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4章 そして運命の歯車は回り出す
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剣術大会で、1回生ながら3位という好成績をおさめたルーク様の人気はうなぎ上りだった。
でも、わたしたち兄妹以外の人には無愛想なルーク様なので、遠巻きに見られるだけだったけど。
光の魔法授業も、1年間学んだことになる。
わたしは幼少期からルーク様の火傷の治癒に努めていたせいか、火傷や刺し傷などの治療に特化していたけれど、騎士に加護を与える魔法はまだまだうまく使えなかった。
あと5年あるのだから、それまでに使えればいいと、エミリア女史は言ってくれた。
モニカ様は、光の魔法もそつなく使えるようで、傷の治癒などは、上級生より上達し、わたしの次にうまかった。
わたしは年季が違う。そんなにすぐ抜かされないくらいには、がんばっている。
そして、相変わらずわたしに対する嫌味は1日一回は口にしている……。
いつになったら、気が済むんですかね。
こうして、実りある一年が終わり、新しい一年が始まろうとしていた。
今年の入学式は、第二王女様が入学されるということで、去年のセレモニーホールではなく、学園で一番大きな講堂で行われることとなった。
通常、入学式は新入生とその保護者、あとは生徒会など入学式を手伝った生徒のみが参加するが、今年は生徒も全員参加だ。
王太子殿下が入学なさった6年前もそうだったらしい。
わたしたち二回生は、講堂の後ろの方の席に着いて、入学式の様子を見ていた。
席はクラスごとで、わたしたちが新入生の時は爵位順だったけど、もう学園にも慣れた今はクラスだけ入り混じらなければ好きに座っていいことになっている。
もちろん、わたしはルーク様の隣に座った。
トラウマになるほど嫌いなローゼリア様の入学式だから、わたしはルーク様が大丈夫か心配していたけど、ルーク様はのんきに欠伸をしているので、ちょっぴり安心。かな?
学園長の話が終わり、新入生代表挨拶となる。
去年は主席合格(合格といっても不合格はない。レベルに達しない者は入学前に補習を受けるだけなのだ)のルーク様が挨拶をしたけど、今年は王族の入学があるため、有無を言わさずローゼリア様が挨拶をする。
王族が入る時の慣例だそうで、そうしないとおバカな王族が入学した時に困るのでそうなっているらしい。
ちなみに、成績順クラス分けも有無を言わさずAクラスに入る。
あー。
同じ学年でなくてよかった。
そうでなければクラスメイトだ。
もし、ローゼリア様が寮に入るのであれば、同じ寮で暮らすことになるのだが、ローゼリア様は寮には入らないと聞いている。
よかったよかった。
金色の巻き髪を揺らして、優雅にローゼリア様が壇上に上がり挨拶をする。
「本日は、このような素晴らしい入学式を開いていただき、感謝いたします。わたくし達王族は責任のある行いをしなければなりません。この学園で学ぶ機会を大事に過ごしたいと思います」
そこから、長い挨拶が続いたが、ルーク様は興味なさそうにしていた。
ローゼリア様のお姿を見ても、トラウマが襲って来なかったようで、一安心。
その後も、問題なく式は進行し、筒が無く入学式は終わった。
解散となり、わたしとルーク様も席を立って講堂を出た。
みんなバラバラと寮に帰る中、わたしたちも歩いていると、ルーク様が急にわたしの手を握った。
「別に、もう気にしてないから。あんな子どもの時のこと」
ルーク様がポツリと小さな声で言う。
きっと、式の間中、わたしがルーク様の様子をチラチラ見ていたことに気がついたのだろう。
「うん。わかりました」
「それに、ジーナが居れば、どんなことにも立ち向かえるし」
「はい。わかってますよ」
そうして、わたしたちは見つめ合う。
どちらからともなく、ふふっと笑みが溢れた。
ローゼリア様が近くに居ても、もう気にすることはない。
