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第2章 子から幸せを…

第28話 意外と物知り?

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「いつはじまるの?」
「18時14分から始まるらしいよ」

現在の時刻は10月8日の18時10分。皆既月食があるとテレビで見て、私たちはベランダから夜空を見上げて待機していた。

「まだかなー」
「あと4分ぐらいだよ」

進吾はその間退屈そうにしていた。14分になると月の一部分に影が入り込み、月食が始まった。

「ほらほらあそこがちょっと暗くなってるよ」
「やっと来たか」

数分後には、月の左下が徐々に赤く黒い、赤銅色に変わっていく。

「黒にかわるんじゃないんだね」
「それは日食の方じゃない?」
「何が違うの?」
「太陽が月に隠されちゃったら日食。逆に太陽と月が反対の方向にいって、地球の影が月に入ったら月食になるんだよ」

と旦那はスマホを見ながら言っていた。きっと話を聞いてすぐに調べたのだろう。それを見て、意外と旦那は物知りだと思った気持ちはすぐに消え失せた。


皆既月食になるまで、家の中でゆっくりしていた。気づけば時刻は19時24分。その時には月全面が赤黒く変わっていた。

「おー全部暗くなったな」
「結構火星っぽい感じになるんだね」

写真をパシャリと撮ったが、上手く写っていなかった。オレンジ色の丸いものが浮かんでいるように写っていた。何度も撮ってみたが結局綺麗には撮れなかった。

「オレンジ色みたいできれー」
「そうだね。こんなに変わるんだね」

数分間私たちは珍しい光景を眺めていた。30分後には左上の部分から明るく黄色になり、月食の終わりを知らせた。

「結構時間かかるもんなんだね」
「終わるまで3時間ぐらいかかるらしいからね」
「すごい長いね。とりあえず旅行の支度だけしちゃおうか」

部屋に入り、そろそろ始まる家族旅行に備えるため、各々準備を始めた。今回は2泊3日を予定しているため、荷物が多くなるだろう。当日着る服を決め、必要なものをキャリーケースに詰め込んでいると、進吾が聞いて来た。

「これでいいかな?」

進吾のリュックには例のノートとペン、ゲーム機と充電器、お小遣いが入っていた。

「良いんじゃない?出発する時にお菓子とかも持ってったら?」
「じゃあそうする」

確認し終えた後、進吾はリュックを持ってリビングに戻っていった。

「あと何か必要なものってあるのかな」

ネットで持ち物について調べてみた。すると色々アドバイスが出てきた。

「ビニール袋にタオル、絆創膏、酔い止め薬、体温計か。他にも色々書いてあるし荷物重くなるだろうな……何事もないと良いんだけど……」

記事に載っていたものは念のため持っていくことにした。こうして旅行の支度も準備万端だ。


そして旅行当日の朝、キャリーケースを車に載せ、後は出発するだけの状態になった。

「忘れ物がないか確認してね?」
「うんだいじょうぶ」
「よし、じゃあ行くか!」

靴を履き、玄関の扉を開く。眩しい光が私たちを照らした。こういう旅行の日に限って曇りや雨が多く、気分が沈むが、今回は晴れていて良かった。そう思いながら車に乗り込んだ。

「出発するぞー」
「いぇーい日光いくぞー」

いよいよ楽しみにしていた家族旅行が始まるのであった。
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