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15章 ボナールの王女
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「王子だけが納得していても、オレたちはさっぱり状況がわからん。整理するならちゃんと整理をしろ」
ディリオンが渋い顔でいうので、今度こそ筋道を立てて話を聞こうと思う。
「さあ、まずランバラルドへ入国した時のことから話してもらえる?」
オレがそう言うと、ロッテはゆっくりと話し始めた。
ボナールを出国した頃、髪色が変わったこと。
離宮で暮らし始めた頃、メイドとしても働き始めたこと。
ギルバートがちょっかい掛けにきたことと、アーサーとマリーがボナールで命を狙われて逃げてきたこと。
そして、そこでオレと出会ったわけだ。
王女として有り得ない経歴に、さすがのディリオンでさえも、口を開けて驚いていた。
驚かなかったのは、ギルバートくらいだ。
「わたしはシャーロットがとんでもない王女だと最初から知っていたからな。何せ、初めてシャーロットを見た時は、離宮の裏でスカートをめくってたわんだスカートの中に木苺を摘み入れるという、あられもない姿だった。腿まで見えていたぞ」
ロッテは顔を真っ赤にした。
「なっ、ギルバート様、見ていらしたのなら、お声かけくださいな」
「声なんか掛けられるか。同じ城の敷地内に住んでいるとは言え、誰にも紹介もされてないんだぞ」
「そういえば、ギルバート様は誰から私のことをお聞きになったのですか?」
「ん?ドニーが国王と話しているのを立ち聞きした」
ギルバートがそう言うと、一斉にフレッドに視線が集まる。
「な、なんだよ」
「フレッド、カエルをなんとかしろ。仕事ができるのは知っているが、それ以外のところが残念過ぎる」
ディリオンが言うと、フレッドは反論する。
「親のことまで責任持てるかっつーの!」
「なあ、なんでアーサーとマリーはボナールで狙われていたんだ?」
一介の侍女と騎士が、王室に命を狙われるなんて普通はあり得ない。
オレがそう訊くと、ロッテは困ったような顔をした。
だが、ロッテが口を開く前に、ギルバートがオレを制す。
「そこは長い話になる。マリーとアーサーを呼んだ方がいいだろう。それよりも、ライリーは明日、セリーヌ王女をなんとかしろ。夜会は終わったんだ。早々に帰ってもらえ」
「それはもちろん、そのつもりだ」
セリーヌ王女は、付き添いは従者と侍女しかつれてきていない。
親兄弟がついているより、説得もしやすいだろう。
「そう簡単にいくといいのだがな」
ディリオンは渋い顔で言う。
「ああいう輩は、なんだかんだとイチャモンをつけ、居座りたがるだろう。他の国の王女も、この後数日は滞在して、城以外の観光地等の訪問予定があるからな」
「ひとまず、今日はもう遅い。一度解散にして、明日また策を練ろう」
オレがそう言うと、みんなが同意する。
「王子、貴様にはまだ仕事が残っている。夜会の締めくくりの挨拶をして来い」
ディリオンはそう言うが、オレはロッテの側を離れたくなかった。
「じゃ、オレの妃だし、ロッテも一緒に」
ロッテの手を取ろうとすると、ギルバートを先に奪われた。
「ライリー、お前ほんとにバカだな。あんな風に噂された側妃が、王太子と一緒に見送りに出られる訳がないだろう。挨拶はお前ひとりでやれ」
「でも、そうしたらロッテがひとりに……」
「ならない。わたしがシャーロットを送って行くから何も心配しなくていい」
フレッドもそれに同意した。
「ほんとはシャーロットちゃんを連れてきたオレが責任持って送るべきだろうけど、王太子の側近が出ないわけにもいかないからな」
「フォンテール公爵は出なくていいのかよ」
オレは不貞腐れて訊く。
「わたしはまだ未成年だ。夜会に最後までいなくとも。誰も何も言わんな」
ちくしょう。
ギルバートのやつ。
こんな時ばっかり未成年を言い訳にして。
とってもとっても悔しかったが、とりあえずみんなの意見を飲み、オレ達は夜会の会場へと戻って行った。
ディリオンが渋い顔でいうので、今度こそ筋道を立てて話を聞こうと思う。
「さあ、まずランバラルドへ入国した時のことから話してもらえる?」
オレがそう言うと、ロッテはゆっくりと話し始めた。
ボナールを出国した頃、髪色が変わったこと。
離宮で暮らし始めた頃、メイドとしても働き始めたこと。
ギルバートがちょっかい掛けにきたことと、アーサーとマリーがボナールで命を狙われて逃げてきたこと。
そして、そこでオレと出会ったわけだ。
王女として有り得ない経歴に、さすがのディリオンでさえも、口を開けて驚いていた。
驚かなかったのは、ギルバートくらいだ。
「わたしはシャーロットがとんでもない王女だと最初から知っていたからな。何せ、初めてシャーロットを見た時は、離宮の裏でスカートをめくってたわんだスカートの中に木苺を摘み入れるという、あられもない姿だった。腿まで見えていたぞ」
ロッテは顔を真っ赤にした。
「なっ、ギルバート様、見ていらしたのなら、お声かけくださいな」
「声なんか掛けられるか。同じ城の敷地内に住んでいるとは言え、誰にも紹介もされてないんだぞ」
「そういえば、ギルバート様は誰から私のことをお聞きになったのですか?」
「ん?ドニーが国王と話しているのを立ち聞きした」
ギルバートがそう言うと、一斉にフレッドに視線が集まる。
「な、なんだよ」
「フレッド、カエルをなんとかしろ。仕事ができるのは知っているが、それ以外のところが残念過ぎる」
ディリオンが言うと、フレッドは反論する。
「親のことまで責任持てるかっつーの!」
「なあ、なんでアーサーとマリーはボナールで狙われていたんだ?」
一介の侍女と騎士が、王室に命を狙われるなんて普通はあり得ない。
オレがそう訊くと、ロッテは困ったような顔をした。
だが、ロッテが口を開く前に、ギルバートがオレを制す。
「そこは長い話になる。マリーとアーサーを呼んだ方がいいだろう。それよりも、ライリーは明日、セリーヌ王女をなんとかしろ。夜会は終わったんだ。早々に帰ってもらえ」
「それはもちろん、そのつもりだ」
セリーヌ王女は、付き添いは従者と侍女しかつれてきていない。
親兄弟がついているより、説得もしやすいだろう。
「そう簡単にいくといいのだがな」
ディリオンは渋い顔で言う。
「ああいう輩は、なんだかんだとイチャモンをつけ、居座りたがるだろう。他の国の王女も、この後数日は滞在して、城以外の観光地等の訪問予定があるからな」
「ひとまず、今日はもう遅い。一度解散にして、明日また策を練ろう」
オレがそう言うと、みんなが同意する。
「王子、貴様にはまだ仕事が残っている。夜会の締めくくりの挨拶をして来い」
ディリオンはそう言うが、オレはロッテの側を離れたくなかった。
「じゃ、オレの妃だし、ロッテも一緒に」
ロッテの手を取ろうとすると、ギルバートを先に奪われた。
「ライリー、お前ほんとにバカだな。あんな風に噂された側妃が、王太子と一緒に見送りに出られる訳がないだろう。挨拶はお前ひとりでやれ」
「でも、そうしたらロッテがひとりに……」
「ならない。わたしがシャーロットを送って行くから何も心配しなくていい」
フレッドもそれに同意した。
「ほんとはシャーロットちゃんを連れてきたオレが責任持って送るべきだろうけど、王太子の側近が出ないわけにもいかないからな」
「フォンテール公爵は出なくていいのかよ」
オレは不貞腐れて訊く。
「わたしはまだ未成年だ。夜会に最後までいなくとも。誰も何も言わんな」
ちくしょう。
ギルバートのやつ。
こんな時ばっかり未成年を言い訳にして。
とってもとっても悔しかったが、とりあえずみんなの意見を飲み、オレ達は夜会の会場へと戻って行った。
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