わたしたちは、そのまま仲良く歩いて行った。
手を繋いで歩くわたしたちが、他の生徒の噂になったのは、言うまでもない。
でも、わたしたち兄妹以外の人には無愛想なルーク様なので、遠巻きに見られるだけだったけど。
光の魔法授業も、1年間学んだことになる。
わたしは幼少期からルーク様の火傷の治癒に努めていたせいか、火傷や刺し傷などの治療に特化していたけれど、騎士に加護を与える魔法はまだまだうまく使えなかった。
あと5年あるのだから、それまでに使えればいいと、エミリア女史は言ってくれた。
モニカ様は、光の魔法もそつなく使えるようで、傷の治癒などは、上級生より上達し、わたしの次にうまかった。
わたしは年季が違う。そんなにすぐ抜かされないくらいには、がんばっている。
そして、相変わらずわたしに対する嫌味は1日一回は口にしている……。
いつになったら、気が済むんですかね。
こうして、実りある一年が終わり、新しい一年が始まろうとしていた。
今年の入学式は、第二王女様が入学されるということで、去年のセレモニーホールではなく、学園で一番大きな講堂で行われることとなった。
通常、入学式は新入生とその保護者、あとは生徒会など入学式を手伝った生徒のみが参加するが、今年は生徒も全員参加だ。
王太子殿下が入学なさった6年前もそうだったらしい。
わたしたち二回生は、講堂の後ろの方の席に着いて、入学式の様子を見ていた。
席はクラスごとで、わたしたちが新入生の時は爵位順だったけど、もう学園にも慣れた今はクラスだけ入り混じらなければ好きに座っていいことになっている。
もちろん、わたしはルーク様の隣に座った。
トラウマになるほど嫌いなローゼリア様の入学式だから、わたしはルーク様が大丈夫か心配していたけど、ルーク様はのんきに欠伸をしているので、ちょっぴり安心。かな?
学園長の話が終わり、新入生代表挨拶となる。
去年は主席合格(合格といっても不合格はない。レベルに達しない者は入学前に補習を受けるだけなのだ)のルーク様が挨拶をしたけど、今年は王族の入学があるため、有無を言わさずローゼリア様が挨拶をする。
王族が入る時の慣例だそうで、そうしないとおバカな王族が入学した時に困るのでそうなっているらしい。
ちなみに、成績順クラス分けも有無を言わさずAクラスに入る。
あー。
同じ学年でなくてよかった。
そうでなければクラスメイトだ。
もし、ローゼリア様が寮に入るのであれば、同じ寮で暮らすことになるのだが、ローゼリア様は寮には入らないと聞いている。
よかったよかった。
金色の巻き髪を揺らして、優雅にローゼリア様が壇上に上がり挨拶をする。
「本日は、このような素晴らしい入学式を開いていただき、感謝いたします。わたくし達王族は責任のある行いをしなければなりません。この学園で学ぶ機会を大事に過ごしたいと思います」
そこから、長い挨拶が続いたが、ルーク様は興味なさそうにしていた。
ローゼリア様のお姿を見ても、トラウマが襲って来なかったようで、一安心。
その後も、問題なく式は進行し、筒が無く入学式は終わった。
解散となり、わたしとルーク様も席を立って講堂を出た。
みんなバラバラと寮に帰る中、わたしたちも歩いていると、ルーク様が急にわたしの手を握った。
「別に、もう気にしてないから。あんな子どもの時のこと」
ルーク様がポツリと小さな声で言う。
きっと、式の間中、わたしがルーク様の様子をチラチラ見ていたことに気がついたのだろう。
「うん。わかりました」
「それに、ジーナが居れば、どんなことにも立ち向かえるし」
「はい。わかってますよ」
そうして、わたしたちは見つめ合う。
どちらからともなく、ふふっと笑みが溢れた。
ローゼリア様が近くに居ても、もう気にすることはない。
わたしたちは、そのまま仲良く歩いて行った。
手を繋いで歩くわたしたちが、他の生徒の噂になったのは、言うまでもない。
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