5 / 19
第5話 キャベツパスタとお嬢と私
しおりを挟む
私がまい子と暮らし始めてから変わったこと。暮らしにバイオリンの音色が加わった。
持たせてもらっているであろう、最新のスマートフォンからその音色は聞こえてくる。同じ空間にいる私に気を遣ってなのか、そもそも持っていないだけなのか、イヤホンの類はしていない。
時間や状況は弁えているし、まあ、優雅な感じもするので、ここ最近は私も一緒になって聴いてみている。
「お嬢はさ、バイオリンが好きなの?」
音楽に委ねるように、とろんと閉じていた瞳が開く。
「しおりさん、バイオリンがお分かりで?」
大人を舐めるなよとゲンコツでも食らわせてやろうかと思ったが、話を聞くとこの曲の奏者はまい子の父親の友人だそうだ。とは言ってもただの友人ではなく、世界を飛び回り演奏を続ける大物のバイオリニストで、日本にいる期間は年間を通してもかなり少ないという。名前を聞いてもピンと来なかった。
「ま、まあ名前くらいは聞いたことあるかな。私もそれなりにクラシックとか聴くし」
本当ですか?とでも言いたげにジロリと睨むまい子の視線を遮るように昼食の準備を始めた。
◯材料(2人前)
・パスタ(150~200g)
・キャベツ(拳くらいの大きさ)
・チューブニンニク(親指くらいの大きさ)
・オリーブオイル(大さじ2)
・塩胡椒(お好み)
・塩(パスタを茹でる用)
◯作り方
お湯をたっぷり沸かす。その間にキャベツを一口サイズに切る。
お湯に塩をたっぷり入れて、パスタを表示より短めの時間で茹でる。この時に茹で汁をお玉二杯くらい取っておく。
パスタが茹で上がったら、ザルに移す。
フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、弱目の中火で香りがするまで熱する。
キャベツを入れてしんなりするまで炒める。
キャベツがしんなりしたら、茹で汁を入れて手早く混ぜる。
パスタ、塩胡椒を入れてよく混ぜ合わせる。
お皿に盛って完成!
「バイオリン聴きながらパスタ食べるとさ、おしゃれな味に感じない?」
「しおりさんはいつも面白い発想をされますわよね」
馬鹿にされているのか肯定されているのか分からなかったが、味がいいことは確かだ。
まい子が画面をなぞると曲が切り替わった。それは彼女が気に入ってよく聴く曲で、自分も自然とメロディを覚えてきた。
便利な世の中になったな、と思う。生まれた頃から携帯電話はあったが、自分のものを自分で操作するなど子供の頃はあり得なかった。まい子くらいの小学生や、ベビーカーの赤ちゃんが画面をタッチしているといまだに少し驚く。
誰でも、どの世界にもアクセスできる時が来たのだ。自分で自分を年寄り扱いしたいわけではないが、時代は変わったなとこの間の友人との話を思い出しながらまた一口、パスタを口に含んだ。
弦が、ポンと弾かれる音がした。
持たせてもらっているであろう、最新のスマートフォンからその音色は聞こえてくる。同じ空間にいる私に気を遣ってなのか、そもそも持っていないだけなのか、イヤホンの類はしていない。
時間や状況は弁えているし、まあ、優雅な感じもするので、ここ最近は私も一緒になって聴いてみている。
「お嬢はさ、バイオリンが好きなの?」
音楽に委ねるように、とろんと閉じていた瞳が開く。
「しおりさん、バイオリンがお分かりで?」
大人を舐めるなよとゲンコツでも食らわせてやろうかと思ったが、話を聞くとこの曲の奏者はまい子の父親の友人だそうだ。とは言ってもただの友人ではなく、世界を飛び回り演奏を続ける大物のバイオリニストで、日本にいる期間は年間を通してもかなり少ないという。名前を聞いてもピンと来なかった。
「ま、まあ名前くらいは聞いたことあるかな。私もそれなりにクラシックとか聴くし」
本当ですか?とでも言いたげにジロリと睨むまい子の視線を遮るように昼食の準備を始めた。
◯材料(2人前)
・パスタ(150~200g)
・キャベツ(拳くらいの大きさ)
・チューブニンニク(親指くらいの大きさ)
・オリーブオイル(大さじ2)
・塩胡椒(お好み)
・塩(パスタを茹でる用)
◯作り方
お湯をたっぷり沸かす。その間にキャベツを一口サイズに切る。
お湯に塩をたっぷり入れて、パスタを表示より短めの時間で茹でる。この時に茹で汁をお玉二杯くらい取っておく。
パスタが茹で上がったら、ザルに移す。
フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、弱目の中火で香りがするまで熱する。
キャベツを入れてしんなりするまで炒める。
キャベツがしんなりしたら、茹で汁を入れて手早く混ぜる。
パスタ、塩胡椒を入れてよく混ぜ合わせる。
お皿に盛って完成!
「バイオリン聴きながらパスタ食べるとさ、おしゃれな味に感じない?」
「しおりさんはいつも面白い発想をされますわよね」
馬鹿にされているのか肯定されているのか分からなかったが、味がいいことは確かだ。
まい子が画面をなぞると曲が切り替わった。それは彼女が気に入ってよく聴く曲で、自分も自然とメロディを覚えてきた。
便利な世の中になったな、と思う。生まれた頃から携帯電話はあったが、自分のものを自分で操作するなど子供の頃はあり得なかった。まい子くらいの小学生や、ベビーカーの赤ちゃんが画面をタッチしているといまだに少し驚く。
誰でも、どの世界にもアクセスできる時が来たのだ。自分で自分を年寄り扱いしたいわけではないが、時代は変わったなとこの間の友人との話を思い出しながらまた一口、パスタを口に含んだ。
弦が、ポンと弾かれる音がした。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説


ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました
今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

異世界でも水分補給は大事です! ~液体生成スキルでのんびりサバイバル~
楠富 つかさ
ファンタジー
脱水症状で死んでしまった主人公、水瀬雫は異世界に転生するにあたって女神から液体を生成できるスキルをもらった。異世界で成長するにつれて真水だけでなくアルコールや化粧水に、ガラスまで!?
転生JKの異世界ライフ! 水分補給と適度な休息をお忘れなく!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる