辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~

情報収集をしましょう

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 一旦村長に用事があるとのことで、私たちは解散した。 
お昼は村の食堂で食事をし、今後の討伐計画をロランと立てる。
と言っても、ロランが率先して立てるのではないようだ。私に話を振ってきた。

「こう言う場合、まずセリーならどうする?」

 んー、と悩むポーズをロランに見せる。
すると、ロランも私が考えている事に気づき、待つ姿勢を取ってくれた。
と言っても大体はもう考えているのだけれど。

「まずは、現状を知ることが大事かと」
「情報収集か?」
「その通りです。村長さんの話では〝そろそろワイルドボアが現れる〟との事でしたので、夜に村で偵察をして状況の把握をするのはいかがでしょう」
「まぁ、それが一番だろうな」

 ロランも同じ意見だったらしい。
私はお兄様から〝まずは情報収集が大事だよ!〟と聞いていたので、受け売りだが。
それに魔の森の討伐の時も、まずは偵察部隊に調査させていたので情報は大事なはずだ。

「後は、過去の状況を確認しておく必要もあるだろうな。代理の息子さんに聞いてみるか」
「そう致しましょう」

 返事を返し、食後のお茶を飲んでいた私だが、ふとロランがバツの悪い顔をしているので、どうしたのだろうと気になった。

「何か顔についていますか?」
「‥‥いや、セリーの話し方が畏まりすぎてて‥‥どうしても違和感がぬぐいきれなくてな。もう少し砕けた喋り方はできないか?」
「‥‥‥善処します」
「いや、それ絶対善処しないやつだろ。まあ、いいか。頑張って慣れるよ」
「お願いします」

 「やっぱり直す気はないのか‥‥」とため息をついているロランを見ながら、カップの中身を空にしたのだった。


 食事が終わった後は、再度村長さんの家を訪問した。
出てきたのは、村長さんによく似た若い男性だ。

「もしかして、紅玉のロランさんとセリーさんでしょうか?父から聞いております。どうぞ、お上りください!」

 扉を開けてくれたのは、やはり村長さんの息子さんだった。
息子さんの奥さんがお菓子とお茶を出してくれた後、早速私たちはワイルドボアの過去の状況について確認をする。
息子さんは話を聴き終えた後、すぐ手元にあった紙を引っ張り出す。

「念の為に過去3年間分の被害状況をこちらに纏めてあります。その状況を見た者がいる時には、その情報も書かれております」

 と紙を手渡してくれた。
拝見します、と言ってロランが紙を持ち私も覗き込む。
私が紙に集中する横で、ロランが丁寧な言葉で息子さんに話しかけた。

「やはり被害は冬が多いようですね」
「ええ、気温が下がりますからね‥‥この村の大麦以外、あまり食料がないためかと思われます」

 確かこの地域の大麦は寒さに強いモノだったはずだ。
冬に被害が多いのは納得だ。

「だが‥‥最近は荒らす感覚が短くなっていますね。冬でもない時期なのに‥‥」
「そうなのです。父も40年程生きていて、初めての事のようです。一番長生きしている長老も同じようにおっしゃってました」
「あと頭数も心なしか増えているような気がしますが‥‥?」
「3年ほど監視を勤めている者の証言によると、仰る通り少しづつ群が増えているのではないか、と話しておりました」

 どこまで正確か分かりませんが‥‥と目を伏せる息子さん。
夜荒らす上、西側はあまり火を焚いていないらしく、正確な数字が出せないらしい。

「最近の様子であれば、この2~3日のうちに西側に来る可能性があると思われます。以前荒らされた東側は、すぐに柵を立てて対策しておりますので‥‥」
「分かりました。教えて頂き助かりました。ちなみに、偵察ができそうな建物をお借りすることはできますか?」
「ええ、ありますよ。畑の近くに小屋がありますので、そちらをお使い下さい。窓もありますので、見やすいと思いますよ」

 という事で息子さんとロランは色々と決めていく。
こういう事はロランに任せれば問題ないだろうし、D級の私がしゃしゃり出てもよく無いだろうと出してもらったお茶をすすっていた。

 紙も見終わり、息子さんの後ろの景色を見る。
息子さんが庭を背にして座ったため、ロランを横目で見ながら目の前の庭を眺めていた。

 すると偶然かもしれないが、茂みの奥の男性‥‥いや、私と同じくらい、もしくは年下の男の子と目が合った上、ギロッと睨まれたように見える。
彼はすぐさま背を向け、走り去っていく。

 だからだろうか、私は「あっ」と声を上げてしまった。

 全く喋らなかった私が声を上げたことに驚いた息子さんは、私の見ている方向を同じように見る。
そして走り去っていた男の子を見て、こう私に話しかけた。

「セリーさん驚かせて済みません。あいつはケヴィンと言ってこの村の者です。ケヴィンとセリーさんは年が近そうですし、興味本位で見に来たのかもしれませんね」
「ははは、年頃の男の子らしいですね」
「そろそろ落ち着きなさいと言っているんですけどね‥‥なかなか難しいものです」

 ロランと息子さんが笑いあっている中、私はケヴィンが去っていた方向をじーっと見つめていた。
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