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異変は突然に
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この国の成り立ちは、こっちに馴染み始めてから興味本位で調べて知った。まぁ、感想的には…異世界やなぁ……って感じだった。
「知ってる。あれだろ?女神シャンバラと邪神ガイアの話。」
「そうです。シン様さえ良ければ、ユーリン様にお話してあげてくれませんか?」
チラリとユーリンを見れば、凄い高速で頷いていて、軽く引いたのは言うまでもない。
「…長くなりそうだから、取り敢えずこれでも飲みながら聞いてな」
俺は地べたでも良いけど、良い所のお嬢様は無理かなと思い、レジャーシートを敷いてピクニックセットを置き、俺は話を再開した。
「むかしむかしある所に、心の優しい女神様が居ました。
女神様は、優しく民を見守って過ごしていましたが.平和はある日突然崩れてしまいました。
平和が崩れた原因は、ガイアという邪神が人々に悪しき加護を与え、人々を邪の道に引きずり込んでいた事でした。
それを見た女神シャンバラは、人々を守る為、一部の人間に祝福を与えましたが、女神様は彼等に力の殆どを渡した為、長い眠りについてしまいました。女神様に恩を返す為、そして世界を守る為に祝福を受けた人間は剣を取り、邪神ガイアを倒しに向かいました。
ですが、邪神ガイアを倒した頃には人間は半分以上減っていました。
疲弊した人間達を祝福を受けた人間達は集め、国を作りました。
まぁ、簡単に纏めるとこれがこの国の成り立ちだ。」
此方に馴染んできて、少し暇だったからこの国の成り立ちを調べた俺は、調べれば調べる程首を傾げる事になった。
何故なら、事実と言い伝えられている物が全く違うからだ。
昔、爺ちゃんが歴史は年月と共に都合良く書き換えられていくものだと言っていたけど、本当にそうなんだと納得してしまった。
「だが、事実は違う。」
俺の言葉に驚いているのは、ユーリンだけだった。
「ソフィアさんは、知ってるんだ」
「えぇ、一部ですが。代々口伝で当主に語り継げられた物で、祝福を受けた家系にのみ受け継がれる話だと聞いていますわ。
ですが、全部知ってらっしゃるなら、聞かせてもらえませんか?」
その言葉に俺は頷き、口を開いた。
「邪神ガイアと呼ばれていた者は元は全知全能の神で、そして女神シャンバラは普通の下位の精霊だった。
事の始まりはガイアとシャンバラが出会った所から始まる。
運命のイタズラか、出会う筈のなかった彼らは出会った。
彼らはゆっくりと思いを育み、そして結ばれた。
だがガイアはシャンバラと離れる日が来るのを恐れた。
全知全能の神であるガイアは永遠の時を凄く宿命を背負っていたからだ。
この世界の下位の精霊であるシャンバラとはいつか必ず別れなきゃいけない日が来る。
シャンバラと離れたくなかったガイアはシャンバラに自分の力の半分を渡した。故に、ガイアは全知全能の神ではなくなった………そして二人は、二人で1つの神となった。」
ガイアは元から邪神な訳ではなかった。
元は平和を愛し、世界のバランスを保たせる、普通の神だった。
「神に休息は必要なかったが、力を分け与えたガイアは体を作り直さなければいけなくなり少しの間眠りについた。
少しの間だが、離れる事を不安がるガイアに、シャンバラは約束した。
ガイアが目を覚ます時は必ず側にいて一番におはようと貴方に伝えるからと」
そうして、ガイアは眠りについた。
神からしたら少しの時間、けれど人間達からしたら途方もない時間だった。
「だがガイアが眠りについた事で、全知全能の神が居なくなった。」
「でも、シャンバラ様がいるんじゃ」
「ユーリン、彼らは二人で1つの神なんだ。片方が消えれば、それは全知全能の神ではなく半端な神でしかない。」
普通の神より力は強いが、幾つもの世界を治める神としては力が足りない。
「シャンバラもガイアもそうなる事は理解していたんだと思う。
だからシャンバラは地上に降りた。元々精霊だったシャンバラは、地上で精霊の力を借りる事によって世界をギリギリ回していたんだ。」
精霊の特性を引き継ぐシャンバラだからこそ出来た事。
地上に溢れた力を取り込み世界に循環させる。そうして、ガイアが起きる迄過ごそうとしていた。
「そして月日は経ち、その時代は魔法の全盛期だった。
そんなある時、ある人間がシャンバラの存在に気づいた。
そしてシャンバラの存在はある一部の人間達に知らされた。」
歴史を見た俺だから思うのかもしれないが、きっとそこが運命の別れ道だったのだろうと俺は思った。
「………それで、どうなったんですか…っ」
「人間達はシャンバラを捕らえた。普通の時ならば捕らえることなど出来なかったが、その時世界を回す事に力を注いでいたシャンバラは普通の人間と変わらぬ抵抗しか出来なかった。美しく、そして力がある存在。人間は欲に目が眩んだ。」
「…っ」
「身も心も穢され、力を奪われても尚、シャンバラは世界に力を注ぐのをやめなかった。」
なんで、と言いたげにユーリンがこちらを見た
「多分だけど【ガイアが眠っている間はシャンバラが頑張る】そんな思いがシャンバラを突き動かしてたんじゃねぇかな。
いつかガイアは目を覚ます。ガイアが目を覚ましたらこの地獄も終わる。
きっとそんな思いでいたんだろうけど、ガイアが助けに来た頃にはもう遅かった。
シャンバラの精神は既に闇に堕ちた後で、残ったのは抜け殻の彼女だけだった。
ガイアは怒り狂った。人に、世界に、そしてシャンバラを救えなかった自分に。
怒りに身を任せたガイアは邪神となり、他の世界から召喚された勇者が封印するまで世界を壊し続けた。
だが勇者に封印されても尚、ガイアの憎しみは外に漏れ出していた。」
「……っ、じゃあ、も、しかして」
「力を奪った人間を祖先に持つこの国の王族も公爵も侯爵もガイアによって呪われた。だが、その身にはシャンバラの力も宿っている。
故に力を奪った人間は普通よりも強く産まれ、その特性を引き継ぐ。
それを人は祝福と呼び、本当の話を隠す事にした。……その方が色々と都合がいいからな。」
ガイアは今もシャンバラと共に眠っている、王城の地下深くで。
きっと今は王様と王弟であるジンぐらいしかこの事は知らないだろう。
元々、この国の場所自体が邪神時代にガイアが築いた城を拠点にしていた。
だからガイアは勇者に封印された時のまま、地下でシャンバラと手を繋いで眠っているのだ。
「各家が、何を引き継いだか…シン様はお知りに?」
「あぁ。」
「やはり、ですか。そこまで知っているなら…そうですわよね。」
「シンさん、教えて下さい。特性ってなんなんですか?」
一口お茶を飲んで、俺はまた口を開いた。
「特性とはいうが、簡単に言えば罪であり呪だ。」
「呪……ですか?」
「ガイアが眠りについても尚、世界にはガイアの怨念が残っている。
理不尽な世界の理を憎み、シャンバラを穢した者を呪い、救えなかった自分を恨んだ。そして、その思いは呪としてこの世界に絡みついた。
本来ならガイアのそんな呪で絶えていた血が今も尚残っている理由は、シャンバラの力だ。」
皮肉にも、彼らはシャンバラのおかげで生き長らえた。
シャンバラの力が彼らをガイアの呪から守ったのだ。
それはシャンバラが彼らを助けたいからではなく、ガイアが守り慈しんできた世界を守りたいシャンバラの想いに力が応えた結果だった。
「ユーリンはおかしいとは思わなかったか?この国は精霊に愛された国といわれているのに、平均的な魔法を使えない者も多く、作物も豊かに実る事はない。真に精霊に愛された国ならば、この国は大国に引けをとらない国になっていたはずだ。」
精霊は人の理から外れた存在であり、人の理の外にいる。
故に、彼らにお願いがある場合はそれ相応の対価が必要であり、その対価を払ったとしても精霊の気分で断られる可能性もある。
