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第2章 子から幸せを…
第30話 旅行先でのハプニング
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山の中を車で走り続け、目的地の今日から泊まるホテルが見えてきた。駐車場に車を停め、建物の中に入る。ロビーでチェックインを済ませ、いよいよ宿泊する部屋とご対面だ。
「今回はパパと話し合って、お高い部屋にしてみたんだー!」
「ありがとー!たのしみだなー!」
「そんな先行っても鍵持ってるのは俺だぞー?」
進吾はすいすいと先に歩いていき、廊下の端にある扉の前で足を止めた。
「ここのおへや?」
「正解。鍵開けるぞー」
鍵を差し込み、捻る。ゆっくりと扉を開けた先にはユニット畳に、温かみのある照明、イスやテーブルにテレビ、ベッドが備えられた和洋室だ。
「うおーーすごーーい!!」
大はしゃぎな進吾。荷物を置いてすぐに、部屋の隅々を探索しに行く。
「おふろやばい!きれー!」
「うわぁほんとだ!良い景色!」
窓を見てみれば、高いところから渓谷が見下ろせる構図になっていた。自然に囲まれ、景色を一望できる最高のお風呂場だった。
「いい部屋予約しといて良かったー」
「ここに住みてー」
ぜひ旦那の昇進に期待しておこう。部屋の探索も終わり、進吾も午前午後の疲れがないかのようにはしゃいでいた。私と旦那はイスに座り、コーヒーを飲みながらぐったりとしていた。
「あっそろそろ飯の時間だ」
「まってましたー!」
宿泊先での楽しみの内の1つである食事だ。今日はかなり歩いたり、遊んだため、いつも以上にお腹が空いている。部屋の鍵を持ち、夕食の場所へ向かう。
「夕食の時間だー!」
ビュッフェ形式の食事だ。お刺身や天ぷらだけでなく、ステーキにピザ、スイーツも豊富にあり、どれを食べるか迷うほどだ。正直な話、見たもの全て食べたいが、お腹の容量がそれを許してくれないため、吟味する必要がある。自分達の席に着き、早速進吾と選びに行くことにした。
「何にしよっかなー。悩んじゃうね」
「たくさんたべるぞー!」
「そうだよ。せっかく来たんだからたくさん食べな?」
野菜だけでなく、ステーキやお刺身など、普段は気軽に食べれないものを多めに手に取った。
「うまそー。俺も取ってくるわ」
席に戻り、テーブルに置くと旦那が羨ましそうに見てきた。どれも美味しそうで良い匂いがする。少ししたら旦那と進吾が一緒に戻ってきた。
「よし、今日1日お疲れ様!いただきまーす」
「「いただきまーす」」
野菜もシャキシャキで美味しく、ステーキの焼き加減といい、柔らかさも普段では味わえないような美味しさだった。
「めっちゃ美味しい!お肉とか柔らかくて食べやすいよ」
「ほんとだ!美味しい!」
「あつっ」
声がした方を見ると進吾が天ぷらを持って、唇を抑えていた。
「揚げたてなんだからそりゃ熱いよー」
こう見ると、やはり以前よりも進んで食べるようになっている。癌の症状も抑えられてきているのかもしれない。
「進吾、最近食べるようになってきたね?」
「今日はちょーつかれたんだもん」
「そうだね。お疲れ様。ちょっと歩きすぎたかもね」
少しずつ健康的になっていく進吾に、安堵していた。
だが、その日の夜、突然出来事が起こった。進吾が体調が悪いと言ってきたのだ。額に手を当てると熱く、熱があるようだった。
「えー、どうしよ。熱っぽい」
「一旦体温測ってみたら?」
一応持ってきた体温計で測ってみることにした。本当にネットのアドバイス通り、念のため持ってきて正解だった。
「37.8℃だって……明日どうする?」
本来ならば明日は1日中、日光周辺を散策する予定だった。3日目はお土産を選んだり、周辺の観光スポットを軽く周り、帰ると決めていた。
「それは明日の様子見てから考えるか。とりあえず、冷やして今日は早めに寝かせないとな」
進吾をベッドに横たわらせ、身体を冷やし、そのまま寝かせることにした。
「何かあったらすぐ言ってね。寝るまでは傍にいるから」
「うん。ごめん」
「大丈夫。旅行先で体調崩すなんて、子供には良くあることなんだから」
頭を撫で、寝るのを見守っていた。その時色々考えた。今日の食事で何かあったのか。はたまた、持病が悪化したのか。癌によって熱が出ることもあると医者から以前聞いていた。そしてその目安がちょうど37.8℃。その場合、すぐに病院に連れて行かなければいけない。最悪の場合を考えていると進吾はぐっすりと寝ていた。
「進吾寝たけど明日どうする?」
「体調が良かったら予定通りにしようと思うけど……悪化してたら病院か家に帰るかだな」
