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第1章 親から幸せを…

第24話 悔いのない選択を

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白い帯と赤く書かれた"ゴール"という文字、それを見て瞬時に状況を理解した。私と進吾はなんとか保護者リレーで1位を取ることができたのだ。周りを見れば会場は大きな拍手に包まれていた。

「進吾!よく頑張ったねー」
「ハラハラしたよー。ありがとー!」

後々聞いた話だが、2位の人との差はほんの僅かだったようだ。私は疲れてその場に立ち止まっていると、誰かがゆっくりとこちらに歩みを進めてきた。

「2人ともお疲れ様。そして1位おめでとー」
「ぼく1ばーん!」

走った後で疲れているにも関わらず、ハイテンションで旦那のところへ意気揚々と自慢しに行った。私は緊張が一気に解け、安心感と達成感で胸がいっぱいになっていた。肩で息をしながらゆっくりと2人の元へ歩いて行った。

「いやー見てるこっちもドキドキだったんだそー?だんだん迫ってきててさ」
「私もチラッて見えてめっちゃ焦ったよ」

旦那はハハハと大きく笑い、トントンと肩を叩いてきた。するとアナウンスが流れ、そろそろ閉会式が始まるようだった。長くもあり短くもあったような運動会はこれにて幕を閉じることになる。少し寂しい気もするが、今はそれを上回るほど気分が良い。進吾にとっても私たちにとっても忘れられない幸せな運動会になった。


閉会式も終わり、子供を連れてぞろぞろと帰る親御さんたちで校門の近くはいっぱいだ。対照的にグラウンドには人気が少なく、見ていると先程の賑やかさが恋しくなってくる。

「せっかくだし写真撮ろっか」
「そうだな」

旦那は三脚を立て、カメラをセットする。

「ポーズは何にするか決めた?」
「1位取ったから指で1にする」
「じゃあそれしようか」

画角やタイマーの設定も終わったようなので、グラウンドを背景に写真を撮ることにした。

「いくぞー」

ボタンをポチっと押し、進吾の横に移動した。真ん中に進吾、両サイドに私と旦那がいる構図は、最初に家族写真を撮った時と同じだった。カシャッと音が鳴り、撮れた写真を確認する。

「今回は綺麗に撮れたね」
「段々慣れてきたか」

誰ひとり事故ることもなく、みんな1のポーズをとった。光が顔を照らしていて、家族みんなの笑った顔がより煌めいて見えた。

「よし、今日はもう帰ろっか」
「つかれたー」
「進吾帰ったらすぐ寝そうだな」
「ねないってー」

帰り道はほのぼのとした時間が流れていた。まるでリレーで見たようなゆったりとした癒しの時間。今日は運動会に来て良かったと心から思った。おかげでずっと悩んでいたことがやっと解消された。

大切なことは子供と同じ目線で、同じ立場に立って一緒に走ることだ。やっとそれに気づけた。ずっと見守っているだけでは、きっと息子も楽しめない。私も今回のリレーでちゃんと分かった気がする。見てるだけも楽しいが、一緒に遊ぶとなるともっと楽しかった。当たり前のようなことを見落としていた。

「もっと早く気づきたかったな……」

そうボソッと呟く。だが、今さら過ぎてしまったことを嘆いても仕方がない。進吾の余命も残り2ヵ月だ。それまでに悔いのない選択をし続けるしかない。そう決意を固めた。すると先頭にいた進吾が道を指さして、私たちの方を振り返ってきた。

「あそこのでんちゅうまできょうそうね!」
「進吾疲れてるのに大丈夫か?」
「うん大丈夫!」
「じゃあよーいドン!」

そう言って私が最初に走り始めた。

「ずるーい」

進吾も後を追ってくる。

「あれ、あの2人今日走ったんだよな?」
「パパおそーい」
「しょーがないなー!一瞬でそっちまで行ってやるからな!」

旦那もこちらに駆け寄ってきた。マジ走りで来たため、とても速かった。その本気の姿と表情に私たちは目を見合わせ、ぷふっと笑ってしまう。

「おいおいどこがおかしいんだよー」
「だって、かおがおもしろいんだもん」

思い返せば今日は色々なことがあった。焦ったり、悲しんだり、喜んだり。けれど、本当に幸せな1日だった。

「ね?ママ?」
「そうだね」

日が沈みそうなオレンジ色の空の下、家族3人で笑って帰っていった。
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