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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~
実はお兄様の知り合いでした
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焚き火を作った私たちは、料理に取り掛かることにした。
大抵、旅は携帯食品とパンで済ませる冒険者が多い。
理由は携帯食品とパンはかさ張らず荷物にならないからだそうだ。
今回は1日の野宿であること、ロランが収納魔法道具ーーリュックのことだが、を持っているのでできるとのこと。
温かい食事は体も心も癒される。ロランはなるべく料理するようにしているらしい。
「と言っても、俺も他の冒険者からみたら非常識な部類かもしれないけどな」
と言っているので、今度冒険者とすれ違った時はどんな様子か見てみようと思う。
そして料理は散々だった。
ロランは手際よく、人参を同じ厚さに切っていく。
切り方は半月切りというらしいが、すごく簡単そうに見える。
けれども実際やってみると、うまく包丁が使いこなせない。
ロランは、サクっサクっと切れているが、私はガンっガンっ、という効果音が似合うぐらい。
頭を抱えたロランが、「危なっかしくて見てられない‥‥」と呟いたので、包丁はやめた。
そこで閃いたのは、「包丁が使えなければ、魔法を使えばいいじゃない」である。
「セリー、何して‥‥る‥‥?」
包丁を別の場所に置き、まな板の上に人参を置いた私を不審に思ったロランが声をかけるが、気づかず私は詠唱を唱える。勿論、省略形だが。
「水切断」
するとあら不思議。
先程ロランが包丁で切っていたような、均等な厚さに切られた人参の出来上がりだ。
「‥‥待て。セリーは何を……?いや、後で聞く」
少し私を睨むような顔でロランが見てくるが、なんとなく怒っているのではなく驚いたのだろうと予想がつく。
顔色を変えない私を見て、ため息をついた彼は他に切っていた野菜を鍋に入れて、スープを作りはじめたのだった。
「防音魔法も張っているからこれで大丈夫だろう」
最初は自分のステータスについて聞いてくるのかと思ったが、模擬戦の時に開示しているので、何を聞かれるのかが分からなかった。
それより、どうしても防音魔法に目が行ってしまう。前見た時と同じように綺麗である。
「料理に魔法を使った理由は?」
「うまく切れないからです」
そっちか、と思った。正直に言う。
ちらっと横を見ると、まな板の近くにある私が最初に切った人参が可哀そうなことになっていた。
それを見たロランが納得する。
「だが、人がいるときは駄目だ。その時は俺がやるからな」
「……はい」
どうやら料理は私には向いてないらしい。
話は終わったようなので、此方から聞いてみる。
「ロラン、私から一つお聞きしてもいいですか?」
ロランは首を捻りながら了承してくれた。
「この防音魔法が綺麗に張れているのですが、何か訓練していますか?」
「防音魔法が‥‥?」
「はい、魔法操作が上手くなると、無属性魔法にも良い影響が出やすくなります。ロランは非常に綺麗で壊れにくい防音魔法を張っているので、何か訓練しているのかと思いまして」
初めてロランの前で長文を話したからだろう、口を開けて固まっている。
魔法のことに関して、饒舌になるのは昔から。
「こんなに喋れたのか‥‥」ってロラン、心の声が聞こえてるのだけれど‥‥まあ、仕方ない。
「以前も言ったが、毎日魔法の訓練をしている」
そう教えてもらった。前言わなかったか?と聞かれたが、言われた気がしなくもない。
以前仲間でリーダーだった人に教わった訓練方法らしい。やり方までは教えてもらえなかった。
その後はなぜか私の話になった。
ステータスの高い理由を尋ねられ、少しまごついていたが、幼い頃から魔物討伐をしていることを伝えた。
「家の周囲で討伐していたのなら、非常識なのも頷ける。野宿の経験は……」
「泊まりはお父様に禁止されていました」
確かに戦闘の知識はあっても、それ以外の世間の常識とは全く関わってこなかったのだから。
そうか、とロランは呟いている。
「私は話すのが苦手で‥‥話すのはお兄様とばかりでした」
「最初はセリーもこんなに話さなかったもんな。少しは慣れてくれたってことでいいのか?」
その通りなので首を縦に振った。
「それは良かった。で、ちなみにそのお兄様には‥‥お兄様?」
ーーそこでロランがふと思い出す。
僕の妹はね、銀色の髪でロランと同じ綺麗な紅の色をしていて、話すのが苦手でーー
「まさか‥‥」
「どうしました?ロラン」
彼は頭にいきなり衝撃を受けたような、そんな顔をしている。
そして私の方に顔を向けるが、その動きもどこかぎこちない。
「もしかしてだけど‥‥もしかしてだけど‥‥セリー‥‥お前は、アド‥‥アドリアンの妹か?」
懐かしい、お兄様の名前を聞いた。
お兄様が学園に帰られてから、一年以上は経っているはず。
お兄様の知り合い、と聞いて私は少しだけ残っていた彼に対しての警戒が無くなるのを感じる。
「あら?お兄様の名前をご存知なの?」
