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1章 人質姫が人質でなくなってから
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会場にいた全員が意欲を持って機関車の講義を聞き、陽も暮れ出した頃、第一日目はお開きとなった。
「エドワード様、今日はありがとうございました。また、引き続き明日もどうぞよろしくお願いいたします」
シャーロットが声を掛けると、エドワードは爽やかに笑って「こちらこそ、明日もよろしくお願いします」と返した。
コーディは何事もなく一日が終わったのを見て胸を撫で下ろす。
「では、エドワード様、今日はお疲れ様でした。シャーロット陛下、執務室へ戻ってフレッド殿と内容のすり合わせをしましょう」
シャーロットとコーディの二人は、エドワードに挨拶をして、その場を離れた。
しばらく歩いて、エドワードからこちらが見えなくなった頃、コーディは慌てた様子でシャーロットを振り返った。
「シャーロット、悪いが一度現場の方に行かせてもらってもいいか? 講義の内容はシャーロットからフレッド殿に伝えられるな?」
「え、ええ。かまいませんけど……」
「では、失礼する!」
シャーロットの了承が得られると、コーディは駆け足でその場を去っていった。
無理をして講義に出たため、仕事の状況が切迫しているのだろう。
「叔父様、だから私一人で大丈夫って言ったのに……」
シャーロットはコーディが無理をして自分についてきたことがわかっていたので、心配しながら後ろ姿を見送った。
さて。
自分も執務室に移動しようとしたとき、後ろから声をかけられる。
「シャーロット陛下」
くるりと振り返ると、さっき別れたはずのエドワードがすぐ後ろに立っていた。
「エドワード様、どうかなさいまして?」
シャーロットが微笑み掛けると、エドワードは目を見開き、その綺麗な様子にしばらく見惚れていた。
「……エドワード様?」
「あっ、失礼。すみません、陛下のあまりの美しさについ見惚れてしまいました」
シャーロットはお世辞を言われたと思い、くすくすと笑う。
「まあ! お上手ね。何か私にご用意でしたか?」
「いえ、用と言うわけではないのですが、もう少し陛下とお話をしたいと思っておりまして。まだリリーも戻ってきてはいないので、植物の方は終わっていないのだと思います。できたら、あちらが終わるまでご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
シャーロットは自分とエドワードが関わる事をあまり良く言っていなかったことを思い出す。
しかし、断る理由も思いつかなかった。
「では、私の執務室でよろしければ
フレッド様がお戻りになられるまで、お茶でも飲んで行かれますか?」
エドワードは人懐こそうな笑顔を浮かべた。
「ぜひ! 喜んでお伺いします」
シャーロットが執務室のドアを開けると、やはり中には誰もいなかった。
「エドワード様、そちらのソファにおかけくださいませ」
シャーロットは執務室内のソファにエドワードを座らせると、すぐに侍女を呼び、お茶の用意をいいつけた。
こんな心細い時はジュディがいてくれれば良いのだが、あいにくジュディは私室の方の侍女であり、執務中は別の侍女が用事をこなしている。
シャーロットは執務室のドアは開けたままにして、エドワードの向かいに腰を下ろした。
「エドワード様、今日は大変為になりましたわ。できれば、早くボナールでも機関車を走らせるようになりたいのですが……」
「何かご不安がごさいますか?」
「そうですわねぇ。主に資金面ですけれども、恒久的に石炭を輸入するか、マジール王国から魔石を買うかですわね。エリシアではどちらで燃料を確保しておりますの?」
「エリシアでは地域によってですね。首都近辺に走る機関車は魔石で走っていますが、やはり田舎の方では石炭ですね」
「そうですか……」
コンコン
開いているドアを侍女がノックする。
「お茶をお持ちしました」
ワゴンにお茶とシフォンケーキを乗せて侍女が執務室に入ってくる。
「シャーロット陛下、特別なご指示がなかったので、フレッド様と同じようにシャーロット陛下のケーキを持ってきてしまったのですが、よろしかったでしょうか?」
侍女が小声でシャーロットに耳打ちする。
「持ってきてしまったものは仕方ないわ。次からはお客様にはちゃんと料理長のケーキにしてね」
シャーロットから注意など受けたことのない侍女は泣きそうな表情になった。
「はい。申し訳ございませんでした」
「いえ、きちんと指示をしなかった私がいけないの。こちらこそごめんなさいね」
シャーロットが微笑むと、侍女も自然と笑顔が戻り、配膳をして退出していった。
「エドワード様、今日はありがとうございました。また、引き続き明日もどうぞよろしくお願いいたします」
シャーロットが声を掛けると、エドワードは爽やかに笑って「こちらこそ、明日もよろしくお願いします」と返した。
コーディは何事もなく一日が終わったのを見て胸を撫で下ろす。
「では、エドワード様、今日はお疲れ様でした。シャーロット陛下、執務室へ戻ってフレッド殿と内容のすり合わせをしましょう」
シャーロットとコーディの二人は、エドワードに挨拶をして、その場を離れた。
しばらく歩いて、エドワードからこちらが見えなくなった頃、コーディは慌てた様子でシャーロットを振り返った。
「シャーロット、悪いが一度現場の方に行かせてもらってもいいか? 講義の内容はシャーロットからフレッド殿に伝えられるな?」
「え、ええ。かまいませんけど……」
「では、失礼する!」
シャーロットの了承が得られると、コーディは駆け足でその場を去っていった。
無理をして講義に出たため、仕事の状況が切迫しているのだろう。
「叔父様、だから私一人で大丈夫って言ったのに……」
シャーロットはコーディが無理をして自分についてきたことがわかっていたので、心配しながら後ろ姿を見送った。
さて。
自分も執務室に移動しようとしたとき、後ろから声をかけられる。
「シャーロット陛下」
くるりと振り返ると、さっき別れたはずのエドワードがすぐ後ろに立っていた。
「エドワード様、どうかなさいまして?」
シャーロットが微笑み掛けると、エドワードは目を見開き、その綺麗な様子にしばらく見惚れていた。
「……エドワード様?」
「あっ、失礼。すみません、陛下のあまりの美しさについ見惚れてしまいました」
シャーロットはお世辞を言われたと思い、くすくすと笑う。
「まあ! お上手ね。何か私にご用意でしたか?」
「いえ、用と言うわけではないのですが、もう少し陛下とお話をしたいと思っておりまして。まだリリーも戻ってきてはいないので、植物の方は終わっていないのだと思います。できたら、あちらが終わるまでご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
シャーロットは自分とエドワードが関わる事をあまり良く言っていなかったことを思い出す。
しかし、断る理由も思いつかなかった。
「では、私の執務室でよろしければ
フレッド様がお戻りになられるまで、お茶でも飲んで行かれますか?」
エドワードは人懐こそうな笑顔を浮かべた。
「ぜひ! 喜んでお伺いします」
シャーロットが執務室のドアを開けると、やはり中には誰もいなかった。
「エドワード様、そちらのソファにおかけくださいませ」
シャーロットは執務室内のソファにエドワードを座らせると、すぐに侍女を呼び、お茶の用意をいいつけた。
こんな心細い時はジュディがいてくれれば良いのだが、あいにくジュディは私室の方の侍女であり、執務中は別の侍女が用事をこなしている。
シャーロットは執務室のドアは開けたままにして、エドワードの向かいに腰を下ろした。
「エドワード様、今日は大変為になりましたわ。できれば、早くボナールでも機関車を走らせるようになりたいのですが……」
「何かご不安がごさいますか?」
「そうですわねぇ。主に資金面ですけれども、恒久的に石炭を輸入するか、マジール王国から魔石を買うかですわね。エリシアではどちらで燃料を確保しておりますの?」
「エリシアでは地域によってですね。首都近辺に走る機関車は魔石で走っていますが、やはり田舎の方では石炭ですね」
「そうですか……」
コンコン
開いているドアを侍女がノックする。
「お茶をお持ちしました」
ワゴンにお茶とシフォンケーキを乗せて侍女が執務室に入ってくる。
「シャーロット陛下、特別なご指示がなかったので、フレッド様と同じようにシャーロット陛下のケーキを持ってきてしまったのですが、よろしかったでしょうか?」
侍女が小声でシャーロットに耳打ちする。
「持ってきてしまったものは仕方ないわ。次からはお客様にはちゃんと料理長のケーキにしてね」
シャーロットから注意など受けたことのない侍女は泣きそうな表情になった。
「はい。申し訳ございませんでした」
「いえ、きちんと指示をしなかった私がいけないの。こちらこそごめんなさいね」
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