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第1章 出逢い
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わたしとルーク様のこんやくは、無事に整った。
お父様とお母様が、ディヴィス侯爵夫妻と一緒に王城へ出向き、王様にご報告をしたら、大変喜ばれたそうだ。
朝食の席で、お父様がみんなに告げた。
今回、不幸にも英雄が赤ちゃんの時に襲われた。
その時の傷のせいで、婚約者が決まらなかったのを、大層気にしていらしたらしい。
だったら、もっとしっかり守ってくれる兵を侯爵家に貸し出せばよかったのに、とわたしが言うと、お父様は優しく嗜めた。
お父様がお母様に目配せをすると、お母様はお兄様とお姉様を連れて、ダイニングを出て行き、わたしとお父様の2人だけになった。
ダイニングテーブルのイスに座り、コーヒーの入ったマグカップを持ってお父様が言う。
「ジーナ、そんなことを言うものではないよ。誰かに聞かれてしまったら、不敬罪で捕まってしまうからね」
そう言いつつも、お父様はこれからこんやくしやとなるルーク様について教えてくれた。
うちは、領地は小さいけれど、絹織物という特産品を持っているため、お金にも困らず、子爵という高くもないが低すぎることもない爵位を持っているので高位貴族のようなゴタゴタも少ない。
でも、侯爵ともなるとそうはいかないらしい。
うちの9歳になるお兄様は小さい頃から思い合っている男爵家の三女の婚約者がいるし、7歳のお姉様は通っている学校で、素敵な人を見つけて恋愛結婚をすると言っている。
なんだかんだで、お父様とお母様も恋愛結婚らしい。
「でも、ルーク様のお父様とお母様は、政略結婚なんだ」
「せいりゃく結婚?」
わたしが不思議そうな顔をして首を傾げると、お父様は難しそうな顔をした。
「ジーナとルーク様は、結婚することを約束して、出会っただろう? お父様とお母様は、もしもジーナが嫌だと言ったら、お断りをするつもりでいたんだよ。本当なら、爵位が上の縁談を下の者からお断りすることはできないんだが、それまでの経緯があったので、断っても仕方ないから一度だけでも会って欲しいと言われてね。でも、本当の政略結婚は、断ることができないものなんだ」
どうやら、好きでもない人と結婚するのが政略結婚と言うらしい。
うちのお父様は、のほほんとしていて、今の生活に満足しているから、子どもを政略結婚させる必要はないけど、およそのおうちは、高位貴族とのつながりを持ったり、利益が得る目的のために、子どもを政略結婚させる家が多いそうだ。
「侯爵様たちも愛のない結婚をしたんだよ。お互いが課せられた義務のために結婚をし、跡取りのルーク様が生まれた」
侯爵夫妻は、これで自分たちの責任は終わったと思っていたら、運悪く、ルーク様の誕生と同時に赤い月の横を7つの流れ星が流れてしまった。
英雄となる子どもになってしまったルーク様。
もしかしたら、ルーク様は魔物との戦いで死んでしまうかもしれない。
せっかく跡取りが生まれたのに、後を継げないかもしれない。
「だから、侯爵様は王家からもらったお金で、別の屋敷を建てて、そこにルーク様を住まわせた。乳母や侍女、護衛騎士を置き、自分たちはその屋敷には近寄りもせず、ルーク様は王家に捧げたものとして、そのすぐ後にもう一人子どもを作ることを考えた。ルーク様が魔獣に襲われたのは、そうやってご両親がルーク様から目を離した後で、襲われたルーク様の元には、侯爵夫妻が見舞いに訪れることすらなかったと聞く」
わたしは暖かいミルクのカップをテーブルに置いた。
「待って、お父様。では、ルーク様はどうやってお母様に髪を撫でてもらうの? どうやってお父様にぎゅーってしてもらうの?」
お父様は悲しそうに首を振る。
