151 / 187
20章 虹の国の後継者
5
しおりを挟む
「マリー、どういうことなの?」
お母様が入れ替わった証拠があると、お母様が生きていた証拠があると、そういうことなの?
マリーは私に優しく微笑む。
「姫様、今まで黙っていて申し訳ありませんでした。姫様の母上のご遺体は、こちらの大神殿にてお眠りいただいております。それが、わたくしが秘せねばならなかった真実にございます」
お母様のご遺体がここに?
ディリオン様が腕を組み、納得したような口調で言う。
「おかしいと思ったのだ。いくら大きな火事だったとはいえ、骨も見つからないくらい焼き尽くすのは無理がある。どんなに高温で焼いても、通常の炎であれば骨は焼けずに残るはずだからな」
「遺体を引き取って、秘密裏にここに隠したんだね……」
フレッド様もディリオン様に続き、声を出す。
ライリー殿下が神官長に問う。
「何故、遺体がここにあることが血の誓約をせねばならないほどの秘密なのだ?」
「それは、ご遺体についている、ある物が王位継承の証だからです。これから、確認をしていただきましょう」
神官長様はそういうと、もう1人の神官様に合図を送った。
神官様は立ち上がり、私たちの後ろにあった本棚へと近付き、何冊か本を取り出すとその奥に隠してあったレバーを押した。
すると、本棚が移動し、地下へと続く階段が現れた。
「こちらは王族の方々の安置所です。墓が暴かれることのないように、大神殿の最奥に安置所が作られています」
燭台を持った神官長様に先導され、地下へと歩みを進める。
ひんやりとした空気に、身が引き締まる。
階段の一番下まで来ると、神官長様は安置所にある燭台に火を灯した。
室内が明るくなり、部屋の全貌が見える。
赤い絨毯が敷かれたその部屋には、いくつもの棺が置かれており、棺の上にはその王が使っていたであろう王冠が置かれていた。
その中で、2つだけ王冠の置かれていない棺があった。
「こちらがコルビー陛下と王妃エレノア様の棺でございます。今までコルビー陛下の王冠は弟のコルビー様がお使いになられていたので、こちらにお納めすることができなかったのです。もう退位をされて、ちょうどこの大神殿に王冠が戻ってきたところでした。お納めいたしましょう」
神官長様が神官様に目配せをすると、神官様は抱えていた箱の中から王冠を取り出して神官長様に渡した。
神官長様は棺に王冠を納め、祈りを捧げた。
神官様が、もう一つの箱を開けようとしたけれど、神官長様は「こちらの棺は開けなければならないので、その後で」と言って、もう一つの方は受け取らなかった。
「16年前、離れに火を放たれ、すべてを焼き尽くした時に、マリー殿はシャーロット殿下を抱いて、この大神殿に駆け込んだのです。マリー殿とシャーロット様は安全が確認できるまで、この大神殿に居ていただきました。そして、わたしとそこの神官と、もう1人、今はもう病気で逝ってしまった神官の3人で焼け跡の離れに行き、誰にも見つからないうちに、秘密裏にご遺体をここにお運びしたのです」
王冠のない、もう一つの棺の前に来て、神官長様は祈りを捧げた。
「眠りを妨げること、お許しください」
そう言って、棺に手をかける。
「手伝おう」
ライリー殿下が年老いた神官長様を手伝い、2人で棺の蓋を開けた。
「これは……!」
棺の中を見た2人が、驚いたような声を上げる。
私たちも急いで近寄り、棺の中を確かめた。
棺の中で眠っていたお母様は、16年前の遺体であるならば、骨だけが残っているという状態のはずだった。
私も、初めてお見かけするお母様はそんな状態だと思っていたのに、棺の中のお母様は、美しい金髪はそのまま艶々としており、お顔にも生前の美しさが窺えるようなお姿だった。
まだ生きていて、ただ目をつぶっているだけと言われても信じてしまいそうな、そんなお姿だった。
「神官長殿っ、これは16年前にご逝去された人間の遺体ではなかろう。焼け爛れたあともない。棺を間違えたのではないか?」
ディリオン様が神官長様に詰め寄る。
「いえ、こちらの棺で間違いありません。この、16年の間にお亡くなりになられたのはこのお二人だけです。ここは、16年間、一度も扉を開けられていない部屋です」
「では、一体……」
みんなで茫然と棺を見ていると、マリーが一歩棺に近寄った。
「お妃様は、初めて愛娘に会うのに、お骨の姿ではお嫌だったのですよ。それでいいじゃありませんか。エレノア様、あなた様の娘のシャーロット様がいらしてますよ。こんなに立派にお育ちになられました。国のことをお考えくださる、とてもいい国王様におなりですよ」
マリーはポロポロと涙を流しながら、お母様のご遺体に話しかけた。
その様子を見て、神官長様が口を開く。
「おそらく、これは虹の力だと思います。真実を白日の元に晒すために、虹がエレノア様をシャーロット様に合わせるために、このようにしたのではないかと思います。この肉体が、エレノア様のものだと示すために」
その姿を見て、私の瞳からも、後から後から涙が溢れてきて止まらなかった。
私も棺の中のお母様の側に寄る。
「お母様、お母様がお亡くなりになられたこと、知らずにいてごめんなさい。お母様、私を産んでくれてありがとう。私を最期まで大事に守ってくれて、本当にありがとう」
私は初めて、本当のお母様に声を掛けることができた。
私が声を掛けたその瞬間、お母様の指につけられていた指輪が、眩いばかりの光を放った。
それは、虹のように七色に光り輝いて見えた。
お母様が入れ替わった証拠があると、お母様が生きていた証拠があると、そういうことなの?
