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第1章 旅立ち編 〜冒険者になろう〜
偽装のための武器を選びました
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気まずくなった二人は解散する前に、明日は朝食の時間に食堂に待ち合わせることを決めて部屋に帰った。
解散する前に食事のお礼として自分の貯蓄から持ってきていた金貨を一枚渡そうとしたが、「要らない」と言われてしまった。
金の勘定も怪しいのか‥‥?とボソボソと頭を抱えながら小言を言っていたが、詳しくは聞き取れなかった。
翌日。
昨日より少し早く食堂に向かい、食事を取る。
すると女将さんに声をかけられた。
「お嬢ちゃん、昨日ロランと一緒にいなかったかい?」
「は、はい‥‥」
「はい、これ!」
と戸惑う私の前に朝食と一緒に出されたのは、昨日見た新芽である。
新芽ときゅうりのサラダだが、ドレッシングの酸味が効いていて、結構美味しかったのを覚えている。
「昨日ロランから、お嬢ちゃんが美味しそうに食べてたって聞いたのよ。良ければ、食べて頂戴!」
「え‥‥宜しいのですか?」
「勿論、女将が言っているから良いわよ~。美味しく食べてもらったお礼よ!」
パンとオムレツとソーセージにサラダを加えて、楽しい食事になったのは言うまでもない。
ニコニコとサラダを食べているところに、部屋から降りてきたであろうロランの姿が見える。
こちらに気づいたようで、右手にはカップを、左手にはお皿を持ってこちらにやってきた。
最初は私も取りに行くものだと思って、配膳コーナーに行ったのだが、女将さんから「持って行くわよ」と言われて先に席を取っていたのだ。
何でだろう?と思いながら、手に取ったソーセージを食べていると、ロランも疑問に思っていたようだ。
女将さんに直接聞いていた。
「俺にも朝食持ってきてくれれば良いのに」
「あら?運搬は可愛い女の子限定よ?」
「ああ‥‥そう言うことだろうと思ったよ、全く」
そうか、私が女の子だったからか。
同じ席にロランも付き、一緒に食事をした。
私は半分以上食べ終わっていたにも関わらず、食事が終わったのはロランと同じくらいだった。
どうもロランは食べる速さが早いようだ。
食後のお茶をすすっている時に、彼から今日の予定の話をされた。
まずは私の装備を買いに行こう、と言う話だった。勿論、偽装のためのものである。
実は私の収納の中には、拳闘士の装備も入っている。
だが昨日の話を鑑みて、収納の中の装備は偽装に使えないのではないか、と思い至っていた。
理由は、昔両親が集めた装備だからだ。
お兄様は幼い頃から双剣が好きだったようで、ずっと双剣を使っていた。
私は魔法を使うことが多かったが、前衛もできるように様々な武器を使えるように練習をした。
そのため、両親からお古で貰った装備は全て私の元に来たのだ。
思い出してみるとどこかのダンジョンの最下層で手に入れたもの、帝都の有名な武器屋の壁に飾ってあったもの‥‥高い物なのかもしれない。
流石にF級がそれを持っているのは‥‥と思い、ロランには黙っていた。
勿論、機を見て伝えるつもりだ。
その後ギルドでパーティー登録をして、依頼を見てみることに決まった。
武器屋は宿屋の向かい側の通りに幾つか建てられている。
モンテーニュ伯の領地の中では最大規模を誇る街だ。
冒険者の数も多いので、ここに店を構えることができれば武器屋も稼げるのかもしれない。
どの店に行くのか興味があったのだが、ロランは大通りを通り過ぎて小脇にある細道に入って行く。
首を捻りながら付いて行くと、少し奥まったところに武器屋らしきお店が建っていた。
「ここだ」
店の中には誰もいない。まだ開店前なのかな?と不思議に思っているとロランが声を張り上げる。
「おっさん、いるか?」
「おうおう、いるよ。ロラン」
中から出てきたのは、ドワーフのおじ様だ。この方が店長なのだろうか。
おじ様はロランを見て、隣にいた私に気づいたようだ。細かった目が少し大きくなっている。
「ロラン、彼女はお前のコレか?」
おじ様は小指を立てている。何のことだろう?
それにしても、そう言われたロランは顔を真っ赤にしている。どうしたのかしら?
「違うわ。昨日俺のパーティーメンバーになったセリーだ」
「セリーです」
軽く礼をすると、まじまじと私の顔を見るおじ様。
首を傾げたところで、何も思い出せなかったのか、話し始めた。
「どこかで見たことのある顔だと思ったが‥‥まあいい。儂はオーバン。ドワーフじゃ。今日はもしかして嬢ちゃんの装備か?」
「ああ、そうだ。拳闘士の武器はないだろうか?」
「おお、あるぞ。ちょっと待ってろよ。拳闘士の武器は店に置いてないんでな」
そう告げたおじ様は奥へ入っていってしまった。
そんなに拳闘士は人気がない職業なのだろうか?
「拳闘士は魔物や敵の距離が一番近い職業だから、怪我をしやすい。それもあってなる人は少数だ」
何となく心を読まれた気がするのは気のせいではないだろう。
「何で分かったのですか?」と聞いたら、「不思議そうな顔をしていたから予想した」と言われた。
A級冒険者って凄いんだな、と思っていたら、人によるから気をつけろ、と言われる。
そんなに私の思考は分かりやすいのだろうか‥‥
「待たせたな。持ってきたぞ」
テーブルに乗せられたのは、ゴツゴツしたものから可愛らしいもの、シンプルなものまで様々だった。
色々な種類があるんだなー、と思いつつも、手に取り見させてもらっている。
「嬢ちゃんにナックルはなあ、と思ったが、一応持ってきた。だが、やっぱりナックルは合わなそうだな」
「そうそうだなぁ‥‥グローブの方がいいかもしれないな。セリーはどうだ?」
「出来たら‥‥グローブの方がいいです‥‥」
攻撃力はナックルやメリケンが一番だろうが、本気で使ったら敵の顔が潰れてしまうかもしれない。
二人は多分、外見上の問題で指摘しているのかもしれないが、威力の調整も大変だからグローブが良い気がしてきた。
「グローブか、じゃあその3種類から‥‥。いや、ちょっと待ってろ?」
そそくさと奥に向かったと思いきや、すぐに戻ってくるおじ様。おじ様の手には白いグローブがあった。
「これを着けてみてくれないか?」
そのグローブは白地に、手の甲には青色の石がはめ込まれていた。石の両端には羽が付いていて可愛い。
言われた通りに利き手である右の手にはめる。
すると、一瞬眩しい光が現れたーーと思ったが、すぐにその光は消えた。
「嬢ちゃん、光魔法を使えるな?だったらグローブはそれが良いだろう。そのグローブは光魔法が使える者に反応する。そして認められれば、今のように光を放つ」
「ちょっと待て、おっさん。何でそんなものがおっさんの武器屋にあるんだ?」
「はっはっは。昔ツテで手に入れた一品だ。だが、拳闘士で女性で光魔法持ちは中々見つからなくての。儂も買ったは良いが売れずに困っていたんじゃよ。金額は金貨5枚でどうだ?」
「買います」
即答した私にロランが焦って話しかける。
「良いのかよ?確かにあった方が良いかもしれないが‥‥」
「ん?‥‥その格好、まさか嬢ちゃんは新人なのか?」
焦るロランを不審に思ったおじ様は、私の格好を見てそう判断したようだ。
昨日ロランが言っていた通り、私は武器も何も持っていないから、そう思われるのだろう。
「そうか、そうじゃったか。だったら金貨1枚でいい。久しぶりのロランの相棒だ。おまけにもう一つ武器をあげようか」
金貨5枚でも問題無いのだけれど‥‥安くしてくれるなら、何も言うまい。
ちなみに大抵の冒険者は金貨1枚ほどの武器を買っていくらしい。だから1枚にしてくれたようだ。
「あったあった。ほれ、扇じゃ」
渡された感触はとても硬い。そして開いてみると、扇の部分は白く、骨組みは黒いシンプルなものだった。
「お嬢ちゃんなら似合いそうと思って持ってきたが‥‥やっぱり持ち慣れているみたいじゃな。閉じた状態で使えば、殴るくらいできるだろう。儂も使わんし、持ってってくれ」
