アヒルタイガー

ブルッキ

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エピソード1

突然変異

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アヒルタイガー
エピソード1 
突然変異
 
「た、助けてくれー。」
道路を這うように一人の若い男がリュウキの横をとおり過ぎて行った。
「どうしたんだ?」
曲がり角を曲がると得体の知れない生物が、郵便ポストの投函口から舌を入れ、カメレオンのように郵便はがきを食べている。
「う、ひょひょひょ、はがきはうまいケロー。」
よく見ると蛙のようにも見えるが、まず人間ほどでかい。
「な、なんなんだ!」
舌から出ている粘液はポストの鉄成分をも溶かすらしく、ポストが半分溶け出している。
「や、やめろ!そのはがきは誰かの大切な思いが詰まっているんだ!」
蛙のような生物は驚くべき脚力でこちらへ飛んで来た。
「うわーっ。」
リュウキをとおり越し向こう側の壁へとまった。
「くそーっ!これ以上大切な郵便を食べられるわけにはいかん!」
リュウキは体の前で腕をクロスし、腕時計のスイッチを押しながら、
「ファイヤー!アヒルタイガー!」と叫んだ。
すると、腕時計が光を発し、リュウキを光が包む。
と、次の瞬間、リュウキはアヒルタイガーに変身していた。上半身が虎で下半身はアヒルのような容姿である。
「待て、やめるんだ!」アヒルタイガーが蛙に飛びかかる。
「なんだー。おまえは!このカエルバラス様の邪魔をするケロか!」
カエルバラスがアヒルタイガーの背中に舌を叩きつける。
「うおーつ。」ひるむアヒルタイガー。背中が焼け、煙があがっている。
「タイガータックル!」アヒルタイガーが突進する。砕けるカエルバラス。
「やられたー。」カエルバラスが小さなカエルとカメレオンになって逃げていった。
 
 

一週間前―
郵便局に勤めるリュウキは遺伝子工学の権威、辻チャノフ博士の家の前にいた。
「博士―、速達ですー。」インターホン越しに叫んだ。
「すまん、こっちまで持ってきてくれんかー。手が離せんのじゃー。」リュウキは博士の声がする研究室へ向かった。
「なんか、いろいろわけのわからないものがあるなー。」ドアを開けたとたん・・・。
目が眩むほどの光があたりを包んだ。その瞬間リュウキは気を失う。

「・・・君、聞こえるか、おい。リュウキ君。」
リュウキは少しずつ意識が戻ってきた。しかし、自分の身体であって自分でないような感触がある。
「俺は死んでしまったのだろうか・・・」
ゆっくりとあたりを見渡す。なんだか様子がおかしい。自分の身体が見当たらない。
「何だ、この毛は、側に動物がいるのか・・・。いや、ちがう。自分だ。自分の身体・・・。自分?・・・えーっつ!?」
リュウキの身体は上半身が虎、下半身がアヒルという身体に変身していたのである。
「落ち着きたまえ、リュウキ君。君はわしが行っていた実験室の扉を間違えて入ってしまったのだ。ちょうど遺伝子研究の実験をしていたところだったのじゃよ。紫外線の一種の光線を浴びせ、どういった突然変異を・・・。」
「は、博士!そんなことはどうでもいいです!こ、この、か、身体は戻らないんですかっつ!?」
「うーん、わしもこんなことは予想もしていなかったのだ。すぐには答えられん。」
「そ、そんなあ。」
と、その瞬間、リュウキの身体は元の人間の身体に変身した。光を浴びてから、5分が過ぎていた。
「ややっっ!一定の時間だけ突然変異するのか?こりゃ大発見じゃ。」
「ふーっつ・・・・」
リュウキは気の抜けたようにその場にへたりこんだ。


「リュウキ君、おそらく自然に存在するあらゆる光線のなんらかに反応して君は変身することがわかった。街中で突然その光を浴びれば突然変異を起こし、君は変身してしまう。そうなれば、街は大パニックじゃ。君の身体をコントロールしなければいけない。そこでじゃ、このデジタル腕時計に細工をして君に微量の光線を常に放射し続けるよう改良した。これを身に着けておれば、身体をコントロールできるはずじゃ。」
博士は窓から外を眺めながら、
「最近、奇妙な生物が街を襲うという事件が多発しているらしい。くれぐれも気をつけたまえ。」
リュウキは博士の家を後にした・・・。
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