25 / 42
第2章 子から幸せを…
第25話 親のやりたいこと
しおりを挟む
「身長伸びたかなー?」
「ずっとねてたからのびてるかも」
「"寝る子は育つ"だもんね」
運動会から2日が経った時のお話。私と進吾は進吾のやりたいことでもある、身長測定をしているところだ。進吾は家にある壁にピタッと背中をくっつけ、そのままジッとしていた。
「じゃあ測るよー?」
メジャーを取り出し、床から進吾の頭のてっぺんまで測る。手を頭の上に置き、区切ったところの目盛りを見てみる。
「おー、いい感じだよ」
「ほんとー?」
「あーほら、頭動かしてちゃ測れないよ~?」
「はーい」
目盛りを手でしっかりと抑え、進吾にも見せる。
「2センチも伸びてるよ。良かったね」
「いぇーい」
夜になれば、旦那も帰ってきて家族3人の時を過ごしていた。すると進吾は部屋に行ったかと思うと、突然部屋から猛スピードでリビングまでやってきた。
「じゃじゃーん」
見せてきたのは、黒い線で横に2マス、縦に4マスと四角く区切られた白い紙2枚だった。
「どうしたー、進吾?」
「ママとパパにはこれに"やりたいこと"をかいてもらいます」
「私たちが?」
「そう!かいてぼくがかなえる。"ぼくがかなえる券"だよ」
名前を聞いたとき、ネーミングセンスをもう少しどうにかならなかったのかとは思った。だが、名前とは対照的に、内容はよく考えられていた。私たちがやりたいことを書き連ね、切り取ってそれを進吾に渡すと言う制度。集めた券は何かに使うようだったが、どうするのか気になるところではある。どちらにせよ発想力が豊かな子供らしいものだ。
「面白いこと考えたなー」
「進吾は他にやりたいことないの?」
「ないからこうしてるのー」
確かにやりたいことノート達成まで後少しだ。だから進吾にも心に余裕が出てきたのだろう。だが、いざ言われてみると何も頭に出てこなかった。
「これ全部埋めなきゃダメ?」
「ぜんぶじゃなくてもいいよ。たりなかったらうらにかいて」
「そうだなー。ちょっと考えても良いか?」
「うんいいよー」
そう言って私たちは紙を受け取り、しばらく考えることにした。いきなり聞かれると案外パッとすぐに思いつかなかった。
時刻は深夜1時、色々やっているとすっかり日付が変わっていた。
「そう言えば、これ何書こうかな」
リビングの机の上にあった"ぼくがかなえる券"を見つめる。紙の前に座り、ペンを持った。
「私のやりたいことか……」
私は真っ先に思いついたのは、家族での旅行だった。進吾の体調が良くなり、体力もついた今、実現しやすくなった。次に私がやってみたかったことは3人で料理を作ってみることだ。進吾が料理をできるとは思えないが、旦那と2人がかりで見守れば、安全にできるかもしれない。
その後も1人黙々と考えていた。そして私は行事ごとのことを考えた。この先ハロウィンやクリスマスが控えている。だからそのままペンを進ませていた。しかし、"クリスマス"という文字を書いている途中、手を止めた。そして私は書きかけの"クリスマス"の文字に横棒を2本いれた。
よくよく考えてみたら、気分を悪くする文字だと思ったのだ。進吾が余命を宣告されたのは6月17日。その半年後の月は12月。どんなに手術や治療を受けてもクリスマスの日まで生きていられる保証はない。そう思うと書かない方が幸せなのかもしれない。
私のやりたいこと
・家族旅行する
・3人で料理を作る
・進吾にゲームで勝つ
・ハロウィンパーティー
「よし、これで良いかな」
書き終え満足した時に、旦那が扉を開け、ゆっくりと入ってきた。
「まだ起きてたのか」
「そーなの。」
「俺も書いたんだよね」
「ちょうど私も書き終わったところ」
テーブルにお互い書いたものを置き、見合わせた。
旦那のやりたいこと
・ドライブ
・キャッチボール
・星を見に行く
・旅行
「やっぱ旅行行きたいよな」
「せっかくなんだし行きましょ」
深夜にも関わらず、自分達のやりたいことについて熱く語り合った。これから私たちは、また新たなことを叶え始めるのであった。
※現状の進吾のやりたいことノート
やりたいこと
☑️おいしいごはんをたべたい
☑️ともだちとあそびたい
☑️どうぶつえんにいく
□おさかなをみる
☑️はなびみたい
☑️せをのばしたい
☑️がっこうにいく
☑️じゅぎょうさんかんでてをあげる
☑️しゅじゅつする
☑️かぞくみんなでしゃしんをとる
☑️うんどうかいでいちいをとる
「ずっとねてたからのびてるかも」
「"寝る子は育つ"だもんね」
運動会から2日が経った時のお話。私と進吾は進吾のやりたいことでもある、身長測定をしているところだ。進吾は家にある壁にピタッと背中をくっつけ、そのままジッとしていた。
「じゃあ測るよー?」
メジャーを取り出し、床から進吾の頭のてっぺんまで測る。手を頭の上に置き、区切ったところの目盛りを見てみる。
「おー、いい感じだよ」
「ほんとー?」
「あーほら、頭動かしてちゃ測れないよ~?」
「はーい」
目盛りを手でしっかりと抑え、進吾にも見せる。
「2センチも伸びてるよ。良かったね」
「いぇーい」
夜になれば、旦那も帰ってきて家族3人の時を過ごしていた。すると進吾は部屋に行ったかと思うと、突然部屋から猛スピードでリビングまでやってきた。
「じゃじゃーん」
見せてきたのは、黒い線で横に2マス、縦に4マスと四角く区切られた白い紙2枚だった。
「どうしたー、進吾?」
「ママとパパにはこれに"やりたいこと"をかいてもらいます」
「私たちが?」
「そう!かいてぼくがかなえる。"ぼくがかなえる券"だよ」
名前を聞いたとき、ネーミングセンスをもう少しどうにかならなかったのかとは思った。だが、名前とは対照的に、内容はよく考えられていた。私たちがやりたいことを書き連ね、切り取ってそれを進吾に渡すと言う制度。集めた券は何かに使うようだったが、どうするのか気になるところではある。どちらにせよ発想力が豊かな子供らしいものだ。
