人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

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16章 想いの行方

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そうして、マリーが語ったボナールの王室の話は、想像を絶するものだった。

シャーロットは、どんなに辛かっただろうか。
両親を殺され、尚且つ金の為に身を売られて。
なるほど。養父の都合で嫁いできたといったあの言葉は、そういうことだったのか。

ディリオンが口元に手をあて、思案する。
「……マリー殿の話はよくわかった。だが、その話が本当だとすると、大変なことだ。口封じの為に、ランバラルドまで追ってくるのではないか?」

マリー達の代わりに、ギルバートが答える。
「わたしは最初からこの話を聞いていたからな。ボナールの土地に、マリーとアーサーの衣服をボロボロにして置いてきた。ちゃんと血もつけておいたぞ。豚の血だがな」
「ギルバート様…。できれば、肉片や髪の毛も置いてきてくれれば尚よかったですがね…」
ディリオンはメガネをクイッと上げた。

いや、肉片って、そこまでできる人はごく僅かだからなっ!
ほら、ギルバートが不貞腐れている。

「あとは…。話を戻して、国王暗殺というところだな。マリー殿の話だと、王位継承権に相違ができるな。最初の交渉に行った時におかしいと思ったのだ。どうりで、町で聞いた第一王女と第二王女の話に齟齬が出ると思ったのだ。自分で入れ替えておきながら、自分の娘を差し出したくないがために、また更に嘘を重ね出し、第二王女を七色の乙女などと嘘をついたわけだ」

引き続き、ディリオンが話す。
「今の王には王たる資格がないのだが、排斥することはできないのであろうか」
その問いに、すぐにマリーが答える。
「もともと、スペアとして育てられた弟様でございます。痕跡を残したりはしないのではないかと。わたくし共はそう言った王位継承の場に立ち会えないので、なんともわかりませんが」

「おい、ディリオン。それならそれで、予定通りシャーロットに王位を継いでもらい、共和制が成り立つまでうちで面倒をみたらいいのではないか?」
オレは過去の殺人の証拠を見つけるより、当初考えた通りに動かす方がいいと思ったのだ。

「……そうだな。ひとまず、その路線は変えないようにしよう」

「でもさ、もしかしたら、王位にしがみつく可能性もあるよね?」
今度は、フレッドが意見を出す。
「だってさ、セリーヌ王女は今まで贅沢三昧してきたわけじゃん?王位継承権を素直に渡すとは思えない。今日、来賓の方達から聞いた話だと、かなり広範囲で声をかけていたぞ。しかも、セリーヌ王女が声をかけた人物は、資金が潤沢にある家の子息ばかり。あきらかにお金目当てだよね。そんな状況から、資金が舞い込む王室の肩書を、何事もなく手放すとは思えないな」

やっぱり、ボナールにはお金がないようだ。
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