だが、精霊に愛された者は例外だ。
精霊に愛された者の周りに居るだけで、精霊は強くなり、そして幸福になる。簡単に言えば、猫にまたたびのような感じだ。
だからユーリン達には見えてないが、俺の周りにも精霊は結構いる。たまに枕元にクッキーを置くと狂喜乱舞して食べている。
まぁ、俺はいろんな愛し子だから、色々重複し過ぎて凄い事になってんだけど……まぁ、それは置いといてだ。
「この国は確かに精霊の数は多い。それはシャンバラが元精霊だからだ。
精霊は個体毎ではなく意識が自動的に共有されているんだが、神になってもシャンバラは精霊のその能力を残していたんだ。
堕ちても尚、ガイアが作り上げた世界を守ろうというシャンバラの心が反映され、この国には精霊が沢山存在しているんだよ。」
「じゃあ、どうして…?」
「精霊は確かに働いている。種を撒き、植物を育て、力を循環させている。だが、それを狂わせてるのがガイアの呪だ。
どうにか今は拮抗している力も、その内崩れるだろう。最近色々ときな臭いからなぁ」
隣国との不穏な雰囲気といい、年々増えていく魔物。
年月と共に、ガイアの力が強まり、シャンバラの力が弱まってるとみて間違いはないだろう。
元は一つの力だ、本体が弱まれば引き寄せられるのも納得が出来る。
「まぁ、それでだ。王家や現存する家は罪と呪を代々引き継ぐ。そして、引き継がれた者以外は当主にはなれない。だからもしもその男が長男でなくとも関係ないし、男じゃなくても関係がない。例え妾の子だろうと、引き継がれているのならそいつが当主にならなきゃいけない。」
「何故、引き継がれた者しかなれないのですか?」
「それが罰であり、業だからだ。彼らはシャンバラの力で生き延びる事ができたが、その事に気付かなかった彼らは自分がした事を忘れ、幸せに暮らした。
だがある日突然、自分達の息子の体に変な痣が出来た。
病気ではない、だが日に日に濃くなる痣を見て外聞が悪いと、ある父親は息子を領地に閉じ込め、次男を跡取りにすえる事に決めた。
それを聞いた長男はそれでは駄目だと、僕じゃなきゃいけないんだと父親に必死に追い縋った。だが、父親は長男の言葉に目もくれず、領地へ閉じ込めた」
これはどこにでもある話だ。昔なら尚更だ。
貴族は何より世間体というものを気にする、いや気にしなくてはいけない。何故なら虎視眈々と自分の地位を狙う者が必ず居るからだ。
少しの失敗が、少しの事が、後々大きな爆弾になる事もある。
そうなる前に摘み取らなければ、自分の足を掬われてしまうのだから、父親としては英断だったのかもしれない。
「そんなある日父親が家に帰ると、次男が首を吊って死んでいた。
父親は嘆き、悲しんだが、次の跡取りを決めなければいけない。
幸いその父親には息子が4人いた。
次男に比べたら知能は足りないが、背に腹は替えられないと、次は三男を跡取りに据えた。
だが、数週間後に三男は自分で自分に火をつけ、笑いながら死んだ。
憔悴した父親は四男を跡取りに据えた。その後どうなったか、もう言わなくてもわかるだろ?」
「し、んだ?」
「あぁ。そして、父親は残った長男に会いに行った。
最初は他愛ない話をしていたが、兄弟の死を告げなくてはならなかった父親は意を決して兄弟が亡くなったと告げた。
死因は流石に言う事ができなかった父親は事故で亡くなったとだけ告げた。
そしたら長男が父親に言うんだ。【だから僕は言ったじゃないですか、僕以外が跡を継ぐ事はできないと】ってな。」
俺の言葉に、ユーリンは目を見開き、ソフィアさんは少し悲しげに目を伏せた。
「そして長男は父親に告げた。【僕は貴方が何をしたか全て知っている。貴方のせいで僕は貴方の罪を罰を受け継がなくてはいけなくなった。きっと貴方の友達の息子達もだ。受け継がない者が当主になる事をあの方は許さない。何人据えても無駄だ。皆耐えられずに死んでしまう。貴方が僕の言葉を聞いてくれてたら、信じていてくれてたら弟達が狂って無駄死にする事もなかったのに】ってな。
