引きニートな俺が勇者?いや、絶対人選ミスだから!!

葉叶

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俺、遂にランク試験受けるってよ

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 多分城だっただろう瓦礫の山の前に、俺は呆然と立っていた。何で呆然としてるかって?いや、そりゃあ誰だって転移した先にとても立派な白いトラが居たら呆然とするよね!!!

『此処は我の縄張り。愛し子とてそれ以上踏み入るなら許さぬぞ』

 何か頭に直接声が聞こえる。え、凄い渋い声ですね!声優さんになれそうですね!!!思わぬ事態に軽く現実逃避してみたけど、目の前に起こる現実は変わってくれないようだった。

「知らずに入ってごめんなさい。えーと、鶴舞華ってここら辺にありま……はーい、何でもないでーすお邪魔しましたー」

 鶴舞華って言っただけなのに、今にも殺されそうな殺気が向けられたんだが?え?俺悪い事した?そんなに駄目なワードなの?鶴舞華って。地雷なの?それに俺そんなに肉ついてないから食べても美味しくないですよーー!!

『ソレを見つけて何をするつもりだ』
「え?クエストなんででギルドに渡すだけだけど?そっからは俺の管轄外なんで、なんの用途で使うかは分かりませんが。」

 鶴舞華の見た目は茄子の様な形で地中に埋まってるらしい。そこまでは調べたけど、何処にあるかまでは調べてない!何故ならわかってしまっては何も楽しくないから!!

「んー…仕方ない。地中は完全に管轄外だからな。」

 仕方ないので、地に手を付き探索魔法を発動させる。
これ余り好きじゃないんだよな。一気に沢山の情報が来るから脳が悲鳴あげて鼻血出るし、少しの間立ち眩みみたいなグワングワンした状態になるから。
 チートだって血ぐらい出すし、痛みとかあるからね。
俺不死だけど、最初死んだ時とか、自分の肉片見た時吐いたし、数日廃人になったからね。
飲まず食わずでも死なないチートの体があの時は、本当に恨めしかったよ。

「あ、あった。ラー君の足元に鶴舞華あるから採ってくれる?俺鼻血止める。」

 ティッシュを詰めながら言えば任せろと言わんばかりに触手で土を掘るラー君。ちっちゃい触手で、よいしょっよいしょって頑張ってるの可愛いよな。

「………あの何でしょうか。一歩も動いてないと思うけど」

 動くなって言われたから、その場から一歩も動いてないのに、視線だけで殺されそうな勢いで殺気が向けられてて、訳が分からない。
 俺食べても美味しくないし、なんなら体くっつくからウニョウニョ動いて気持ち悪いからオススメしないよ

『お前何者だ』
「絶賛鼻から血を垂れ流してる元引きニート?」

 前の生の時より確実に外出てるし、ギルドで働いてるしニートは卒業したはず!多分な!

『フザケるでない……もう一度聞こう。お前は何者だ…!』
「いや、だから元引きニートだってば」

 何回言わせるんだと肩をすくめると白い虎が襲い掛かってきた。あ、潰されるなぁ。なんて呑気に鼻にティッシュ詰めながら見てたら目の前に紫の壁が出来た。
 大きな白い虎は俺に食いつく寸前でスー君の体の中に取り込まれていった。

「あ、スー君ありがとう。」

 死にはしなくても痛いからね。
まぁ、何回か魔法の練習中にミスって四肢爆散したけど。
うん、泣いたし吐いたよね。痛いとか以前に精神的な問題で泣いた。

 みるみる消化されていく白い虎。
あんだけデカイってそれなりに強いやつだったんじゃ………そう思いながら鼻栓を抜くと血が止まったようだ。
良かった良かった。

「主人!プレゼント!」

 さっきの白い虎の肉や革や牙とかが転がる横でぴょんぴょん飛び跳ねるスー君。

「あ、そうだ。この牙とこの前たまたま拾った何かの鱗混ぜたらどうなんだろ」

 そんな事を考えていると次は俺!と言いたげに俺の膝の上にチョコンと乗るスライム。

「それじゃあ、いっちょやりますか!」

 鱗と牙を持ち魔力を込めながらスライムの中に手を突っ込む。すると、サァっと色が変わっていく。え、まさかのグラデーション……
 頭頂部は白なのに下にいくに連れ赤みがかっていた。

「お前はイー君ね。お前は何が出来るんだ?」
「火吹ける!雷落とせる!虎の形なれる!言ってる!」

 虎の形?と首を傾げていると色はそのままで形だけ虎になるイー君。なるほど、そういう事か。

「さて、他のモノも採ってからギルド帰ろっか。」

 混ぜると色はそのまま反映か……今回は二色だったけど、4色とかにしたらシマシマになるのか…?
んぅー、本当に中々奥が深いねスライムは。


 粗方の採取が終わりギルドへ向かった。
扉を開けかけ人影が見えた瞬間扉をしめた。
よし、今日はやっぱり帰ろうと思っていると扉が開き、おっちゃんが顔を出した。

「シン、この前の審査官だ。この前の話を報告に来たんだ。
それより帰ってくるの早かったなぁ」
「あ、この前のか。え?そう?これでも周りのモノも採ってたから2日かかったんだけど。
あ、おっちゃん見て!イー君だよー!可愛いでしょ!」

 ヨッと言いたげに触手を出すイー君。

「また増えたのか。まぁ、お前だもんな。それより話自分で聞けるか?」
「んー………多分。あ、クエストの奴渡しとくー」

 おっちゃんに渡してイケメンと向き合うと、俺の手の中に居るイー君をガン見するイケメン。え?なに?あげないよ?この子うちの子だからね?いくらお金積まれても渡す気はないでよ?

「………そんな色のスライム見たことないぞ…」
「だろうね。それで?どうなったんですか?」

 出来るだけ視線を合わせないようしながら、腕の中にいるイー君をモニュモニュ揉む。

「あ、あぁ。謁見を王と二人きりでするのは流石に無理だった。私ともう一人の審査官が同行という形があちら側の譲れる限界だ。それから、ダグさんの同行は許可された。」
「使い魔連れてっても…?」

 スー君とは使い魔契約が交わされているらしいが、スー君以外の子は良く分かってない。今度ステータス見直しておくか。何か増えてるかもしれんし

「あぁ。」
「それなら………いや、でも万が一………うぅ……おっちゃーん……!」

 おっちゃんと打ち解けるのでさえ、俺は時間がかかった。
それは前の生の時から、人という物が苦手だったからだ。
人の目が、視線が、怖くて堪らない。被害妄想なのかもしれないけど、他者からの視線の全てが俺を嘲笑ってる様に見えて、俺はいつしか外に出られなくなった。
 まぁ、トラウマが原因かもしれないけど、それでも前の生よりは格段に変われたとは思っている…………が、知らない人は怖いし、味方がいない中にのほほんといられる程俺のたまは据わってない

「要は人の視線が自分に集中するのが嫌なんだろ?それなら王以外はシンを見なきゃいいじゃねぇか
審査官なら見てなくても反応できるだろう。魔法を使ってよ」
「それは実現可能だ。」

 ってか此処まで無理する必要ある?え?何で謁見?本当に訳わからん、え?と困惑してる俺を放置して二人で話を詰めていく

「そういえばシン、お前他にも採ったって言ったが他の依頼のも採ったのか?」
「え?分かんない。取り敢えずあそこ一帯は制覇したけど?何?何かいるの?あるよ?」
「あそこら辺ってなるとここら辺だな。」

 見せられた紙に書いてあるモノはどれも俺が持っていたモノだった。

「あるあるー!イー君ちょっと退いててね。」

 イー君をカウンターに乗せてポシェットから本を取り出す
おっちゃんは俺が何しても驚かないから好き。
普通にしてくれるもんな。

「えーと……コレと、コレとコレ?あ、そういえばおっちゃんに聞きたかったんだけどさ、肉とか皮って何に使える?」
「ん?モノ次第だなぁ。何だ、何か狩ったのか?」
「んー、結構溜まってるんだよね。カンストしそうだしそろそろ消費したい。特に肉。」
「何の肉だ?」
「一番多いのはジャイアント猪シリーズかな
この前の群れが沢山くれた。あ、あと何かよくわからん虎の肉塊もあるよ」

ページを捲りながら実際に出していく。

「虎…?お前もしかしてそれ白かったか?」
「うん、白かった。なんか襲われてさー、スー君がパックンチョした。え?何?なんでそんな顔で二人とも見るの?」

 信じられないと言いたげに見られて思わずページを捲っていた手が止まる。

「お前それはアレだ……討伐依頼が出てから100年誰も倒せなかったミラン城の主だ。」
「え………アレが?」

そんなに長い間倒されない主って事は相当強いよね?え?スー君強過ぎない?え?

「牙や革を見せてもらえないか?それで真実なのかわかる」
「あー、うん。コレ」

 牙と革を出すとイケメンが眼鏡をかけて何やらジロジロと見始めた

「それで、肉はどうすればいい?俺使わないんだよね。スー君達は純粋培養で育ててるからお肉はあげたくないんだよー」

 何をどういう経緯で摂取したら変わるのかがハッキリとわかってない以上むやみにあげたくはない。

「それなら買取屋に渡しといてやるよ。村の中にあるから行くの嫌だろう?」
「あ、それは嫌です。んー、どれぐらい買い取ってくれるかなぁ?沢山あんだよね」
「取り敢えず10ブロックだな。それ以上は怪しまれる」
「分かった!はい、これ!」

 本から肉を取り出して渡していると、バンっと机を叩く音が聞こえ、思わずビクリと体が震えた。

「………まさかっ……本当にあの主か……もう一本牙がある筈だ。それはどうした?」
「牙?あぁ、イー君にあげた。」

 驚きながらイー君を見ると、イケメンが目を見開く

「あげた…………?」

 何か口をポカンと開けてパクパクと金魚の様に動かす。イケメンって何やっても様になりやがるぜ

「うん。餌?かな。何?もう一本欲しかった訳?」

 まぁ、欲しいと言われてもないんですがね!!
創造で作れない訳じゃないけど、そこまでしてやる義理はない。

「お、お前これがどういうモノかわかっているのか!?」

 何やら怒ってるイケメンから距離を取って、ポカーンと首を傾げていると、おっちゃんがイケメンの方をポンと叩く。

「シンにそういうのを求めるだけ無駄だ。」

 何かちょっぴり失礼じゃないですかねー、え?

「…………俺もそんな気がしてきましたよ。はぁ。それじゃあ王都へ共に来てくれるか?」
「え?やだ。」
「!?さっきはいいと言ったではないか!?」

 首を振る俺に近づこうとするイケメン。
やめろ、それ以上来るな、吐くぞ

「いや、要は城にいけばいいんでしょ?
俺王都なんて通ったら馬車の中ゲロ地獄になるけど?
俺は転移していくからおっちゃん達は先に行きなよ。
日付言っといててくれたら行くからさ。」

 スー君達はとても優秀で予定を言っておくと、主人!時間!って言ってくれるんだよね。
ゲームやってると時間忘れちゃうからなぁ…

「分かった。それでは6日後にラーサル城で待ち合わせよう。」

 もう驚く事を諦めたと言いたげな顔でそう言うイケメン。

「はーい、おっちゃんまたね。」

 イー君を抱いておっちゃんに手を振り家へと戻った。

「スー君、6日後の事俺が忘れてたら教えてね」
「承知!!」

 姿を元に戻して甚平へと着替える。

「さーて、こっちでも素材集めしますかー!」

 テレビをつけてゲームの再開だぜ!!




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