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ある日森の中で

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 よし、ドラゴン探しの旅に出ようと思いたち、俺は荷物を纏めてテクテクと歩いていた。
目的地付近に人が来ないのは検索済みなので、スー君達を隠さずに普通に歩いていた。
そのまま現地へ飛んでも良かったけど、それでは楽しくない。
 トロコンする過程の苦労があるから達成感があるのであって、楽し過ぎるとこんなもんかと少しがっかりするのだ。
だから俺は歩いて向かっていたのだ…そう、目的地に向かって真っ直ぐと…向かっていた。

「…………ここ何処よ」

 その筈が、俺が辿り着いたのは何故か禍々しいオーラを放つ、ヘドロの様な池だった。プシュプシュと、何かやばいガスが出てるのが見える。

「スー君達は大丈夫?」
「ここ……美味しくない…」
「うぇえ」
「大丈夫じゃなさそうだな。ちょっとの間空間行ってな?」

 空間を開けば、スー君以外の皆が空間へと入っていく。

「スー君は平気?」
「スーは平気!」

 そういえば、スー君に入れたのはドクドク草だったか、と思いながら目の前の池のような物を見た。

「あ、そうだ。ずっと倉庫に眠らせてたアレ使ってみるか」

 これが穢れからくるものなら、勇者の証として押し売りされたあの剣が使えるかもしれない。そう思った俺は、倉庫に入れっぱなしにしていた剣を取り出した。

「取り敢えず、ぶっ刺してみるか」

 なくなったらなくなったで、別に困らないし。
そう思い、池に剣を突き刺すと、目を開けていられない程の光が辺りを包む。


 光が消え、目を開き俺は思わず2度見…いや5度見くらいした。

「………は???」

 俺の目の前に広がっていたのは、先程までの毒々しさの面影もなくなった風景だった。
 透き通る湖の水に、生い茂る草木。気の所為か、鳥の鳴き声まで聞こえる気がする。

「……やっぱり渡す人間間違ってるって」

 今まで使ってこなかったから実感は無かったが今回の事で確信した、これは間違いなく勇者の剣だという事を。
ここ迄浄化できる剣は、間違いなく勇者が使うに相応しい剣だろう。
 俺としては人選ミスとしかいえなかった。
俺は世界を救う気なんて欠片もない。
自分と自分の周りに危害がないならそれで良いのだ。
知らない奴の為に命かけるなんて御免被る。

「…勇者っぽい奴にあげよっかなぁ」

 神様からの贈り物っぽくすれば、喜んで使いそうだな、なんて考えながら剣をしまって俺は辺りを探索する事にした。


 結果は、俺大満足状態だった。

「スー君、そこのフラスコ取ってー」
「どうぞなの!」

 余りにも様々な物があって、今日1日で採りきるのは難しそうだったので、今日は野宿する事にした。
 晩御飯は空間にあったあたりめを食べて、スー君達には魔力をあげた。

「イー君摩り下ろしどんな感じー?」
「ゴリっゴリ!」
「オッケー、んじゃあ摩り下ろしたのこれに入れといて」

 そして俺は今ポーションなる物を作っていた。
知識としては入っていたが、ゲームの様に完全回復出来るものではなく、ちょっと肩こりとれたかも?とか、ちょっと体が温かくなった、位の物だった。
なので、改良して傷が癒えたりする物は作れないのかと試行錯誤の最中である。
 治癒魔法を使えば簡単に治るが、それは使えることが大前提だ。
それに、魔力コントロールが上手くできていなければ、転んだ傷を一人治すだけで終わるだろう。欠損を治すなんて夢のまた夢である。

「あっ、……また失敗した。あぁー!もっかい!!」

 俺は貰ったチートがあるし、欠損も治す事が出来る……というか欠損については作り直すという方が正しいのかも知れない。
 治癒魔法は、細胞の活性化を魔力で早める。故に無から有を作り出す事は出来ない。いや、無理ではないが、治癒魔法は患者の生命力を使って行うものだから、多分患者の体が保たないだろう。

 何故突然ポーション作りを始めたかと言うと、答えは簡単だ。
おっちゃんの為である。野宿の準備がてらニュースを見る様に世界の最近の事件みたいな物を見ていて、近々おっちゃんがいる国で戦争が起きそうな気配があったのだ。
 俺自身は治癒魔法を必要としない体だし、スー君達も魔力をあげれば、千切られて減った体積も元に戻るが、おっちゃんは普通の人間である。
俺がいない時に何かあれば、簡単に死んでしまう。
 おっちゃんが死ぬのはとても悲しい、出来るならさっさと別の国へ逃げてもらいたい。だけどおっちゃんはあのギルドを離れるとは言わないと思う。
だから、俺が居ない時に怪我してもいいようにポーションを完成させたいのだ。

「ご主人、ぶくぶくー」
「んっ、あぁ、ありがとうラー君。」

 ベースは知識にあったポーションだ。
そこに回復力の底上げや生命力の増加、そして少しだけ純粋な俺の魔力を注ぎ、術式を混ぜ合わせ、聖魔法をかけながらグツグツと煮る。
 俺の理論ではこれで出来るはずなんだが、加減がとても難しかった。
どれが一つでも強くなってしまうと、途端に爆発するか固形になるか…とにかく失敗するのだ。

 やっと完成した頃には、日が昇っていた。

「……多分これでいいと思うけど………実験体が欲しいな」

 俺は傷つけても治っちゃうし、最早人類かと問われると首を傾げてしまう。
かと言って実験もせずに渡すのは俺的にナシだし、もしも成功してなかったら最悪だ。

「どっかに死にかけた奴居ないかなぁ。まぁそう簡単に見つから「主人!何かいる!」え?」

 スー君の言葉に顔を上げると、スライム達が真っ黒なローブに見を包んだ子供をえっちらほっちら運んできた。

「……わぉ、ミラクル」

 立ち上がり近づくと、黒と思っていたのはどうやら血だった様だ。
 ローブの下には傷だらけの服があり、そこにはいくつもの切り傷らしき物があった。微かに息をする子供は、通常よりも痩せ細っている気がした。

「男……?だよな?」

 汚れているし、痩せているせいでよく分からないが、随分キレイな顔を歪ませた子供を見ながら首を傾げる。
 流石にズボンを下ろして確認するわけにもいかない。

「まぁ、物は試しか」

 子供相手に実験するのは心が痛むが、何かあったら治せばいいだろうと子供の口を開けてフラスコをつっこむ。
喉が乾いていたのか、少し零しながらもゆっくりと飲み込んでいく。

 子供の体を眺めていると、ゆっくりと傷が塞がっていく。

「後は、中身か」

 子供のお腹に手を当てて目を閉じて魔力を手に集めれば、子供の体の中が見える。傷ついていた内臓が治っていくのが見えて、薬が成功していた事にホッとした。

「後は、目を覚ますかか」

 生命力も増やしたから大丈夫だとは思うが、こればっかりは子供が起きない事には分からない。

「取り敢えず''浄化''」

 子供の体を綺麗にして、スライム達に寝床に運んでもらった。


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