
わたしの中で、糸が切れるような感覚があって、わたしが目を開けると、火傷の痕がすべて消えたルーク様の顔があった。
ふふ。
ルーク様のお顔は、ほんとうに綺麗。
その綺麗なエメラルドの瞳から、後からあとから涙がこぼれ落ちてくる。
ポタポタとわたしの頬を暖かい涙が濡らしていく。
「ル…クさ、ま……だ……す、き」
ルーク様、だいすき。
わたしが、言いたかった言葉は、うまく音にならなかった。
もう、目を開けていられない。
せっかく、火傷が全部治って、綺麗なお顔をしているのに、そのお顔で笑ってるところが、見たかった、なぁ……。
「ジーナ! ジーナ、目を開けてくれ!!」
そして、ルーク様の腕に抱かれたまま、わたしの体からは全部の力が抜けてしまった。
もう、心臓も動いていない。
「ジーナぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう、震えるはずのないわたしの鼓膜に、ルーク様の絶叫が聞こえた。
ドサッと大きな音を出して、魔獣は倒れた。
よかった。
そう思ったのに、わたしも魔獣と同じように、その場に倒れた。
「ジーナ!」
ルーク様がわたしを抱きとめてくれる。
さっきまで仮面をつけていたのに、今はどこかへ仮面が飛んでいってしまい、わたしがよく見る素顔のルーク様が、泣きそうな顔をしてわたしを覗き込んでいた。
もぉ、大きくなったんだから、泣きそうな顔しないの。
そう言いたいのに声が出ない。
そして、背中がとても冷たい。
冷たい?
あぁ、そうか。
過ぎた痛みは冷たく感じるんだ。
わたしは魔獣の爪で、背中を引き裂かれている。
背中、きっとひどい怪我だ。
だんだんと、指先にも冷たさが広がっていく。
そんなわたしを見て、とうとうルーク様の目から涙が溢れて落ちた。
わたしの顔に落ちた涙だけが、とても暖かく温度を感じることができた。
「ジーナ、ジーナ、きっと助かるから、がんばってくれ」
ルーク様の悲痛な声が聞こえる。
そして、ザワザワと人が集まってくる気配がする。
ほら、ルーク様。
泣いてたらみんなに見られちゃいますよ?
ルーク様は、顔をくしゃくしゃにして、ポロポロと涙を流し続けている。
あぁ、わたし、死んじゃうんだな。
やだな。
ルーク様を残して死んじゃうなんて。
ルーク様の火傷、まだ残っているのに。
わたしは力を振り絞って、ルーク様の顔に手を伸ばした。
ルーク様はわたしの手を取ってくれて、自分の頬に充てる。
わたしは目を閉じて、残りの自分の命を、全て魔力に変えて、ルーク様の火傷に集中させた。
わたしにできる限り、ルーク様の火傷を消してあげたかった。
その火傷のせいで、ルーク様は寂しい思いも、悲しい思いもしてきた。
だから、それをできるだけ取り除いてあげたかった。
ぷつん。
わたしの中で、糸が切れるような感覚があって、わたしが目を開けると、火傷の痕がすべて消えたルーク様の顔があった。
ふふ。
ルーク様のお顔は、ほんとうに綺麗。
その綺麗なエメラルドの瞳から、後からあとから涙がこぼれ落ちてくる。
ポタポタとわたしの頬を暖かい涙が濡らしていく。
「ル…クさ、ま……だ……す、き」
ルーク様、だいすき。
わたしが、言いたかった言葉は、うまく音にならなかった。
もう、目を開けていられない。
せっかく、火傷が全部治って、綺麗なお顔をしているのに、そのお顔で笑ってるところが、見たかった、なぁ……。
「ジーナ! ジーナ、目を開けてくれ!!」
そして、ルーク様の腕に抱かれたまま、わたしの体からは全部の力が抜けてしまった。
もう、心臓も動いていない。
「ジーナぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう、震えるはずのないわたしの鼓膜に、ルーク様の絶叫が聞こえた。
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