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11章 ボナールへ再び
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サクッと一口食べて目を見開く。
「同じ味…?」
何と同じ味なのか、フレッドの言葉が気になってクッキーに思いを巡らす。
あ…!
そういえば、以前フレッドが誰かにもらったと言っていたクッキーがこれと似たような味がした。気がする。
フレッドはあれを誰かにもらったと言っていた。
買ったものを作ったと、偽られたと思っているのだろうか…。
「フレッド、この店はつい最近オープンしたばかりの店で買ったものだぞ。だから、それより前にもらったクッキーは買ったものじゃないと思う」
「え…ほんとに?」
不安そうに揺れる瞳に、オレは確信を得る。
「ああ。だから、きっとフレッドがもらったクッキーは、ちゃんとその令嬢の手作りだったんじゃないかな」
「…そっか」
フレッドは笑みをこぼした。
「王子、ボナールについてからなんだけど、王子は一緒に国王と謁見する?」
「うーん。そうだな。今回はオレも行こう。この状況に、王が何を考えているのか気になる」
馬車を走らせて、何日もかけてボナール城へと向かう。
オレが遭難した森も、馬車を使えば1日で通り抜けることができる。
馬車が通る国道は、盗賊が巣食う森の中には見えないように整備されている。
この森に滞在しているのが、盗賊だけなのか、難民も含まられるのか。
帰国後にディリオンの報告を待とう。
ボナールの国は敗戦直後ということもあってか、町に活気はあまりない。
城下町まで来たオレとフレッド、ジェイミーの3人は、今度はランバラルドの使者として、きちんと貴族専用のホテルを取った。
ボナールへの使者を出した時に、城への滞在を勧められたが、何を企んでいるのかわからない敵国の城で寝泊りする気はない。
ボナール城付近に到着したその日は、ホテルでゆっくり疲れを取ってから次の日にボナール城へ訪問の予定だ。
「フレッド、オレは少し城下町を歩いて来るが、フレッドはどうする?」
フレッドはベッドに寝転がり、ディリオンから渡された書類に目を通していた。
「ん~、オレはいいや。ここで明日に備えてゆっくりしてるよ」
「じゃ、ジェイミー、悪いけど一緒にきてくれ」
ジェイミーは「わかった」とだけ言って、腰に短剣をつけて外出の準備をした。
店が立ち並ぶ商店街は、扉を閉ざしたままの店が数軒あった。
道行く人に聞くと、小さなところは店をたたんで、他国にある親戚を頼って引っ越したりしているらしい。
ボナールは豊かな土壌に作物が豊かに育つため、麦や果物などを輸出したり、豊富な作物を使って、ソースやワインのような食料品を輸出している。
作物が豊かに実るということは、それを食べる家畜も豊富にいる。
特産物は食べ物全般だ。
だが、農家以外の商店は、流通がなくなれば潰れるしかない。
商店街を歩くと、ついついロッテにおみやげを考えて歩くが、食料品を女性に買って喜ばれるのだろうか…?
ロッテなら、何を買って行っても喜びそうだけど…。
ジェイミーと歩いていると、王家御用達の看板を掲げた宝石店が見えた。
ちょうどロッテのことを考えていたので、迷わずそこに入った。
ちょうど、ジェイミーも婚約者にみやげを買うと言っているのでちょうど良い。
ふたりで店内を見回し、ショーケースに陳列されているアクセサリーを見る。
細工も凝っているし、使われている石も上等なものだ。
ショーケースの中に、青い石を使ったブレスレットを見つけた。
店員を呼び、ケースから出して手に取らせてもらう。
「石の透明度もいい。これはいくらだ?」
カチッとしたスーツの店員がもみ手で答える。
「お客様、他国の方ですね。共通通過でしたら銀貨一枚と銅貨二枚になりますね」
「銀貨一枚と銅貨二枚…。安いな」
「ええ。閉店セール中ですので。お客様運がいいです」
「店を閉めるのか?」
「はい。長い間ボナールで稼がせていただきましたが、もう市民はほとんどの者がアクセサリーを買う余裕がありません。一握りの貴族と王家はご購入くださいますが、王家も前ほどは御入用では無いご様子ですので、閉店し、ザーランドの本店に帰るつもりです。高価な宝石を多数持っての移動は困難なため、セールでできるだけ売ってから店を閉めようと思いまして。なので、余裕があればもう一つお買いになりませんか?」
それならと思って店内を見るが、みやげと言うには高価過ぎる。
このブレスレットだって受け取ってもらえるか…。
「ジェイミー、お前はここで買ったらどうだ。婚約者なら、喜んで受け取ってくれるだろう」
「…そうだな」
ジェイミーは店内で散々悩んだ後、ダイヤのイヤリングとダイヤのネックレスを買っていた。
愛は永遠と伝えたいらしい。
なんでも、ダイヤにはそんな意味があるとか。
無口なジェイミーに惚気られるとは思わなかった…。。
「同じ味…?」
何と同じ味なのか、フレッドの言葉が気になってクッキーに思いを巡らす。
あ…!
そういえば、以前フレッドが誰かにもらったと言っていたクッキーがこれと似たような味がした。気がする。
フレッドはあれを誰かにもらったと言っていた。
買ったものを作ったと、偽られたと思っているのだろうか…。
「フレッド、この店はつい最近オープンしたばかりの店で買ったものだぞ。だから、それより前にもらったクッキーは買ったものじゃないと思う」
「え…ほんとに?」
不安そうに揺れる瞳に、オレは確信を得る。
「ああ。だから、きっとフレッドがもらったクッキーは、ちゃんとその令嬢の手作りだったんじゃないかな」
「…そっか」
フレッドは笑みをこぼした。
「王子、ボナールについてからなんだけど、王子は一緒に国王と謁見する?」
「うーん。そうだな。今回はオレも行こう。この状況に、王が何を考えているのか気になる」
馬車を走らせて、何日もかけてボナール城へと向かう。
オレが遭難した森も、馬車を使えば1日で通り抜けることができる。
馬車が通る国道は、盗賊が巣食う森の中には見えないように整備されている。
この森に滞在しているのが、盗賊だけなのか、難民も含まられるのか。
帰国後にディリオンの報告を待とう。
ボナールの国は敗戦直後ということもあってか、町に活気はあまりない。
城下町まで来たオレとフレッド、ジェイミーの3人は、今度はランバラルドの使者として、きちんと貴族専用のホテルを取った。
ボナールへの使者を出した時に、城への滞在を勧められたが、何を企んでいるのかわからない敵国の城で寝泊りする気はない。
ボナール城付近に到着したその日は、ホテルでゆっくり疲れを取ってから次の日にボナール城へ訪問の予定だ。
「フレッド、オレは少し城下町を歩いて来るが、フレッドはどうする?」
フレッドはベッドに寝転がり、ディリオンから渡された書類に目を通していた。
「ん~、オレはいいや。ここで明日に備えてゆっくりしてるよ」
「じゃ、ジェイミー、悪いけど一緒にきてくれ」
ジェイミーは「わかった」とだけ言って、腰に短剣をつけて外出の準備をした。
店が立ち並ぶ商店街は、扉を閉ざしたままの店が数軒あった。
道行く人に聞くと、小さなところは店をたたんで、他国にある親戚を頼って引っ越したりしているらしい。
ボナールは豊かな土壌に作物が豊かに育つため、麦や果物などを輸出したり、豊富な作物を使って、ソースやワインのような食料品を輸出している。
作物が豊かに実るということは、それを食べる家畜も豊富にいる。
特産物は食べ物全般だ。
だが、農家以外の商店は、流通がなくなれば潰れるしかない。
商店街を歩くと、ついついロッテにおみやげを考えて歩くが、食料品を女性に買って喜ばれるのだろうか…?
ロッテなら、何を買って行っても喜びそうだけど…。
ジェイミーと歩いていると、王家御用達の看板を掲げた宝石店が見えた。
ちょうどロッテのことを考えていたので、迷わずそこに入った。
ちょうど、ジェイミーも婚約者にみやげを買うと言っているのでちょうど良い。
ふたりで店内を見回し、ショーケースに陳列されているアクセサリーを見る。
細工も凝っているし、使われている石も上等なものだ。
ショーケースの中に、青い石を使ったブレスレットを見つけた。
店員を呼び、ケースから出して手に取らせてもらう。
「石の透明度もいい。これはいくらだ?」
カチッとしたスーツの店員がもみ手で答える。
「お客様、他国の方ですね。共通通過でしたら銀貨一枚と銅貨二枚になりますね」
「銀貨一枚と銅貨二枚…。安いな」
「ええ。閉店セール中ですので。お客様運がいいです」
「店を閉めるのか?」
「はい。長い間ボナールで稼がせていただきましたが、もう市民はほとんどの者がアクセサリーを買う余裕がありません。一握りの貴族と王家はご購入くださいますが、王家も前ほどは御入用では無いご様子ですので、閉店し、ザーランドの本店に帰るつもりです。高価な宝石を多数持っての移動は困難なため、セールでできるだけ売ってから店を閉めようと思いまして。なので、余裕があればもう一つお買いになりませんか?」
それならと思って店内を見るが、みやげと言うには高価過ぎる。
このブレスレットだって受け取ってもらえるか…。
「ジェイミー、お前はここで買ったらどうだ。婚約者なら、喜んで受け取ってくれるだろう」
「…そうだな」
ジェイミーは店内で散々悩んだ後、ダイヤのイヤリングとダイヤのネックレスを買っていた。
愛は永遠と伝えたいらしい。
なんでも、ダイヤにはそんな意味があるとか。
無口なジェイミーに惚気られるとは思わなかった…。。
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