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第8話 キャベツとツナのレンジ蒸しとお嬢と私
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熱が出た。何年ぶりだろうか。
パッと思い出すのは、中学生の頃に部活の大きな大会当日に高熱を出し、出場が不可能になった記憶。
あの時のチーム名や大人たちの顔は忘れられない。心配三割、「あーあ、お前コレどうすんだよ」七割。とても病気をした中学生に向けていいものとは思えないが、私のために数えきれないほどの人間が動いてきたのだ。致し方ない気もする。思い出していたら頭が痛くなってきた。
約10年の時が経ち、現在は一人で布団にくるまっている。暑くて寒い不思議な感覚。たまたまアルバイトも休みだし、まい子も学校の行事で2泊3日のお泊まりだ。タイミングは良かった。
脇に挟んでいた体温計が鳴る。確認すると、検査が必要な体温であることがわかる。しかし、医者に掛かろうにもこの体力では着替えもままならず、外に出られたとしてもコンクリートジャングルで遭難するのが目に見えている。
私は自分の力で病院を予約し、身なりを整え、誰にも迷惑をかけず歩かなければいけない。
こうして独身の女は強くなっていく。
とにかく薬を飲んで熱を下げなければ。むくりと立ち上がり昨日の残りを食べようと冷蔵庫を開ける。
◯材料
・千切りキャベツ(一袋)
・ツナ缶(一つ)
・オリーブオイル(小さじ1)
・ニンニクチューブ(親指一本分)
・塩胡椒(お好み)
◯作り方
材料を全て耐熱容器に出す。ツナ缶のオイルは切ったほうがヘルシーだと思うけど、油でベタベタするのでそのまま入れてしまう。
ラップをかけて、レンジで500W3分。
よく混ぜて完成!
炊き立てご飯の上に乗せてかき込みたいところだが、いかんせん病人だ。シナッとしたキャベツをゆっくり口に運んでいく。
ニンニクの香りがジャンキーで気になるが、まあ体力とかになるんじゃないかと無理やり納得する。そういえば、味覚と嗅覚は奪われていないらしい。
体力が著しく下がったせいで食事の用意がかなり億劫だが、食欲自体は無くなっていなかったことに気づく。これは子供の頃からの才能だと思う。もう一回立ち上がってアイスクリームと飲み物を持ってきてみようか。今はご飯の用意で疲れたから無理だけど。
キャベツを食べ終わり、床にばたりと倒れ込む。ひんやりとして気持ちがいい。
ぼんやりと最近の日々を振り返る。まい子はかなりしっかりしているので何も心配することはないのだが、小学生が親元を離れ他人の家で暮らす寂しさを想像すると胸がいっぱいになってしまう。一緒に暮らす大人として彼女を幸せに暮らさせる責務がある。子供を育てたこともないのに親の真似事をしている。
一方、外の世界に出ると思い描いていた大人とは程遠い自分がいる。この前なんて眉毛すら描き忘れて電車に乗り込むと、隣にいい香りの白いブラウスのお姉さんが座ってきた。お姉さんと言っても私と同年代か下手したら年下だ。
「まあ、ちょっと立ち止まってみろ」神様がそんなつもりなら従うが、熱を出させるなんてちょっと乱暴すぎやしないか。
薬はどこだっただろうか。ゴチャつき始めた床を探す。
パッと思い出すのは、中学生の頃に部活の大きな大会当日に高熱を出し、出場が不可能になった記憶。
あの時のチーム名や大人たちの顔は忘れられない。心配三割、「あーあ、お前コレどうすんだよ」七割。とても病気をした中学生に向けていいものとは思えないが、私のために数えきれないほどの人間が動いてきたのだ。致し方ない気もする。思い出していたら頭が痛くなってきた。
約10年の時が経ち、現在は一人で布団にくるまっている。暑くて寒い不思議な感覚。たまたまアルバイトも休みだし、まい子も学校の行事で2泊3日のお泊まりだ。タイミングは良かった。
脇に挟んでいた体温計が鳴る。確認すると、検査が必要な体温であることがわかる。しかし、医者に掛かろうにもこの体力では着替えもままならず、外に出られたとしてもコンクリートジャングルで遭難するのが目に見えている。
私は自分の力で病院を予約し、身なりを整え、誰にも迷惑をかけず歩かなければいけない。
こうして独身の女は強くなっていく。
とにかく薬を飲んで熱を下げなければ。むくりと立ち上がり昨日の残りを食べようと冷蔵庫を開ける。
◯材料
・千切りキャベツ(一袋)
・ツナ缶(一つ)
・オリーブオイル(小さじ1)
・ニンニクチューブ(親指一本分)
・塩胡椒(お好み)
◯作り方
材料を全て耐熱容器に出す。ツナ缶のオイルは切ったほうがヘルシーだと思うけど、油でベタベタするのでそのまま入れてしまう。
ラップをかけて、レンジで500W3分。
よく混ぜて完成!
炊き立てご飯の上に乗せてかき込みたいところだが、いかんせん病人だ。シナッとしたキャベツをゆっくり口に運んでいく。
ニンニクの香りがジャンキーで気になるが、まあ体力とかになるんじゃないかと無理やり納得する。そういえば、味覚と嗅覚は奪われていないらしい。
体力が著しく下がったせいで食事の用意がかなり億劫だが、食欲自体は無くなっていなかったことに気づく。これは子供の頃からの才能だと思う。もう一回立ち上がってアイスクリームと飲み物を持ってきてみようか。今はご飯の用意で疲れたから無理だけど。
キャベツを食べ終わり、床にばたりと倒れ込む。ひんやりとして気持ちがいい。
ぼんやりと最近の日々を振り返る。まい子はかなりしっかりしているので何も心配することはないのだが、小学生が親元を離れ他人の家で暮らす寂しさを想像すると胸がいっぱいになってしまう。一緒に暮らす大人として彼女を幸せに暮らさせる責務がある。子供を育てたこともないのに親の真似事をしている。
一方、外の世界に出ると思い描いていた大人とは程遠い自分がいる。この前なんて眉毛すら描き忘れて電車に乗り込むと、隣にいい香りの白いブラウスのお姉さんが座ってきた。お姉さんと言っても私と同年代か下手したら年下だ。
「まあ、ちょっと立ち止まってみろ」神様がそんなつもりなら従うが、熱を出させるなんてちょっと乱暴すぎやしないか。
薬はどこだっただろうか。ゴチャつき始めた床を探す。
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