「やっぱり、あいつの妹かよ!なら非常識なはずだっっっ」
ーーここでロランが、モンテーニュ兄妹に振り回される未来が確定したのだった。
大抵、旅は携帯食品とパンで済ませる冒険者が多い。
理由は携帯食品とパンはかさ張らず荷物にならないからだそうだ。
今回は1日の野宿であること、ロランが収納魔法道具ーーリュックのことだが、を持っているのでできるとのこと。
温かい食事は体も心も癒される。ロランはなるべく料理するようにしているらしい。
「と言っても、俺も他の冒険者からみたら非常識な部類かもしれないけどな」
と言っているので、今度冒険者とすれ違った時はどんな様子か見てみようと思う。
そして料理は散々だった。
ロランは手際よく、人参を同じ厚さに切っていく。
切り方は半月切りというらしいが、すごく簡単そうに見える。
けれども実際やってみると、うまく包丁が使いこなせない。
ロランは、サクっサクっと切れているが、私はガンっガンっ、という効果音が似合うぐらい。
頭を抱えたロランが、「危なっかしくて見てられない‥‥」と呟いたので、包丁はやめた。
そこで閃いたのは、「包丁が使えなければ、魔法を使えばいいじゃない」である。
「セリー、何して‥‥る‥‥?」
包丁を別の場所に置き、まな板の上に人参を置いた私を不審に思ったロランが声をかけるが、気づかず私は詠唱を唱える。勿論、省略形だが。
「水切断」
するとあら不思議。
先程ロランが包丁で切っていたような、均等な厚さに切られた人参の出来上がりだ。
「‥‥待て。セリーは何を……?いや、後で聞く」
少し私を睨むような顔でロランが見てくるが、なんとなく怒っているのではなく驚いたのだろうと予想がつく。
顔色を変えない私を見て、ため息をついた彼は他に切っていた野菜を鍋に入れて、スープを作りはじめたのだった。
「防音魔法も張っているからこれで大丈夫だろう」
最初は自分のステータスについて聞いてくるのかと思ったが、模擬戦の時に開示しているので、何を聞かれるのかが分からなかった。
それより、どうしても防音魔法に目が行ってしまう。前見た時と同じように綺麗である。
「料理に魔法を使った理由は?」
「うまく切れないからです」
そっちか、と思った。正直に言う。
ちらっと横を見ると、まな板の近くにある私が最初に切った人参が可哀そうなことになっていた。
それを見たロランが納得する。
「だが、人がいるときは駄目だ。その時は俺がやるからな」
「……はい」
どうやら料理は私には向いてないらしい。
話は終わったようなので、此方から聞いてみる。
「ロラン、私から一つお聞きしてもいいですか?」
ロランは首を捻りながら了承してくれた。
「この防音魔法が綺麗に張れているのですが、何か訓練していますか?」
「防音魔法が‥‥?」
「はい、魔法操作が上手くなると、無属性魔法にも良い影響が出やすくなります。ロランは非常に綺麗で壊れにくい防音魔法を張っているので、何か訓練しているのかと思いまして」
初めてロランの前で長文を話したからだろう、口を開けて固まっている。
魔法のことに関して、饒舌になるのは昔から。
「こんなに喋れたのか‥‥」ってロラン、心の声が聞こえてるのだけれど‥‥まあ、仕方ない。
「以前も言ったが、毎日魔法の訓練をしている」
そう教えてもらった。前言わなかったか?と聞かれたが、言われた気がしなくもない。
以前仲間でリーダーだった人に教わった訓練方法らしい。やり方までは教えてもらえなかった。
その後はなぜか私の話になった。
ステータスの高い理由を尋ねられ、少しまごついていたが、幼い頃から魔物討伐をしていることを伝えた。
「家の周囲で討伐していたのなら、非常識なのも頷ける。野宿の経験は……」
「泊まりはお父様に禁止されていました」
確かに戦闘の知識はあっても、それ以外の世間の常識とは全く関わってこなかったのだから。
そうか、とロランは呟いている。
「私は話すのが苦手で‥‥話すのはお兄様とばかりでした」
「最初はセリーもこんなに話さなかったもんな。少しは慣れてくれたってことでいいのか?」
その通りなので首を縦に振った。
「それは良かった。で、ちなみにそのお兄様には‥‥お兄様?」
ーーそこでロランがふと思い出す。
僕の妹はね、銀色の髪でロランと同じ綺麗な紅の色をしていて、話すのが苦手でーー
「まさか‥‥」
「どうしました?ロラン」
彼は頭にいきなり衝撃を受けたような、そんな顔をしている。
そして私の方に顔を向けるが、その動きもどこかぎこちない。
「もしかしてだけど‥‥もしかしてだけど‥‥セリー‥‥お前は、アド‥‥アドリアンの妹か?」
懐かしい、お兄様の名前を聞いた。
お兄様が学園に帰られてから、一年以上は経っているはず。
お兄様の知り合い、と聞いて私は少しだけ残っていた彼に対しての警戒が無くなるのを感じる。
「あら?お兄様の名前をご存知なの?」
「やっぱり、あいつの妹かよ!なら非常識なはずだっっっ」
ーーここでロランが、モンテーニュ兄妹に振り回される未来が確定したのだった。
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