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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~
扇の異変は‥
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「嬢ちゃん、どうしてこんなになった?」
「それが分からないから、おっさんの所へ来たんだ」
おじ様も頭をひねって考えてくれている。
そしてロランはロランで今までにあったことを、おじ様に簡単に話してくれた。
「うーむ、ただの扇だと思っていたんだが‥‥これはもしかして」
「何か心当たりがあるのか?!」
流石、おじ様ですね!心当たりがあるなんて。
二人で喜んだからか、おじ様は焦って手を顔の前に出している。
「昔聞いた事がある位だ。参考程度にしてくれ」
「分かったよ」
ロランが返事をすると、おじ様は一息ついて話し始めた。
「大魔導師が作った武器がある事を知っているか?」
大魔導師でなくても、大魔導と呼ばれる人々は、杖のような武器やロランの持っている鞄のような日常品まで作っていると聞いたことがある。
「普通は大魔導の人も武器を作るんじゃ無いのか?」
ロランもそう思ったらしい。
「いや、その通りなんだが。基本、大魔導と呼ばれる人たちは、一から作るのは杖だけだ。武器は職人に作らせて完成させた後に、魔法を埋め込む。今出回っている属性が付いている剣はそう作る」
つまり、魔法属性のない完成した剣に魔法を埋め込むと言うことだろう。
「だが、一人だけ。一から作り上げる大魔導師がいたらしい。‥‥名前は覚えていないが」
一から、と言うのは剣から作ると言うことなのだろう。
「その大魔導師は様々な武器を作ったらしい。その中に扇があったかは知らないが、もしかしたらその扇がそうなのかもしれない」
どうしてそう思うのか、私には分からない。
ロランの顔を見るが、彼も頭にはてなを浮かべている。
「今出回っている属性の剣は、消耗品だ。ある程度使えば、効果は切れる」
元の剣にコーティングしていると考えれば理解できる。使ったら段々削れていくのだろう。
「その大魔導師が作った武器は、材料、作る過程、仕上げ全てに彼の魔力が組み込まれている。そして使用者が見つかれば、彼の魔力はその者の魔力に合った形に変わる‥‥と聞いている」
それがこの扇なのだろうか?
「すまない、大魔導師の武器については儂にはそれ位しか分からん。もし知りたければ、帝都にでも行くと良い」
「参考になりました。ありがとうございます」
その話を聞けただけでも、ありがたい。
もしおじ様が言う大魔導師の武器であれば、持っていても問題なさそうだ。
ただの鉄の武器かと思ったのでオーラを見ていなかった。
後でオーラを確認しておくのも良いかもしれない。
「いや、すまないな。訳の分からない物を渡してしまって」
「そんなことありません。私にとっては使いやすい武器です」
そう答えると、おじ様は肩の力が一気に抜けたらしい。ホッと胸をなで下ろしている。
「そう言って貰えて、助かった。また何か入り用の時は来てくれ」
「おっさん、ありがとな」
「おお、ロランも刃こぼれした時には必ず来いよ?」
「分かってるって」
そして私たちはおじ様のお店を後にした。
街をぶらぶらし終えると、辺りは暗くなっていた。
ロランと私は三日月亭に戻り、夕食を取ることにする。
一旦各自部屋に別れた後、私は扇のオーラを確認してから食堂へ向かった。
「あら、セリーちゃん。ロランは奥だよ!」
階段を降りると、両手に料理を持った女将さんが、教えてくれる。
ありがとうございます、とお礼を伝えて私は彼の元へ向かう。
彼の目の前のテーブルは、既に料理で一杯だった。
「遅くなりましたか?」
「ん、いや。早く来たから料理を頼んでおいただけだ。料理も今来た物ばかりだから、食べながら話そう」
よく見ると私の前にはお茶もある。そして回復草の芽のサラダもある。
二人で食べると言ったら、女将さんが持ってきてくれたそうだ。
そこから食事を取りながら話す。ある程度話したところで、扇のことを切り出した。
「扇についてですが」
「もしかして確認したのか?」
ロランは魔力が見えることを知っているから、そう言う聞き方にしたのだろう。
「はい。この扇には赤と紫色のオーラが混在しています。つまり火魔法とあの魔法の影響を受けています」
「なんだって?持ってて危なくないのか?」
「それは問題ないと思います。別の魔力によって抑えられているようです」
扇面に触れると、薄い魔力の膜が張られている。これが大魔導師の作った扇だとしたら、大魔導師の魔力なのかもしれない。
「そうか、なら問題なさそうだな。だが、何かあった時は扇を手放すことにするぞ」
「そうですね、そうしましょう」
それは私も考えていたことだ。だから別に異論はない。
しかしロランは驚いたようで、エールのジョッキを持ちながら動きが止まっている。
「ロラン?」
「ああ、いや。あっさり手放す事に同意したから驚いてな」
「危険物を自ら所持するような、変人ではありませんから」
そう、私は非常識な人(らしい)であって、変人ではない。
今はロランもいるし、危険なことはなるべく避けたいと思っている。
「まあ、同意してくれて良かったよ。何かあったら言ってくれ」
そう話して一気にエールを煽るロランを、私はサラダを食べながら観察する。
目があったロランは、ふと何かを思い出したのか私にこう質問してくる。
「セリー。ちなみに今テーブルの上にある料理と飲み物。全部でいくらすると思うか当ててみてくれ」
以前金貨一枚渡そうとした時よりも料理の数は多そうだ。
前の状態で金貨一枚は多いのだろう。
「やっぱり金貨一枚くらいですか?」
どうしても私はそれ位しか思えなかったので、そう聞いてみるが‥‥
「全部で銀貨3枚ほどになる」
と呆れた顔をしているロランから、私は料理の値段が幾らなのかを教わったのだった。
「それが分からないから、おっさんの所へ来たんだ」
おじ様も頭をひねって考えてくれている。
そしてロランはロランで今までにあったことを、おじ様に簡単に話してくれた。
「うーむ、ただの扇だと思っていたんだが‥‥これはもしかして」
「何か心当たりがあるのか?!」
流石、おじ様ですね!心当たりがあるなんて。
二人で喜んだからか、おじ様は焦って手を顔の前に出している。
「昔聞いた事がある位だ。参考程度にしてくれ」
「分かったよ」
ロランが返事をすると、おじ様は一息ついて話し始めた。
「大魔導師が作った武器がある事を知っているか?」
大魔導師でなくても、大魔導と呼ばれる人々は、杖のような武器やロランの持っている鞄のような日常品まで作っていると聞いたことがある。
「普通は大魔導の人も武器を作るんじゃ無いのか?」
ロランもそう思ったらしい。
「いや、その通りなんだが。基本、大魔導と呼ばれる人たちは、一から作るのは杖だけだ。武器は職人に作らせて完成させた後に、魔法を埋め込む。今出回っている属性が付いている剣はそう作る」
つまり、魔法属性のない完成した剣に魔法を埋め込むと言うことだろう。
「だが、一人だけ。一から作り上げる大魔導師がいたらしい。‥‥名前は覚えていないが」
一から、と言うのは剣から作ると言うことなのだろう。
「その大魔導師は様々な武器を作ったらしい。その中に扇があったかは知らないが、もしかしたらその扇がそうなのかもしれない」
どうしてそう思うのか、私には分からない。
ロランの顔を見るが、彼も頭にはてなを浮かべている。
「今出回っている属性の剣は、消耗品だ。ある程度使えば、効果は切れる」
元の剣にコーティングしていると考えれば理解できる。使ったら段々削れていくのだろう。
「その大魔導師が作った武器は、材料、作る過程、仕上げ全てに彼の魔力が組み込まれている。そして使用者が見つかれば、彼の魔力はその者の魔力に合った形に変わる‥‥と聞いている」
それがこの扇なのだろうか?
「すまない、大魔導師の武器については儂にはそれ位しか分からん。もし知りたければ、帝都にでも行くと良い」
「参考になりました。ありがとうございます」
その話を聞けただけでも、ありがたい。
もしおじ様が言う大魔導師の武器であれば、持っていても問題なさそうだ。
ただの鉄の武器かと思ったのでオーラを見ていなかった。
後でオーラを確認しておくのも良いかもしれない。
「いや、すまないな。訳の分からない物を渡してしまって」
「そんなことありません。私にとっては使いやすい武器です」
そう答えると、おじ様は肩の力が一気に抜けたらしい。ホッと胸をなで下ろしている。
「そう言って貰えて、助かった。また何か入り用の時は来てくれ」
「おっさん、ありがとな」
「おお、ロランも刃こぼれした時には必ず来いよ?」
「分かってるって」
そして私たちはおじ様のお店を後にした。
街をぶらぶらし終えると、辺りは暗くなっていた。
ロランと私は三日月亭に戻り、夕食を取ることにする。
一旦各自部屋に別れた後、私は扇のオーラを確認してから食堂へ向かった。
「あら、セリーちゃん。ロランは奥だよ!」
階段を降りると、両手に料理を持った女将さんが、教えてくれる。
ありがとうございます、とお礼を伝えて私は彼の元へ向かう。
彼の目の前のテーブルは、既に料理で一杯だった。
「遅くなりましたか?」
「ん、いや。早く来たから料理を頼んでおいただけだ。料理も今来た物ばかりだから、食べながら話そう」
よく見ると私の前にはお茶もある。そして回復草の芽のサラダもある。
二人で食べると言ったら、女将さんが持ってきてくれたそうだ。
そこから食事を取りながら話す。ある程度話したところで、扇のことを切り出した。
「扇についてですが」
「もしかして確認したのか?」
ロランは魔力が見えることを知っているから、そう言う聞き方にしたのだろう。
「はい。この扇には赤と紫色のオーラが混在しています。つまり火魔法とあの魔法の影響を受けています」
「なんだって?持ってて危なくないのか?」
「それは問題ないと思います。別の魔力によって抑えられているようです」
扇面に触れると、薄い魔力の膜が張られている。これが大魔導師の作った扇だとしたら、大魔導師の魔力なのかもしれない。
「そうか、なら問題なさそうだな。だが、何かあった時は扇を手放すことにするぞ」
「そうですね、そうしましょう」
それは私も考えていたことだ。だから別に異論はない。
しかしロランは驚いたようで、エールのジョッキを持ちながら動きが止まっている。
「ロラン?」
「ああ、いや。あっさり手放す事に同意したから驚いてな」
「危険物を自ら所持するような、変人ではありませんから」
そう、私は非常識な人(らしい)であって、変人ではない。
今はロランもいるし、危険なことはなるべく避けたいと思っている。
「まあ、同意してくれて良かったよ。何かあったら言ってくれ」
そう話して一気にエールを煽るロランを、私はサラダを食べながら観察する。
目があったロランは、ふと何かを思い出したのか私にこう質問してくる。
「セリー。ちなみに今テーブルの上にある料理と飲み物。全部でいくらすると思うか当ててみてくれ」
以前金貨一枚渡そうとした時よりも料理の数は多そうだ。
前の状態で金貨一枚は多いのだろう。
「やっぱり金貨一枚くらいですか?」
どうしても私はそれ位しか思えなかったので、そう聞いてみるが‥‥
「全部で銀貨3枚ほどになる」
と呆れた顔をしているロランから、私は料理の値段が幾らなのかを教わったのだった。
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