そのお言葉に甘えて、金貨1枚を支払い、私たちはおじ様のお店を後にした。
解散する前に食事のお礼として自分の貯蓄から持ってきていた金貨を一枚渡そうとしたが、「要らない」と言われてしまった。
金の勘定も怪しいのか‥‥?とボソボソと頭を抱えながら小言を言っていたが、詳しくは聞き取れなかった。
翌日。
昨日より少し早く食堂に向かい、食事を取る。
すると女将さんに声をかけられた。
「お嬢ちゃん、昨日ロランと一緒にいなかったかい?」
「は、はい‥‥」
「はい、これ!」
と戸惑う私の前に朝食と一緒に出されたのは、昨日見た新芽である。
新芽ときゅうりのサラダだが、ドレッシングの酸味が効いていて、結構美味しかったのを覚えている。
「昨日ロランから、お嬢ちゃんが美味しそうに食べてたって聞いたのよ。良ければ、食べて頂戴!」
「え‥‥宜しいのですか?」
「勿論、女将が言っているから良いわよ~。美味しく食べてもらったお礼よ!」
パンとオムレツとソーセージにサラダを加えて、楽しい食事になったのは言うまでもない。
ニコニコとサラダを食べているところに、部屋から降りてきたであろうロランの姿が見える。
こちらに気づいたようで、右手にはカップを、左手にはお皿を持ってこちらにやってきた。
最初は私も取りに行くものだと思って、配膳コーナーに行ったのだが、女将さんから「持って行くわよ」と言われて先に席を取っていたのだ。
何でだろう?と思いながら、手に取ったソーセージを食べていると、ロランも疑問に思っていたようだ。
女将さんに直接聞いていた。
「俺にも朝食持ってきてくれれば良いのに」
「あら?運搬は可愛い女の子限定よ?」
「ああ‥‥そう言うことだろうと思ったよ、全く」
そうか、私が女の子だったからか。
同じ席にロランも付き、一緒に食事をした。
私は半分以上食べ終わっていたにも関わらず、食事が終わったのはロランと同じくらいだった。
どうもロランは食べる速さが早いようだ。
食後のお茶をすすっている時に、彼から今日の予定の話をされた。
まずは私の装備を買いに行こう、と言う話だった。勿論、偽装のためのものである。
実は私の収納の中には、拳闘士の装備も入っている。
だが昨日の話を鑑みて、収納の中の装備は偽装に使えないのではないか、と思い至っていた。
理由は、昔両親が集めた装備だからだ。
お兄様は幼い頃から双剣が好きだったようで、ずっと双剣を使っていた。
私は魔法を使うことが多かったが、前衛もできるように様々な武器を使えるように練習をした。
そのため、両親からお古で貰った装備は全て私の元に来たのだ。
思い出してみるとどこかのダンジョンの最下層で手に入れたもの、帝都の有名な武器屋の壁に飾ってあったもの‥‥高い物なのかもしれない。
流石にF級がそれを持っているのは‥‥と思い、ロランには黙っていた。
勿論、機を見て伝えるつもりだ。
その後ギルドでパーティー登録をして、依頼を見てみることに決まった。
武器屋は宿屋の向かい側の通りに幾つか建てられている。
モンテーニュ伯の領地の中では最大規模を誇る街だ。
冒険者の数も多いので、ここに店を構えることができれば武器屋も稼げるのかもしれない。
どの店に行くのか興味があったのだが、ロランは大通りを通り過ぎて小脇にある細道に入って行く。
首を捻りながら付いて行くと、少し奥まったところに武器屋らしきお店が建っていた。
「ここだ」
店の中には誰もいない。まだ開店前なのかな?と不思議に思っているとロランが声を張り上げる。
「おっさん、いるか?」
「おうおう、いるよ。ロラン」
中から出てきたのは、ドワーフのおじ様だ。この方が店長なのだろうか。
おじ様はロランを見て、隣にいた私に気づいたようだ。細かった目が少し大きくなっている。
「ロラン、彼女はお前のコレか?」
おじ様は小指を立てている。何のことだろう?
それにしても、そう言われたロランは顔を真っ赤にしている。どうしたのかしら?
「違うわ。昨日俺のパーティーメンバーになったセリーだ」
「セリーです」
軽く礼をすると、まじまじと私の顔を見るおじ様。
首を傾げたところで、何も思い出せなかったのか、話し始めた。
「どこかで見たことのある顔だと思ったが‥‥まあいい。儂はオーバン。ドワーフじゃ。今日はもしかして嬢ちゃんの装備か?」
「ああ、そうだ。拳闘士の武器はないだろうか?」
「おお、あるぞ。ちょっと待ってろよ。拳闘士の武器は店に置いてないんでな」
そう告げたおじ様は奥へ入っていってしまった。
そんなに拳闘士は人気がない職業なのだろうか?
「拳闘士は魔物や敵の距離が一番近い職業だから、怪我をしやすい。それもあってなる人は少数だ」
何となく心を読まれた気がするのは気のせいではないだろう。
「何で分かったのですか?」と聞いたら、「不思議そうな顔をしていたから予想した」と言われた。
A級冒険者って凄いんだな、と思っていたら、人によるから気をつけろ、と言われる。
そんなに私の思考は分かりやすいのだろうか‥‥
「待たせたな。持ってきたぞ」
テーブルに乗せられたのは、ゴツゴツしたものから可愛らしいもの、シンプルなものまで様々だった。
色々な種類があるんだなー、と思いつつも、手に取り見させてもらっている。
「嬢ちゃんにナックルはなあ、と思ったが、一応持ってきた。だが、やっぱりナックルは合わなそうだな」
「そうそうだなぁ‥‥グローブの方がいいかもしれないな。セリーはどうだ?」
「出来たら‥‥グローブの方がいいです‥‥」
攻撃力はナックルやメリケンが一番だろうが、本気で使ったら敵の顔が潰れてしまうかもしれない。
二人は多分、外見上の問題で指摘しているのかもしれないが、威力の調整も大変だからグローブが良い気がしてきた。
「グローブか、じゃあその3種類から‥‥。いや、ちょっと待ってろ?」
そそくさと奥に向かったと思いきや、すぐに戻ってくるおじ様。おじ様の手には白いグローブがあった。
「これを着けてみてくれないか?」
そのグローブは白地に、手の甲には青色の石がはめ込まれていた。石の両端には羽が付いていて可愛い。
言われた通りに利き手である右の手にはめる。
すると、一瞬眩しい光が現れたーーと思ったが、すぐにその光は消えた。
「嬢ちゃん、光魔法を使えるな?だったらグローブはそれが良いだろう。そのグローブは光魔法が使える者に反応する。そして認められれば、今のように光を放つ」
「ちょっと待て、おっさん。何でそんなものがおっさんの武器屋にあるんだ?」
「はっはっは。昔ツテで手に入れた一品だ。だが、拳闘士で女性で光魔法持ちは中々見つからなくての。儂も買ったは良いが売れずに困っていたんじゃよ。金額は金貨5枚でどうだ?」
「買います」
即答した私にロランが焦って話しかける。
「良いのかよ?確かにあった方が良いかもしれないが‥‥」
「ん?‥‥その格好、まさか嬢ちゃんは新人なのか?」
焦るロランを不審に思ったおじ様は、私の格好を見てそう判断したようだ。
昨日ロランが言っていた通り、私は武器も何も持っていないから、そう思われるのだろう。
「そうか、そうじゃったか。だったら金貨1枚でいい。久しぶりのロランの相棒だ。おまけにもう一つ武器をあげようか」
金貨5枚でも問題無いのだけれど‥‥安くしてくれるなら、何も言うまい。
ちなみに大抵の冒険者は金貨1枚ほどの武器を買っていくらしい。だから1枚にしてくれたようだ。
「あったあった。ほれ、扇じゃ」
渡された感触はとても硬い。そして開いてみると、扇の部分は白く、骨組みは黒いシンプルなものだった。
「お嬢ちゃんなら似合いそうと思って持ってきたが‥‥やっぱり持ち慣れているみたいじゃな。閉じた状態で使えば、殴るくらいできるだろう。儂も使わんし、持ってってくれ」
そのお言葉に甘えて、金貨1枚を支払い、私たちはおじ様のお店を後にした。
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