そう言った長男の言葉を信じたくなかった父親は、他の家と連絡をとり、自分と同じ状況になってる事を知った。
その間にも跡取りに据えた者は変死し、父親は長男を跡取りにした。
その瞬間ピタリと不審死が止んだ。他の家も痣が出た者を当主に据え、どうにか乗り切った。」
よくホラー映画であった、末代まで祟るって奴のいい例がこれである。
「ソフィアさんは口伝と言ったが、そうじゃない。………もう知っているのでしょう?」
「………えぇ。」
「やっぱりですか」
知らないと言っていた割には対して驚かないから、何となくそうかなぁとは思ってたけど
「何がトリガーになるのかはわかりませんが、ある日力は覚醒するのです。
力が覚醒すると同時に、引き継いだ者は過去犯された罪を実体験の様に見せられます。そして言われるのです。まだ罪は消えていないと。」
「ユーリンは、多分まだ覚醒してないんだな。」
ユーリンの体に痣があるのは確認済みだ。
あの痣はマーキングのような物で、いわばコイツだという目印だ。
「ミスティラク公爵家の罪は、簡単に言えば強欲ですわね。欲に目が眩み、更なる力を求めた最初の人間。それが…私の祖先なんですの。
他人を思い通りにしたい、そんな感情からきたミスティラク家の特性は、人の感情を操る事が出来ますわ。特定の相手を嫌わす事も、思うがままに操って物にすることも…出来ます。」
「……僕にも、何かあるってことですか…?」
「あぁ。だがそれは覚醒した時に見るといい。
覚醒するまでは、使いモンにはならねぇ筈だからな。」
俺も調べて知ってるだけで、本当にユーリンにソレが出るのかはわからないのだ。まぁ、不審死してないから後継者なのは間違いないんだがな。
「そして、彼の特性は人の心を見る事ができるという物でした。
私の様にオンオフが出来ず、彼は常時周りの声に晒されていました。
そして、私はそんな事も知らずに彼に恋をして、彼を無理矢理手に入れました。
言い訳になるかもしれませんが覚醒するまで、私知らなかったんですの。特性を自分が使っていただなんて。…自分が、罪を引き継いでいただなんて」
俯いていた彼女の顔には笑みが浮かんでいたが、その笑みは何処か寂しげで、哀しい笑みだった。
「知ってる。あれだろ?女神シャンバラと邪神ガイアの話。」
「そうです。シン様さえ良ければ、ユーリン様にお話してあげてくれませんか?」
チラリとユーリンを見れば、凄い高速で頷いていて、軽く引いたのは言うまでもない。
「…長くなりそうだから、取り敢えずこれでも飲みながら聞いてな」
俺は地べたでも良いけど、良い所のお嬢様は無理かなと思い、レジャーシートを敷いてピクニックセットを置き、俺は話を再開した。
「むかしむかしある所に、心の優しい女神様が居ました。
女神様は、優しく民を見守って過ごしていましたが.平和はある日突然崩れてしまいました。
平和が崩れた原因は、ガイアという邪神が人々に悪しき加護を与え、人々を邪の道に引きずり込んでいた事でした。
それを見た女神シャンバラは、人々を守る為、一部の人間に祝福を与えましたが、女神様は彼等に力の殆どを渡した為、長い眠りについてしまいました。女神様に恩を返す為、そして世界を守る為に祝福を受けた人間は剣を取り、邪神ガイアを倒しに向かいました。
ですが、邪神ガイアを倒した頃には人間は半分以上減っていました。
疲弊した人間達を祝福を受けた人間達は集め、国を作りました。
まぁ、簡単に纏めるとこれがこの国の成り立ちだ。」
此方に馴染んできて、少し暇だったからこの国の成り立ちを調べた俺は、調べれば調べる程首を傾げる事になった。
何故なら、事実と言い伝えられている物が全く違うからだ。
昔、爺ちゃんが歴史は年月と共に都合良く書き換えられていくものだと言っていたけど、本当にそうなんだと納得してしまった。
「だが、事実は違う。」
俺の言葉に驚いているのは、ユーリンだけだった。
「ソフィアさんは、知ってるんだ」
「えぇ、一部ですが。代々口伝で当主に語り継げられた物で、祝福を受けた家系にのみ受け継がれる話だと聞いていますわ。
ですが、全部知ってらっしゃるなら、聞かせてもらえませんか?」
その言葉に俺は頷き、口を開いた。
「邪神ガイアと呼ばれていた者は元は全知全能の神で、そして女神シャンバラは普通の下位の精霊だった。
事の始まりはガイアとシャンバラが出会った所から始まる。
運命のイタズラか、出会う筈のなかった彼らは出会った。
彼らはゆっくりと思いを育み、そして結ばれた。
だがガイアはシャンバラと離れる日が来るのを恐れた。
全知全能の神であるガイアは永遠の時を凄く宿命を背負っていたからだ。
この世界の下位の精霊であるシャンバラとはいつか必ず別れなきゃいけない日が来る。
シャンバラと離れたくなかったガイアはシャンバラに自分の力の半分を渡した。故に、ガイアは全知全能の神ではなくなった………そして二人は、二人で1つの神となった。」
ガイアは元から邪神な訳ではなかった。
元は平和を愛し、世界のバランスを保たせる、普通の神だった。
「神に休息は必要なかったが、力を分け与えたガイアは体を作り直さなければいけなくなり少しの間眠りについた。
少しの間だが、離れる事を不安がるガイアに、シャンバラは約束した。
ガイアが目を覚ます時は必ず側にいて一番におはようと貴方に伝えるからと」
そうして、ガイアは眠りについた。
神からしたら少しの時間、けれど人間達からしたら途方もない時間だった。
「だがガイアが眠りについた事で、全知全能の神が居なくなった。」
「でも、シャンバラ様がいるんじゃ」
「ユーリン、彼らは二人で1つの神なんだ。片方が消えれば、それは全知全能の神ではなく半端な神でしかない。」
普通の神より力は強いが、幾つもの世界を治める神としては力が足りない。
「シャンバラもガイアもそうなる事は理解していたんだと思う。
だからシャンバラは地上に降りた。元々精霊だったシャンバラは、地上で精霊の力を借りる事によって世界をギリギリ回していたんだ。」
精霊の特性を引き継ぐシャンバラだからこそ出来た事。
地上に溢れた力を取り込み世界に循環させる。そうして、ガイアが起きる迄過ごそうとしていた。
「そして月日は経ち、その時代は魔法の全盛期だった。
そんなある時、ある人間がシャンバラの存在に気づいた。
そしてシャンバラの存在はある一部の人間達に知らされた。」
歴史を見た俺だから思うのかもしれないが、きっとそこが運命の別れ道だったのだろうと俺は思った。
「………それで、どうなったんですか…っ」
「人間達はシャンバラを捕らえた。普通の時ならば捕らえることなど出来なかったが、その時世界を回す事に力を注いでいたシャンバラは普通の人間と変わらぬ抵抗しか出来なかった。美しく、そして力がある存在。人間は欲に目が眩んだ。」
「…っ」
「身も心も穢され、力を奪われても尚、シャンバラは世界に力を注ぐのをやめなかった。」
なんで、と言いたげにユーリンがこちらを見た
「多分だけど【ガイアが眠っている間はシャンバラが頑張る】そんな思いがシャンバラを突き動かしてたんじゃねぇかな。
いつかガイアは目を覚ます。ガイアが目を覚ましたらこの地獄も終わる。
きっとそんな思いでいたんだろうけど、ガイアが助けに来た頃にはもう遅かった。
シャンバラの精神は既に闇に堕ちた後で、残ったのは抜け殻の彼女だけだった。
ガイアは怒り狂った。人に、世界に、そしてシャンバラを救えなかった自分に。
怒りに身を任せたガイアは邪神となり、他の世界から召喚された勇者が封印するまで世界を壊し続けた。
だが勇者に封印されても尚、ガイアの憎しみは外に漏れ出していた。」
「……っ、じゃあ、も、しかして」
「力を奪った人間を祖先に持つこの国の王族も公爵も侯爵もガイアによって呪われた。だが、その身にはシャンバラの力も宿っている。
故に力を奪った人間は普通よりも強く産まれ、その特性を引き継ぐ。
それを人は祝福と呼び、本当の話を隠す事にした。……その方が色々と都合がいいからな。」
ガイアは今もシャンバラと共に眠っている、王城の地下深くで。
きっと今は王様と王弟であるジンぐらいしかこの事は知らないだろう。
元々、この国の場所自体が邪神時代にガイアが築いた城を拠点にしていた。
だからガイアは勇者に封印された時のまま、地下でシャンバラと手を繋いで眠っているのだ。
「各家が、何を引き継いだか…シン様はお知りに?」
「あぁ。」
「やはり、ですか。そこまで知っているなら…そうですわよね。」
「シンさん、教えて下さい。特性ってなんなんですか?」
一口お茶を飲んで、俺はまた口を開いた。
「特性とはいうが、簡単に言えば罪であり呪だ。」
「呪……ですか?」
「ガイアが眠りについても尚、世界にはガイアの怨念が残っている。
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それはシャンバラが彼らを助けたいからではなく、ガイアが守り慈しんできた世界を守りたいシャンバラの想いに力が応えた結果だった。
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精霊は人の理から外れた存在であり、人の理の外にいる。
故に、彼らにお願いがある場合はそれ相応の対価が必要であり、その対価を払ったとしても精霊の気分で断られる可能性もある。
だが、精霊に愛された者は例外だ。
精霊に愛された者の周りに居るだけで、精霊は強くなり、そして幸福になる。簡単に言えば、猫にまたたびのような感じだ。
だからユーリン達には見えてないが、俺の周りにも精霊は結構いる。たまに枕元にクッキーを置くと狂喜乱舞して食べている。
まぁ、俺はいろんな愛し子だから、色々重複し過ぎて凄い事になってんだけど……まぁ、それは置いといてだ。
「この国は確かに精霊の数は多い。それはシャンバラが元精霊だからだ。
精霊は個体毎ではなく意識が自動的に共有されているんだが、神になってもシャンバラは精霊のその能力を残していたんだ。
堕ちても尚、ガイアが作り上げた世界を守ろうというシャンバラの心が反映され、この国には精霊が沢山存在しているんだよ。」
「じゃあ、どうして…?」
「精霊は確かに働いている。種を撒き、植物を育て、力を循環させている。だが、それを狂わせてるのがガイアの呪だ。
どうにか今は拮抗している力も、その内崩れるだろう。最近色々ときな臭いからなぁ」
隣国との不穏な雰囲気といい、年々増えていく魔物。
年月と共に、ガイアの力が強まり、シャンバラの力が弱まってるとみて間違いはないだろう。
元は一つの力だ、本体が弱まれば引き寄せられるのも納得が出来る。
「まぁ、それでだ。王家や現存する家は罪と呪を代々引き継ぐ。そして、引き継がれた者以外は当主にはなれない。だからもしもその男が長男でなくとも関係ないし、男じゃなくても関係がない。例え妾の子だろうと、引き継がれているのならそいつが当主にならなきゃいけない。」
「何故、引き継がれた者しかなれないのですか?」
「それが罰であり、業だからだ。彼らはシャンバラの力で生き延びる事ができたが、その事に気付かなかった彼らは自分がした事を忘れ、幸せに暮らした。
だがある日突然、自分達の息子の体に変な痣が出来た。
病気ではない、だが日に日に濃くなる痣を見て外聞が悪いと、ある父親は息子を領地に閉じ込め、次男を跡取りにすえる事に決めた。
それを聞いた長男はそれでは駄目だと、僕じゃなきゃいけないんだと父親に必死に追い縋った。だが、父親は長男の言葉に目もくれず、領地へ閉じ込めた」
これはどこにでもある話だ。昔なら尚更だ。
貴族は何より世間体というものを気にする、いや気にしなくてはいけない。何故なら虎視眈々と自分の地位を狙う者が必ず居るからだ。
少しの失敗が、少しの事が、後々大きな爆弾になる事もある。
そうなる前に摘み取らなければ、自分の足を掬われてしまうのだから、父親としては英断だったのかもしれない。
「そんなある日父親が家に帰ると、次男が首を吊って死んでいた。
父親は嘆き、悲しんだが、次の跡取りを決めなければいけない。
幸いその父親には息子が4人いた。
次男に比べたら知能は足りないが、背に腹は替えられないと、次は三男を跡取りに据えた。
だが、数週間後に三男は自分で自分に火をつけ、笑いながら死んだ。
憔悴した父親は四男を跡取りに据えた。その後どうなったか、もう言わなくてもわかるだろ?」
「し、んだ?」
「あぁ。そして、父親は残った長男に会いに行った。
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その間にも跡取りに据えた者は変死し、父親は長男を跡取りにした。
その瞬間ピタリと不審死が止んだ。他の家も痣が出た者を当主に据え、どうにか乗り切った。」
よくホラー映画であった、末代まで祟るって奴のいい例がこれである。
「ソフィアさんは口伝と言ったが、そうじゃない。………もう知っているのでしょう?」
「………えぇ。」
「やっぱりですか」
知らないと言っていた割には対して驚かないから、何となくそうかなぁとは思ってたけど
「何がトリガーになるのかはわかりませんが、ある日力は覚醒するのです。
力が覚醒すると同時に、引き継いだ者は過去犯された罪を実体験の様に見せられます。そして言われるのです。まだ罪は消えていないと。」
「ユーリンは、多分まだ覚醒してないんだな。」
ユーリンの体に痣があるのは確認済みだ。
あの痣はマーキングのような物で、いわばコイツだという目印だ。
「ミスティラク公爵家の罪は、簡単に言えば強欲ですわね。欲に目が眩み、更なる力を求めた最初の人間。それが…私の祖先なんですの。
他人を思い通りにしたい、そんな感情からきたミスティラク家の特性は、人の感情を操る事が出来ますわ。特定の相手を嫌わす事も、思うがままに操って物にすることも…出来ます。」
「……僕にも、何かあるってことですか…?」
「あぁ。だがそれは覚醒した時に見るといい。
覚醒するまでは、使いモンにはならねぇ筈だからな。」
俺も調べて知ってるだけで、本当にユーリンにソレが出るのかはわからないのだ。まぁ、不審死してないから後継者なのは間違いないんだがな。
「そして、彼の特性は人の心を見る事ができるという物でした。
私の様にオンオフが出来ず、彼は常時周りの声に晒されていました。
そして、私はそんな事も知らずに彼に恋をして、彼を無理矢理手に入れました。
言い訳になるかもしれませんが覚醒するまで、私知らなかったんですの。特性を自分が使っていただなんて。…自分が、罪を引き継いでいただなんて」
俯いていた彼女の顔には笑みが浮かんでいたが、その笑みは何処か寂しげで、哀しい笑みだった。
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とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
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婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
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『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
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クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
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