「ルーク様には、誰も側にいないんだよ」
「そんなっ!」
それは、想像しただけで涙が出てくるようなことだった。
お父様もお母様も側にいない。
兄弟もいない。
使用人だけが周りに居て、人の気配はあっても、誰も抱きしめてくれない。
「だから、会ってジーナがルーク様を好きになってくれたら、ルーク様はどんなに救われるだろうと、そう思ってこの話を受けたんだ。どうだい? ジーナ。ルーク様のことを、好きになれそうかい?」
わたしはたまらずに泣き出してしまった。
「わからない……わからないわ、お父様。だって、まだお会いしたばかりですもの。それに、ルーク様はあまりお話をしてくださらなかったわ」
泣きながら首を振るわたしに、お父様は席を立って近づき、ぎゅっと、抱きしめてくれた。
「いいんだよ、ジーナ。泣かなくて。ジーナはジーナのできることをしたらいい。ルーク様をなぐさめてあげたいと思ったらすればいいし、どうしてもルーク様を好きになれなかったら、婚約を解消してもいい」
「ひっく。でも、王様も喜んでた婚約を、やめることなんて、ひっく、できないでしょう?」
お父様は優しく首を振る。
「そんなことはない。ジーナが嫌だと言うのなら、お父様は決闘してでもこの婚約はなかったことにする」
「けっとう?」
「決闘してでも、だ。でも、お父様はこの婚約はうまくいく気がするんだ。優しいおまえが光の魔術を持って生まれたことも、時を同じくして英雄となる運命のルーク様が生まれたことも、意味のあることだったような気がしてるんだ」
抱きしめたまま、お父様はわたしの頭を撫でる。
「こんなに小さな力しかないのに、人が魔力を持って生まれることも、ちゃんと意味のあることのように思えて仕方ないんだ……」
お父様はわたしのことを大事に思ってくれて、こうして抱きしめてくれる。
守ってくれる。
でも、ルーク様にはそれがないんだ。
誰にも守られず、魔獣に顔を焼かれてしまったルーク様。
その顔を見て、悲鳴を上げられて、どんなにか辛かったことだろうと、想像するだけで、涙が止まらなかった。
お父様とお母様が、ディヴィス侯爵夫妻と一緒に王城へ出向き、王様にご報告をしたら、大変喜ばれたそうだ。
朝食の席で、お父様がみんなに告げた。
今回、不幸にも英雄が赤ちゃんの時に襲われた。
その時の傷のせいで、婚約者が決まらなかったのを、大層気にしていらしたらしい。
だったら、もっとしっかり守ってくれる兵を侯爵家に貸し出せばよかったのに、とわたしが言うと、お父様は優しく嗜めた。
お父様がお母様に目配せをすると、お母様はお兄様とお姉様を連れて、ダイニングを出て行き、わたしとお父様の2人だけになった。
ダイニングテーブルのイスに座り、コーヒーの入ったマグカップを持ってお父様が言う。
「ジーナ、そんなことを言うものではないよ。誰かに聞かれてしまったら、不敬罪で捕まってしまうからね」
そう言いつつも、お父様はこれからこんやくしやとなるルーク様について教えてくれた。
うちは、領地は小さいけれど、絹織物という特産品を持っているため、お金にも困らず、子爵という高くもないが低すぎることもない爵位を持っているので高位貴族のようなゴタゴタも少ない。
でも、侯爵ともなるとそうはいかないらしい。
うちの9歳になるお兄様は小さい頃から思い合っている男爵家の三女の婚約者がいるし、7歳のお姉様は通っている学校で、素敵な人を見つけて恋愛結婚をすると言っている。
なんだかんだで、お父様とお母様も恋愛結婚らしい。
「でも、ルーク様のお父様とお母様は、政略結婚なんだ」
「せいりゃく結婚?」
わたしが不思議そうな顔をして首を傾げると、お父様は難しそうな顔をした。
「ジーナとルーク様は、結婚することを約束して、出会っただろう? お父様とお母様は、もしもジーナが嫌だと言ったら、お断りをするつもりでいたんだよ。本当なら、爵位が上の縁談を下の者からお断りすることはできないんだが、それまでの経緯があったので、断っても仕方ないから一度だけでも会って欲しいと言われてね。でも、本当の政略結婚は、断ることができないものなんだ」