進吾も楽しみにしていた家族旅行が途中で終わる可能性が出てきた。これまでの様子からすっかり油断をしていた。嫌と言う程、辛い現実が思い出されるような気がした。
「今回はパパと話し合って、お高い部屋にしてみたんだー!」
「ありがとー!たのしみだなー!」
「そんな先行っても鍵持ってるのは俺だぞー?」
進吾はすいすいと先に歩いていき、廊下の端にある扉の前で足を止めた。
「ここのおへや?」
「正解。鍵開けるぞー」
鍵を差し込み、捻る。ゆっくりと扉を開けた先にはユニット畳に、温かみのある照明、イスやテーブルにテレビ、ベッドが備えられた和洋室だ。
「うおーーすごーーい!!」
大はしゃぎな進吾。荷物を置いてすぐに、部屋の隅々を探索しに行く。
「おふろやばい!きれー!」
「うわぁほんとだ!良い景色!」
窓を見てみれば、高いところから渓谷が見下ろせる構図になっていた。自然に囲まれ、景色を一望できる最高のお風呂場だった。
「いい部屋予約しといて良かったー」
「ここに住みてー」
ぜひ旦那の昇進に期待しておこう。部屋の探索も終わり、進吾も午前午後の疲れがないかのようにはしゃいでいた。私と旦那はイスに座り、コーヒーを飲みながらぐったりとしていた。
「あっそろそろ飯の時間だ」
「まってましたー!」
宿泊先での楽しみの内の1つである食事だ。今日はかなり歩いたり、遊んだため、いつも以上にお腹が空いている。部屋の鍵を持ち、夕食の場所へ向かう。
「夕食の時間だー!」
ビュッフェ形式の食事だ。お刺身や天ぷらだけでなく、ステーキにピザ、スイーツも豊富にあり、どれを食べるか迷うほどだ。正直な話、見たもの全て食べたいが、お腹の容量がそれを許してくれないため、吟味する必要がある。自分達の席に着き、早速進吾と選びに行くことにした。
「何にしよっかなー。悩んじゃうね」
「たくさんたべるぞー!」
「そうだよ。せっかく来たんだからたくさん食べな?」
野菜だけでなく、ステーキやお刺身など、普段は気軽に食べれないものを多めに手に取った。
「うまそー。俺も取ってくるわ」
席に戻り、テーブルに置くと旦那が羨ましそうに見てきた。どれも美味しそうで良い匂いがする。少ししたら旦那と進吾が一緒に戻ってきた。
「よし、今日1日お疲れ様!いただきまーす」
「「いただきまーす」」
野菜もシャキシャキで美味しく、ステーキの焼き加減といい、柔らかさも普段では味わえないような美味しさだった。
「めっちゃ美味しい!お肉とか柔らかくて食べやすいよ」
「ほんとだ!美味しい!」
「あつっ」
声がした方を見ると進吾が天ぷらを持って、唇を抑えていた。
「揚げたてなんだからそりゃ熱いよー」
こう見ると、やはり以前よりも進んで食べるようになっている。癌の症状も抑えられてきているのかもしれない。
「進吾、最近食べるようになってきたね?」
「今日はちょーつかれたんだもん」
「そうだね。お疲れ様。ちょっと歩きすぎたかもね」
少しずつ健康的になっていく進吾に、安堵していた。
だが、その日の夜、突然出来事が起こった。進吾が体調が悪いと言ってきたのだ。額に手を当てると熱く、熱があるようだった。
「えー、どうしよ。熱っぽい」
「一旦体温測ってみたら?」
一応持ってきた体温計で測ってみることにした。本当にネットのアドバイス通り、念のため持ってきて正解だった。
「37.8℃だって……明日どうする?」
本来ならば明日は1日中、日光周辺を散策する予定だった。3日目はお土産を選んだり、周辺の観光スポットを軽く周り、帰ると決めていた。
「それは明日の様子見てから考えるか。とりあえず、冷やして今日は早めに寝かせないとな」
進吾をベッドに横たわらせ、身体を冷やし、そのまま寝かせることにした。
「何かあったらすぐ言ってね。寝るまでは傍にいるから」
「うん。ごめん」
「大丈夫。旅行先で体調崩すなんて、子供には良くあることなんだから」
頭を撫で、寝るのを見守っていた。その時色々考えた。今日の食事で何かあったのか。はたまた、持病が悪化したのか。癌によって熱が出ることもあると医者から以前聞いていた。そしてその目安がちょうど37.8℃。その場合、すぐに病院に連れて行かなければいけない。最悪の場合を考えていると進吾はぐっすりと寝ていた。
「進吾寝たけど明日どうする?」
「体調が良かったら予定通りにしようと思うけど……悪化してたら病院か家に帰るかだな」
進吾も楽しみにしていた家族旅行が途中で終わる可能性が出てきた。これまでの様子からすっかり油断をしていた。嫌と言う程、辛い現実が思い出されるような気がした。
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