辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第3章 帝都へ

魔物がやってきました

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「何だ!?」
「村の方からです!」

 けたたましい鐘の音により、村の周囲にいた鳥たちは一斉に飛び上がり、騒々しい声を上げて散らばっていく。
私たちも村に走り、鐘の音の正体を掴むために、村人に声をかけようと試みる。
その中に走っているアンナさんを見つけ、ロランと私は彼女の元へ向かう。

「ロラン、セリーちゃん!見つかってよかった‥‥」
「この鐘の音はどうした?」
「分からない。いきなり鳴り始めたの‥‥」

 戸惑っていると村の奥から声が響き渡った。

「ワイバーンが、村に向かってきていると報告があった!!逃げろ!!」
「‥‥ワイバーンですって?」

 急いで私は探索魔法を発動する。すると、確かに村の5時の方向から20体ほどの群でワイバーンがこちらに向かっているようだ。
その事をロランに伝えると、

「おかしい、この村の近くにワイバーンはいないはずだが、今はそんな事を考えている暇はないな」
「ええ、迎え撃ちましょう」

 アンナさんにはロランから、私たちが広場で戦う旨を伝えるようにお願いする。
最初は戸惑っていた彼女だが、頷いてその場を離れ始める。
村人たちは村の入り口にある1階建ての大きな平屋に全員集まっているようだ。
 確かに、もうワイバーンはすぐそこにいる。
今街道に出られたら、狙われる可能性もあるので賢明な判断をしてくれた、と思う。

「GUAAAAAAA!!!」

 と騒がしい声を上げ、私たちの前に数体のワイバーンが攻撃を仕掛ける。
急降下の勢いを利用し、鋭い嘴を私たちの身体に突き刺そうとしているようだ。
バックステップからのサイドステップを利用し、私とロランは炎の剣と剣で攻撃を仕掛けたワイバーンの首を切り落とした。

 私たちの実力を測っているのか、最初の2体以外はなかなか攻撃に出てこない。

「あいつら、俺らが空に攻撃できない事に気づいてやがる」

 ロランの言う通りだ。私の追尾攻撃なら難なく届くのだが、それでも追尾は5本までしかできない。
ワイバーンはロランが言っていたが、危険魔物生物と呼ばれているらしく、出会ったらすぐに討伐しなければならない種らしい。
逃げられてしまうと、殲滅ができない。

 睨み合っていると、動き出したのは向こうからだ。
半分以上のワイバーンが攻撃動作に入り始める。先程のように突進するパターンと翼から風を起こそうと構えているワイバーンもいる。
風を起こそうとしているワンバーンの数が多いのが辛いところだ。追尾魔法がもっと使えればいいのだけれど‥‥

 そこで賭けに出る。

「ロラン!」
「何だ!セリー!」
「今から私が追尾魔法を使います!そのイメージで貴方も追尾魔法を使ってみてください!」
「はぁ!?」

 無茶を言っていることは分かっている。
魔法の講義をしてまだ2週間も経っていない。難しいことだと分かっている。

「道中も欠かさず訓練をしていたロランならできると思います!」

 休憩中も私とアンナさんが話している時には、魔法陣を確認していた事を知っているし、毎日欠かさず訓練をしていたことは知っている。
だからロランならできる気がした。

水切断ウォーターカッター

 追尾型は動いてもワイバーンの首を切るイメージが出来ていれば、追尾型にはなる。
だが、イメージが甘ければ威力は弱く使い物にならない。
そしてそれに加えて、ある程度の魔力と魔力操作が必要になる。上級向けだ。

 目の前にいた1体は思い通りに首を落とすことができた。
それを見届けたあとは、突進してきたワイバーンの首を落とす。
ロランも突進してきた1体の首を落とすところだった。

「くっそ、セリーにできるって言われたら成功させるしかねぇな!」

 ロランは詠唱をしていない。していないが、目の前に魔法陣が出現している。

切断の風ウィンドカッター!!追尾しろよっ」

 成功したかどうかは見ることができなかったけれど、ドスドスドスっとワイバーンが落ちる音がした。
残るはロランと私の方に敵は半々。私も負けてられない。

氷の槍アイスランス

 私は目の前にいる敵の頭を狙うイメージをつける。
そしてその数秒後には、私の前にワイバーンはいなかった。


「最後はあいつらだな」

 襲ってきたワイバーンを全て片付けたが、まだ3体だけ残っていた。
真ん中にいるワイバーンは、他の2体よりも大きくて黒い。

「真ん中のは‥‥魔種の可能性があります」
「‥‥何で魔種がこんな所にいるんだよ」

 それは私が聞きたい。
だが、それは後で考えればいい。

「早々に決着をつけます」

 私は身体強化の魔法を足にかけ、軽く飛び上がる。そして追尾型の氷の槍を放った。
横の2体は倒すことができた‥‥が、真ん中のワイバーンは風を起こし氷を破壊させてしまう。

「やはり追尾型は耐久が弱いですか‥‥」

 普通の氷の槍に比べて、追尾のイメージの分精密さがなくなるのは仕方がないことだ。
ワイバーンは私の魔法を相殺したことに満足したのか、少しづつ高度を落としている。

 何度追尾しようとしても、相殺される。
当たれば勝つはず、と悩んでいると

「セリー、追尾型はすぐ詠唱できるよな?あいつが風を起こしたら俺の魔法で相殺する」
「‥‥任せました」
「おう、任せろ!」

 力強く答えるロランは何と頼もしいことか。

 私は氷の槍をワイバーンに向けて打つ。ワイバーンはそれを相殺する。

「いっけぇ!切断の風!」
「氷の槍!」

 ロランの放った魔法は、ワイバーンの風を相殺し、私の氷の槍は相殺されることなく、ワイバーンの頭を貫通した。
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