マリーは私に優しく微笑む。
「姫様、今まで黙っていて申し訳ありませんでした。姫様の母上のご遺体は、こちらの大神殿にてお眠りいただいております。それが、わたくしが秘せねばならなかった真実にございます」
お母様のご遺体がここに?
ディリオン様が腕を組み、納得したような口調で言う。
「おかしいと思ったのだ。いくら大きな火事だったとはいえ、骨も見つからないくらい焼き尽くすのは無理がある。どんなに高温で焼いても、通常の炎であれば骨は焼けずに残るはずだからな」
「遺体を引き取って、秘密裏にここに隠したんだね……」
フレッド様もディリオン様に続き、声を出す。
ライリー殿下が神官長に問う。
「何故、遺体がここにあることが血の誓約をせねばならないほどの秘密なのだ?」
「それは、ご遺体についている、ある物が王位継承の証だからです。これから、確認をしていただきましょう」
神官長様はそういうと、もう1人の神官様に合図を送った。
神官様は立ち上がり、私たちの後ろにあった本棚へと近付き、何冊か本を取り出すとその奥に隠してあったレバーを押した。
すると、本棚が移動し、地下へと続く階段が現れた。
「こちらは王族の方々の安置所です。墓が暴かれることのないように、大神殿の最奥に安置所が作られています」
燭台を持った神官長様に先導され、地下へと歩みを進める。
ひんやりとした空気に、身が引き締まる。
階段の一番下まで来ると、神官長様は安置所にある燭台に火を灯した。
室内が明るくなり、部屋の全貌が見える。
赤い絨毯が敷かれたその部屋には、いくつもの棺が置かれており、棺の上にはその王が使っていたであろう王冠が置かれていた。
その中で、2つだけ王冠の置かれていない棺があった。
「こちらがコルビー陛下と王妃エレノア様の棺でございます。今までコルビー陛下の王冠は弟のコルビー様がお使いになられていたので、こちらにお納めすることができなかったのです。もう退位をされて、ちょうどこの大神殿に王冠が戻ってきたところでした。お納めいたしましょう」
神官長様が神官様に目配せをすると、神官様は抱えていた箱の中から王冠を取り出して神官長様に渡した。
神官長様は棺に王冠を納め、祈りを捧げた。
神官様が、もう一つの箱を開けようとしたけれど、神官長様は「こちらの棺は開けなければならないので、その後で」と言って、もう一つの方は受け取らなかった。
「16年前、離れに火を放たれ、すべてを焼き尽くした時に、マリー殿はシャーロット殿下を抱いて、この大神殿に駆け込んだのです。マリー殿とシャーロット様は安全が確認できるまで、この大神殿に居ていただきました。そして、わたしとそこの神官と、もう1人、今はもう病気で逝ってしまった神官の3人で焼け跡の離れに行き、誰にも見つからないうちに、秘密裏にご遺体をここにお運びしたのです」
王冠のない、もう一つの棺の前に来て、神官長様は祈りを捧げた。
「眠りを妨げること、お許しください」
そう言って、棺に手をかける。
「手伝おう」
ライリー殿下が年老いた神官長様を手伝い、2人で棺の蓋を開けた。
「これは……!」
棺の中を見た2人が、驚いたような声を上げる。
私たちも急いで近寄り、棺の中を確かめた。
棺の中で眠っていたお母様は、16年前の遺体であるならば、骨だけが残っているという状態のはずだった。
私も、初めてお見かけするお母様はそんな状態だと思っていたのに、棺の中のお母様は、美しい金髪はそのまま艶々としており、お顔にも生前の美しさが窺えるようなお姿だった。
まだ生きていて、ただ目をつぶっているだけと言われても信じてしまいそうな、そんなお姿だった。
「神官長殿っ、これは16年前にご逝去された人間の遺体ではなかろう。焼け爛れたあともない。棺を間違えたのではないか?」
ディリオン様が神官長様に詰め寄る。
「いえ、こちらの棺で間違いありません。この、16年の間にお亡くなりになられたのはこのお二人だけです。ここは、16年間、一度も扉を開けられていない部屋です」
「では、一体……」
みんなで茫然と棺を見ていると、マリーが一歩棺に近寄った。
「お妃様は、初めて愛娘に会うのに、お骨の姿ではお嫌だったのですよ。それでいいじゃありませんか。エレノア様、あなた様の娘のシャーロット様がいらしてますよ。こんなに立派にお育ちになられました。国のことをお考えくださる、とてもいい国王様におなりですよ」
マリーはポロポロと涙を流しながら、お母様のご遺体に話しかけた。
その様子を見て、神官長様が口を開く。
「おそらく、これは虹の力だと思います。真実を白日の元に晒すために、虹がエレノア様をシャーロット様に合わせるために、このようにしたのではないかと思います。この肉体が、エレノア様のものだと示すために」
その姿を見て、私の瞳からも、後から後から涙が溢れてきて止まらなかった。
私も棺の中のお母様の側に寄る。
「お母様、お母様がお亡くなりになられたこと、知らずにいてごめんなさい。お母様、私を産んでくれてありがとう。私を最期まで大事に守ってくれて、本当にありがとう」
私は初めて、本当のお母様に声を掛けることができた。
私が声を掛けたその瞬間、お母様の指につけられていた指輪が、眩いばかりの光を放った。
それは、虹のように七色に光り輝いて見えた。
6
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる