変な貴族様と平民

葉叶

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学校に通います

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『あの平民…どんな使い魔かしら
どうせランクも低い弱いんだろうけど』

『クスクスクス、何震えてるのかしら
今更怖じ気ついてるのかしら?』

スッと召喚陣に入った瞬間…私は生まれて初めて静寂を知った。

「…何も聞こえない」

人の声が…聞こえない。
それどころか、召喚し終わった生徒達のざわめきも聞こえない。

「…っ召喚しなきゃ。」

ナイフで軽く指先を切り
ポタり、と血を垂らす。

私の生涯の使い魔が出てきてる事を祈りながら。

召喚陣が淡く光り

ポフンッ

そんな音と同時に出てきたのは

「…なんの種族でしょうか…?」

狼…に見えるけど何かが決定的に違う
だけど、それが何なのかわからない。

「ほう、私を召喚する者がまだ居たか…」

この人が話すだけで周りの空気が震える。

「あ…のっ…契約…して…もらえますか…?」

「ふむ、お主中々面白い能力を持っておるなぁ
久しぶりにいい暇潰しになりそうだ。」

スタスタ私に近づき

「え、あ、いっ」

ガブッと私の手に噛み付いた。
痛みと共に私の手が淡く光る

「これで契約成立だ。」

「あっ!ま、待って
先生に報告…っ行かなきゃいけなくてっ」

何処かへ歩いてく狼さんを引き止める。
此方をチラッと見て戻ってきてくれたからついてきてくれるって事でいいんだよね?
着いてきてるかチラチラ見ながら先生の所へ歩を進める

「うぉ!?お前…ドラゴンなんて召喚したのか…?
ドラゴンなんて何年ぶりだぁ?」

「え…?」

ドラゴン…?狼じゃなくて?
首を傾げていると

「クックックッ」

横から笑い声が聞こえた

「お、狼さんじゃないのですか?」

「狼ではないなぁ。
それに、ドラゴンでもない。
私は何者でもないが何者でもある。
故に種族などない。
お前達が別の物に見えてるのは、お前たちの願望が私をそう見せているだけだ。」

狼さんに願望…なんてありましたでしょうか?
1回だけあのもふもふなお腹を触ってみたいとは思いましたが
野生の狼さんにそんな事しようとしたら食べられてしまいます…

「あー…また面倒な予感…。
とりあえずランク判定は無理だな。
お前も他の生徒と同じく交流深めてこい」

「は、はい」

私は狼さんを連れ人の居ない隅っこに行ってペタリと座った。
すると私の横に寝そべり頭を膝の上に置く狼さん。
中々頭重いです…

「あの、お名前は何ですか?」

「む?名前等ない。
呼ぶのに不便ならお主がつけるといい。」

クワァッとアクビをして完全にリラックスモードである…

「白い毛並みだからシロ……は安直ですね
え、えーと、ハクはどうでしょうか?」

シロといった瞬間思い切り睨まれたので慌てて他の名前を提案すると何も言われなかったのでお気に召していただけたようです!

「私は、サラディンといいます。
気軽にサラと呼んでください。」

返事はないけど耳がピクピク動いてるし聞いてはくれてるよね?

「あと、一つお聞きしたいのですが
先程面白い能力…って言ってましたけど
この力の事…知ってるんですか?」

「…あぁ。」

目を瞑ったままそう呟いた。

「あ、あの、この声…聞くのをやめることって出来るんですか…?」

今まで私が見れる範囲の魔導書を見てもこの力の事は載ってなかった。
この力の存在を知る人すら見たことがなかった。
だから、この力の事を知ってるハクさんなら…もしかしたら…

「…ない。
制御出来たとしても聞く範囲を広める事くらいしか出来ない。
まぁ、今は平静を保っておるようだがそれもいつ保てなくなるやら。
心が耐えられぬのだ。常に聞こえる周りの声に。
だから、''声聞き''は皆短命だ。」

淡々と告げられる言葉は、私をドン底に落とすのには充分だった。
声を聞かずに済む方法があるかも、と
そうすれば普通に生きられるんだ、と
それだけが私を引き止めていた一筋の光だった。

だけど…その方法が…ない。

「だが、少し減らせてやる事は出来る。」

「え…?」

「よく聞いてみろ。
今は他の声が聞こえぬだろ」

そう言われ初めて気づいた。
そういえば先程から雑音が…ない。

「私が近くに居れば減らす事はできる。
だが、想いが強いモノまでは無理だ。
まぁ、一番はお前がお前の魂の欠けた部分を補ってくれる魂の持ち主を探す事だな」
 
「魂…ですか?」

「今は私がお前の欠けた部分を補ってるから声をそこまで拾わずにすんでいるだけだ。
お前の魂は何故か欠けている。何かが足りないのだ。
それを補える魂の持ち主を見つけ
相手がお前に寄り添ってくれれば…私が補わなくても殆ど声を聞かずに済むやも知れん。
まぁ、人間は一番数が多い…そう簡単に見つかるとも思えんがな」

…そんなのどう見つければいいのか
見つけたとして寄り添って貰わなければならない…
私にそんな魅力…ない。

完全に消す事は出来なくとも…
ハクさんの側に居れば殆ど聞こえないのならそれでいいのかもしれない。
多くは望まない…望み過ぎたら罰が…下るかも知れない。

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