どうやら、好きでもない人と結婚するのが政略結婚と言うらしい。
うちのお父様は、のほほんとしていて、今の生活に満足しているから、子どもを政略結婚させる必要はないけど、およそのおうちは、高位貴族とのつながりを持ったり、利益が得る目的のために、子どもを政略結婚させる家が多いそうだ。
「侯爵様たちも愛のない結婚をしたんだよ。お互いが課せられた義務のために結婚をし、跡取りのルーク様が生まれた」
侯爵夫妻は、これで自分たちの責任は終わったと思っていたら、運悪く、ルーク様の誕生と同時に赤い月の横を7つの流れ星が流れてしまった。
英雄となる子どもになってしまったルーク様。
もしかしたら、ルーク様は魔物との戦いで死んでしまうかもしれない。
せっかく跡取りが生まれたのに、後を継げないかもしれない。
「だから、侯爵様は王家からもらったお金で、別の屋敷を建てて、そこにルーク様を住まわせた。乳母や侍女、護衛騎士を置き、自分たちはその屋敷には近寄りもせず、ルーク様は王家に捧げたものとして、そのすぐ後にもう一人子どもを作ることを考えた。ルーク様が魔獣に襲われたのは、そうやってご両親がルーク様から目を離した後で、襲われたルーク様の元には、侯爵夫妻が見舞いに訪れることすらなかったと聞く」
わたしは暖かいミルクのカップをテーブルに置いた。
「待って、お父様。では、ルーク様はどうやってお母様に髪を撫でてもらうの? どうやってお父様にぎゅーってしてもらうの?」
お父様は悲しそうに首を振る。
「ルーク様には、誰も側にいないんだよ」
「そんなっ!」
それは、想像しただけで涙が出てくるようなことだった。
お父様もお母様も側にいない。
兄弟もいない。
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「だから、会ってジーナがルーク様を好きになってくれたら、ルーク様はどんなに救われるだろうと、そう思ってこの話を受けたんだ。どうだい? ジーナ。ルーク様のことを、好きになれそうかい?」
わたしはたまらずに泣き出してしまった。
「わからない……わからないわ、お父様。だって、まだお会いしたばかりですもの。それに、ルーク様はあまりお話をしてくださらなかったわ」
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「いいんだよ、ジーナ。泣かなくて。ジーナはジーナのできることをしたらいい。ルーク様をなぐさめてあげたいと思ったらすればいいし、どうしてもルーク様を好きになれなかったら、婚約を解消してもいい」
「ひっく。でも、王様も喜んでた婚約を、やめることなんて、ひっく、できないでしょう?」
お父様は優しく首を振る。
「そんなことはない。ジーナが嫌だと言うのなら、お父様は決闘してでもこの婚約はなかったことにする」
「けっとう?」
「決闘してでも、だ。でも、お父様はこの婚約はうまくいく気がするんだ。優しいおまえが光の魔術を持って生まれたことも、時を同じくして英雄となる運命のルーク様が生まれたことも、意味のあることだったような気がしてるんだ」
抱きしめたまま、お父様はわたしの頭を撫でる。
「こんなに小さな力しかないのに、人が魔力を持って生まれることも、ちゃんと意味のあることのように思えて仕方ないんだ……」
お父様はわたしのことを大事に思ってくれて、こうして抱きしめてくれる。
守ってくれる。
でも、ルーク様にはそれがないんだ。
誰にも守られず、魔獣に顔を焼かれてしまったルーク様。
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