もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

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4章 そして運命の歯車は回り出す

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このまま、平和に過ぎて行って、卒業するものだとばかり思っていた。
ローゼリア様から、声を掛けられなければ。


穏やかに日々が過ぎていたある日、光の授業が終わると、ローゼリア様がモニカ様と話しているのが聞こえた。

立ち聞きをするつもりはまったくなかったけど、教科書などを片付けていたので、すぐに教室から出られず、なんとはなしに立ち聞きをすることになってしまった。

「モニカ嬢。あなたもルークの婚約者候補だったというのは本当なの?」
「はい。ローゼリア様」
「やっぱり、ルークのあの顔を見て拒絶したのね。よくわかるわ」
「最初は、ローゼリア様がおっしゃるように、びっくりして拒絶をしてしまいました。ですが、すぐに、思い直して婚約をしますと申し出ました」

視線は2人の方へ向けないからどんな様子で話しているのかわからないけど、わたしはとても気分が悪かった。
すぐに婚約を申し出た?
嘘ばっかり。
侯爵家が没落しそうだったからじゃないの。

それからも2人は会話を続ける。

「ですが、ミラー子爵が自分の娘がデイヴィス侯爵家に嫁ぐ栄誉を手放さなかったのです。ルーク様はどんな弱みを握られているかわかりませんが、国王陛下の前で、ジーナ様との婚約は解消しないとおっしゃったのです」
「モニカ嬢は、ルークが好きなの? あのバケモノが?」
「ローゼリア様はルーク様をご覧になったことがないのですか?」
「見たわよ。幼い頃だけど。それ以降は、あの醜い顔を見たくないので、顔も合わせないようにしているわ」

確かに、ローゼリア様とルーク様が顔を合わせたのは、王宮の庭でルーク様とわたしたち兄妹が鬼ごっこをした日が最後だったかもしれない。
それ以降は、うちのお父様とデイヴィス侯爵様が2人の婚約が順調であると報告するだけで、わたしたち2人は王宮に行かなかったし、パーティーなどがあっても、ルーク様は顔だけ出してすぐに帰っていたから、ローゼリア様とは会っていないのかも……。

「でしたら、ローゼリア様は最近のルーク様をご存知ないのですね」
「ええ。クラスメイトが騒いでいるけど、一体ルークの何がいいのかわからないわ」
「学年が違うから、お目にかかることがないんですね。一度ご覧になればわかりますわ。ルーク様は、幼少の頃とかなり印象が変わられましたよ」

何言ってるのよ!
せっかく、学年が違うから会わないで済むって喜んでいるルーク様に会わせようとするなんて!
とっても口を出したいが、そんなことをしたらどうなるかわからないので、じっと我慢する。

ここまで聞いたところで、わたしは片付けが終わってしまい、教室を出た。

あの後、何を話していたか気になるけど、ローゼリア様の視界にも入っていないわたしが口を出すことはできない。
ローゼリア様は、子爵家のわたしなど見向きもしないから、同じ光の授業を受けているわたしが、ミラー子爵家の次女だってわかっていないかもしれない。
モニカ様は、侯爵令嬢だった時に、少し交流があったようで、今は男爵令嬢だけど、親しげに世話を焼くことを許されているようだった。

ルーク様に、このことは言えなかった。

でも、それから数日後、ローゼリア様が教師を説き伏せて、男子の全学年合同の剣術の授業を見学したという噂が聞こえた。
この国を守る剣士になる者の授業を、王家のものとして見学したいと言ったそうだ。

……説き伏せてって言うか、単なる我儘じゃん。
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