「面白いこと考えたなー」
「進吾は他にやりたいことないの?」
「ないからこうしてるのー」
確かにやりたいことノート達成まで後少しだ。だから進吾にも心に余裕が出てきたのだろう。だが、いざ言われてみると何も頭に出てこなかった。
「これ全部埋めなきゃダメ?」
「ぜんぶじゃなくてもいいよ。たりなかったらうらにかいて」
「そうだなー。ちょっと考えても良いか?」
「うんいいよー」
そう言って私たちは紙を受け取り、しばらく考えることにした。いきなり聞かれると案外パッとすぐに思いつかなかった。
時刻は深夜1時、色々やっているとすっかり日付が変わっていた。
「そう言えば、これ何書こうかな」
リビングの机の上にあった"ぼくがかなえる券"を見つめる。紙の前に座り、ペンを持った。
「私のやりたいことか……」
私は真っ先に思いついたのは、家族での旅行だった。進吾の体調が良くなり、体力もついた今、実現しやすくなった。次に私がやってみたかったことは3人で料理を作ってみることだ。進吾が料理をできるとは思えないが、旦那と2人がかりで見守れば、安全にできるかもしれない。
その後も1人黙々と考えていた。そして私は行事ごとのことを考えた。この先ハロウィンやクリスマスが控えている。だからそのままペンを進ませていた。しかし、"クリスマス"という文字を書いている途中、手を止めた。そして私は書きかけの"クリスマス"の文字に横棒を2本いれた。
よくよく考えてみたら、気分を悪くする文字だと思ったのだ。進吾が余命を宣告されたのは6月17日。その半年後の月は12月。どんなに手術や治療を受けてもクリスマスの日まで生きていられる保証はない。そう思うと書かない方が幸せなのかもしれない。
私のやりたいこと
・家族旅行する
・3人で料理を作る
・進吾にゲームで勝つ
・ハロウィンパーティー
「よし、これで良いかな」
書き終え満足した時に、旦那が扉を開け、ゆっくりと入ってきた。
「まだ起きてたのか」
「そーなの。」
「俺も書いたんだよね」
「ちょうど私も書き終わったところ」
テーブルにお互い書いたものを置き、見合わせた。
旦那のやりたいこと
・ドライブ
・キャッチボール
・星を見に行く
・旅行
「やっぱ旅行行きたいよな」
「せっかくなんだし行きましょ」
深夜にも関わらず、自分達のやりたいことについて熱く語り合った。これから私たちは、また新たなことを叶え始めるのであった。
※現状の進吾のやりたいことノート
やりたいこと
☑️おいしいごはんをたべたい
☑️ともだちとあそびたい
☑️どうぶつえんにいく
□おさかなをみる
☑️はなびみたい
☑️せをのばしたい
☑️がっこうにいく
☑️じゅぎょうさんかんでてをあげる
☑️しゅじゅつする
☑️かぞくみんなでしゃしんをとる
☑️うんどうかいでいちいをとる
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ぼくたちは異世界に行った
板倉恭司
ファンタジー
偶然、同じバスに乗り合わせた男たち──最強のチンピラ、最凶のヤクザ、最狂のビジネスマン、最弱のニート──は突然、異世界へと転移させられる。彼らは元の世界に帰るため、怪物の蠢く残酷な世界で旅をしていく。
この世界は優しくない。剥き出しの残酷さが、容赦なく少年の心を蝕んでいく……。
「もし、お前が善人と呼ばれる弱者を救いたいと願うなら……いっそ、お前が悪人になれ。それも、悪人の頂点にな。そして、得た力で弱者を救ってやれ」
この世界は、ぼくたちに何をさせようとしているんだ?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
【短編集2】恋のかけらたち
美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。
甘々から切ない恋まで
いろんなテーマで書いています。
【収録作品】
1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24)
→誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!?
魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。
2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08)
→幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。
3.歌声の魔法(2020.11.15)
→地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!?
4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23)
→“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。
5.不器用なサプライズ(2021.01.08)
→今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。
*()内は初回公開・完結日です。
*いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。
*現在は全てアルファポリスのみの公開です。
アルファポリスでの公開日*2025.02.11
表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる