89 / 187
12章 告白への道のり
3
しおりを挟む
「あら、ギルバート様、いらっしゃいませ」
閉じようとしたドアを開けて、ギルバート様を迎え入れる。
「応接室はすぐ使えますよ。紅茶は何を入れますか?」
「ダージリンで」
私は紅茶を用意して、応接室へと向かった。
中に入ると、不機嫌丸出しのギルバート様がソファに踏ん反り返っていた。
「シャーロット!なんだ、あの砂を吐くような会話は」
ギルバート様は差し出したアップルパイを口に入れ、紅茶に口をつける。
怒るか食べるか飲むか、ひとつにできないんですかねぇ。忙しい人です。
「ギルバート様、怒って召し上がると胃に良くありませんわ。そして、何を怒っていらっしゃるの?」
私も来客対応が終わって、一息つくために紅茶のカップを取った。
「ジュディから、今日はフレッドが来るが自分はお使いに行かなければならないからと、シャーロットのことを頼まれたんだ。だから、こっそりと中の様子を窺っていれば、なんだあの身体中がかゆくなるような2人の会話は」
「先ほどから、なんだなんだと言われましてもなんのことだかわかりません!」
チラッと、ギルバート様が私を横目で見る。
「本当にわからないのか?」
「わかりません」
正直にそう告げると、ギルバート様は大きなため息をついて、ソファにだらんともたれた。
「いい。もうわかった。ギルバートがしたことは全部無駄なことだ」
何かお疲れになったご様子で、ギルバート様は目を閉じた。
「もしかして、ご心配をおかけしてましたか?」
「いや、別にそんなことはない。なんでわたしがシャーロットの心配なんぞしなければならないのだ」
つん。と横を向くギルバート様。でもお耳が赤くなってますわよ。
「ところで、シャーロット。フレッドが言っていたボナールが共和制になるというのは本当なのだろうか」
「さぁ…。もうボナールの情報は何一つ入って来ないので…。ただ、国王が大人しく玉座を手放すとは思えないのですけれど」
人を殺してまで得たその地位を手放す時は、それに代わるものを得ようとするに違いない。
綺麗な所作で紅茶を飲んで、ギルバート様は私を見る。
「まあ、共和制を取ろうが王政のまま行こうが、シャーロットは安心してランバラルドにいろ。わたしが身の安全は保証してやる」
「ふふ。ありがとうございます」
「ところで、頼んでいた刺繍はできたのか?」
「あ、はい。すっかり遅くなりまして申し訳ございません」
私は立ち上がり、二階の自室にそれを取りに行く。
そして、引き出しから3枚の刺繍を持ち出した。
両手でそれを持ち、急いで応接室に戻る。
「ギルバート様。ご覧くださいませ」
3枚ともギルバート様に手渡した。
「ほお。苦手と言っていた割にはよくできているではないか」
ギルバート様はテーブルに3枚とも広げて見ている。
糸の色が違うが、デザインはみんな同じだ、
「うん。この緑のものが一番気に入った。蔦が絡まるように刺されている飾り文字も気に入った」
「気にいってもらえるものがあってよかったです」
ギルバート様は上機嫌で刺繍したハンカチーフを眺めていた。
「まあ、次の夜会で奴らに婚約者ができるかどうかは疑問だがな」
面白そうな顔をしてギルバート様が言う。
「あら、何故ですの?王太子様とその側近の方々の婚約者選びの夜会なのでしょう?」
「この間、ディリオン主導で大規模な盗賊の捕縛作戦が決行されたのだが、空振りに終わった。シャーロットもボナールから来る時に通って来たと思うが、国境の森に盗賊が住みついていたらしいが、どうやら事前に情報が漏れたようだ。そんな訳で、あいつらはみんな機嫌が悪い」
「フレッド様はご機嫌悪くなかったようですけど…?」
「フレッドは表情に出さないようにするのが上手いやつだ。それに今日はデレデレしていたからだな」
デレデレになるほどお菓子がお好きなのね。
また今度差し入れして差し上げよう。
「まあ、わたしは夜会で高見の見物をしてくる。面白いことがあれば、教えてやるからな」
ギルバート様は、ニヤニヤしながら残りのアップルパイとクッキーを根こそぎ持って、帰って行った。
だから、私の分のオヤツを残して置いてくださいって何度も言っているのに!
ギルバート様は非情だ。
閉じようとしたドアを開けて、ギルバート様を迎え入れる。
「応接室はすぐ使えますよ。紅茶は何を入れますか?」
「ダージリンで」
私は紅茶を用意して、応接室へと向かった。
中に入ると、不機嫌丸出しのギルバート様がソファに踏ん反り返っていた。
「シャーロット!なんだ、あの砂を吐くような会話は」
ギルバート様は差し出したアップルパイを口に入れ、紅茶に口をつける。
怒るか食べるか飲むか、ひとつにできないんですかねぇ。忙しい人です。
「ギルバート様、怒って召し上がると胃に良くありませんわ。そして、何を怒っていらっしゃるの?」
私も来客対応が終わって、一息つくために紅茶のカップを取った。
「ジュディから、今日はフレッドが来るが自分はお使いに行かなければならないからと、シャーロットのことを頼まれたんだ。だから、こっそりと中の様子を窺っていれば、なんだあの身体中がかゆくなるような2人の会話は」
「先ほどから、なんだなんだと言われましてもなんのことだかわかりません!」
チラッと、ギルバート様が私を横目で見る。
「本当にわからないのか?」
「わかりません」
正直にそう告げると、ギルバート様は大きなため息をついて、ソファにだらんともたれた。
「いい。もうわかった。ギルバートがしたことは全部無駄なことだ」
何かお疲れになったご様子で、ギルバート様は目を閉じた。
「もしかして、ご心配をおかけしてましたか?」
「いや、別にそんなことはない。なんでわたしがシャーロットの心配なんぞしなければならないのだ」
つん。と横を向くギルバート様。でもお耳が赤くなってますわよ。
「ところで、シャーロット。フレッドが言っていたボナールが共和制になるというのは本当なのだろうか」
「さぁ…。もうボナールの情報は何一つ入って来ないので…。ただ、国王が大人しく玉座を手放すとは思えないのですけれど」
人を殺してまで得たその地位を手放す時は、それに代わるものを得ようとするに違いない。
綺麗な所作で紅茶を飲んで、ギルバート様は私を見る。
「まあ、共和制を取ろうが王政のまま行こうが、シャーロットは安心してランバラルドにいろ。わたしが身の安全は保証してやる」
「ふふ。ありがとうございます」
「ところで、頼んでいた刺繍はできたのか?」
「あ、はい。すっかり遅くなりまして申し訳ございません」
私は立ち上がり、二階の自室にそれを取りに行く。
そして、引き出しから3枚の刺繍を持ち出した。
両手でそれを持ち、急いで応接室に戻る。
「ギルバート様。ご覧くださいませ」
3枚ともギルバート様に手渡した。
「ほお。苦手と言っていた割にはよくできているではないか」
ギルバート様はテーブルに3枚とも広げて見ている。
糸の色が違うが、デザインはみんな同じだ、
「うん。この緑のものが一番気に入った。蔦が絡まるように刺されている飾り文字も気に入った」
「気にいってもらえるものがあってよかったです」
ギルバート様は上機嫌で刺繍したハンカチーフを眺めていた。
「まあ、次の夜会で奴らに婚約者ができるかどうかは疑問だがな」
面白そうな顔をしてギルバート様が言う。
「あら、何故ですの?王太子様とその側近の方々の婚約者選びの夜会なのでしょう?」
「この間、ディリオン主導で大規模な盗賊の捕縛作戦が決行されたのだが、空振りに終わった。シャーロットもボナールから来る時に通って来たと思うが、国境の森に盗賊が住みついていたらしいが、どうやら事前に情報が漏れたようだ。そんな訳で、あいつらはみんな機嫌が悪い」
「フレッド様はご機嫌悪くなかったようですけど…?」
「フレッドは表情に出さないようにするのが上手いやつだ。それに今日はデレデレしていたからだな」
デレデレになるほどお菓子がお好きなのね。
また今度差し入れして差し上げよう。
「まあ、わたしは夜会で高見の見物をしてくる。面白いことがあれば、教えてやるからな」
ギルバート様は、ニヤニヤしながら残りのアップルパイとクッキーを根こそぎ持って、帰って行った。
だから、私の分のオヤツを残して置いてくださいって何度も言っているのに!
ギルバート様は非情だ。
27
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。
恋愛系
恋愛
屋敷が大っ嫌いだったミア。
そして、屋敷から出ると決め
計画を実行したら
皮肉にも失敗しそうになっていた。
そんな時彼に出会い。
王国の陛下を捨てて、村で元気に暮らす!
と、そんな時に聖騎士が来た
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
【コミカライズ決定】魔力ゼロの子爵令嬢は王太子殿下のキス係
ayame@コミカライズ決定
恋愛
【ネトコン12受賞&コミカライズ決定です!】私、ユーファミア・リブレは、魔力が溢れるこの世界で、子爵家という貴族の一員でありながら魔力を持たずに生まれた。平民でも貴族でも、程度の差はあれど、誰もが有しているはずの魔力がゼロ。けれど優しい両親と歳の離れた後継ぎの弟に囲まれ、贅沢ではないものの、それなりに幸せな暮らしを送っていた。そんなささやかな生活も、12歳のとき父が災害に巻き込まれて亡くなったことで一変する。領地を復興させるにも先立つものがなく、没落を覚悟したそのとき、王家から思わぬ打診を受けた。高すぎる魔力のせいで身体に異常をきたしているカーティス王太子殿下の治療に協力してほしいというものだ。魔力ゼロの自分は役立たずでこのまま穀潰し生活を送るか修道院にでも入るしかない立場。家族と領民を守れるならと申し出を受け、王宮に伺候した私。そして告げられた仕事内容は、カーティス王太子殿下の体内で暴走する魔力をキスを通して吸収する役目だったーーー。_______________
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる