悪役令嬢の居場所。

葉叶

文字の大きさ
上 下
62 / 73
番外編

私はずっと見てた。

しおりを挟む
私には自慢のお姉ちゃんがいた
面倒くさがりやだけど、優しくて頭が良くて美人なお姉ちゃん。
今まで男に言い寄られて来なかったからか自分は平凡とだと思ってるけど、お姉ちゃんはとても可愛い

「友梨?どこ見てるの?ねぇ、何で僕以外を見てるの…?」

ツンツンほっぺたをつつかれ振り向くと少し拗ねた顔をした可愛い彼氏の迅がじーっと私を見てた

「ん?お姉ちゃんの事考えてたの
お姉ちゃんが死んじゃって直ぐ真斗君も居なくなっちゃったでしょ?
お姉ちゃん心配してるんじゃないかなぁ?って。
真斗君…お姉ちゃんが居ない世界で生きられないだろうから」

真斗君は、私が物心ついた時には既にお姉ちゃんの隣にいた。
最初はいつもお姉ちゃんを取り合って喧嘩した。
私のお姉ちゃんなのに真斗君はいつもお姉ちゃんを何処かに連れて行ってしまうから嫌いだった。
でも、お姉ちゃんが誰よりも真斗君に心を開いてたの…知ってたからお姉ちゃんの為に仲良くしようって真斗君と約束した。
私達が喧嘩する度にお姉ちゃんが悲しい顔…してたから。

「そういえば、遺体安置所からお姉さんの死体無くなったんだっけ?」

真斗君と一緒にお姉ちゃんの死体も無くなった
きっと、真斗君が連れて行ってしまったんだと思う。

あの日、私がちゃんと周りを見てたら
あの日、あの運転手が居眠り運転をしてなかったら
あの日、あの車がトラックじゃなければ

何度も、もしもの話を考えた。
戻れない事なんてわかってるのにそれでも考えてしまう。
考えずにはいられない。
私を庇ってお姉ちゃんが死んだあの日を私は鮮明に覚えてる。
曲がってはいけない方向に曲がるお姉ちゃんの手足や
広がる血だまり。
そして、真斗君のお姉ちゃんを呼ぶ叫び声。

私は動けなかった。
信じたくなくて、現実逃避をしてた。

お姉ちゃんがいない。私のせいでお姉ちゃんが死んだ。

その事実をすぐ受け止められるほど私は出来た人間じゃない
周りはいつまでも悩んでたらいけないと言うけど
こればっかりはどうしようもなかった。
だって、大好きだった。両親よりも恋人よりも世界で一番大好きだった。
代わりなんていない。
誰にもお姉ちゃんの代わりなんてできないんだ。

「あのね、私昨日夢を見たの」

「夢?」

コテンと首を傾げた。

「お姉ちゃんがね、夢に出てきたの。
私が見せた願望だったのかもしれないけどね
お姉ちゃんにっ…逢えたのっ…
3年経って……やっと…やっとっ…出てきてくれたの……っ」

この3年間私は廃人のように生きてきた。
そんな私を献身的に迅が世話をしてくれたから今もまだ歩ける体を持っている。
それでも安眠する事もできなくて昔とはだいぶ変わってしまった。

もう一度会いたいと何度も願った。
それでも一度も夢に出てくることなんてなかった。

「お姉さんはなんて言ってたの?」

泣く私を落ち着かせるように背中を擦りながら優しく抱き寄せる

「私のせいじゃないって…っ
私に幸せになってほしいって…
こんな姿を見たくて私を助けたわけじゃないんだって…っ
それにね、今は生まれ変わってそれなりにやってるからもう心配するなって
彼氏と仲良くやりなって
……私の事大好きだ…って……っ」

照れくさいって言って大人になってから言ってくれなくなった言葉。
夢の中で泣く私を困った顔をして頭を撫でてくれたお姉ちゃん。
最後に大好きだって照れくさいのかあっかんべーをしながら言うのがお姉ちゃんらしいなって笑ってしまった。

「そっか。」

私を優しく包み込みながら優しく呟いた

「だからっ、私もう大丈夫だよ
お姉ちゃんが自慢できる妹になりたいからっ
もう布団の中で泣くのはやめるっ
迅と色んなところに行きたいし、お姉ちゃんのお墓参りだって行きたい。」

「友梨がそうしたいなら僕は応援するよ。
まずは体を戻してからだね。」

「うんっ!」

お姉ちゃん、私はきっとお姉ちゃんにとって自慢の妹とは言い難い妹だったと思う。
我儘だって沢山言ったし、沢山お姉ちゃんを困らせた。
死んだ後も心配を沢山かけさせた。
だけどね、これからいつか死んでお姉ちゃんに会った時胸張って会いたいから
自慢の妹だよって言って欲しいから
もう泣くのはやめる。

これから、お姉ちゃんがびっくりするくらい幸せになってみせるから
絶対にまた…逢おうね。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

婚約破棄をいたしましょう。

見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。 しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
【本編完結・番外編不定期更新】 エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...