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第1章 親から幸せを…
第20話 落ちた体力を取り戻せ!
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「今日も歩きに行くか?」
「うん。あるくー」
あれから毎日旦那が帰ってきては、一緒に散歩をしに行くようになった。私も時間に余裕があるときは、進吾たちと共に歩くことにした。夜は物静かで、虫の鳴き声と私たちの笑い声だけが聞こえる。夜風も心地よく、街の明かりもあってか、なんとも幻想的な空間だ。
「でんききれー」
周りを見ると、街灯や家の明かりが暗い夜の空間を、ポツポツと照らしている。歩き始めて十分も経たないでいると進吾が歩みをゆっくりと止めた。
「つかれたー」
「ちょっと休憩するか」
近くにあった公園のベンチに腰をかけた。この様子にひしひしと辛い現実が見えてくる。それはきっと旦那も同じ気持ちだ。約1ヵ月でどこまで体力を戻せるのか……それが私たちの大きな課題になってくる。
「だんだん歩けるようになってきたな」
「そお?あんまかわってないきがする」
たとえ距離が伸びたとしてもほんのわずかだだろう。
「調べてみたんだけど、家でも簡単なストレッチが出来るらしいし、やってみるか」
「かえってゆっくりしてからね」
「はい、わかりました」
気のせいだろうか、日に日に、旦那の立場が低くなってきている気がする。
「そういえば運動会なにやるの?」
「えーっと……はしるやつと玉入れと……あとは、ほごしゃリレー」
「保護者リレーもあるの?」
「うん。いっしょにはしるらしい」
「あっ、一緒に走るんだ?」
最初は出ても良いかなと思ったが、走るとなると運動音痴の私には到底無理だ。だが、旦那は笑顔でこう言い始めた。
「それはママに出てもらおうか」
「えっ、私!?ムリムリ」
「いっしょにやろ」
「やれるだけやるけど、本当に無理だったらパパと交代するからね?」
こうして私も練習しなければならなくなった。全く運動をしてこなかった弊害か、走る速度も体力もない。高校のときはもっと早く走れていたはずだが、年を取り、なおかつ体力も落ちたことが原因だろう。
「ふっかつしたよー。つぎははしりたい」
「よーし頑張るかー」
「帰ったら私絶対寝るから……」
進吾は元気よく走っていった。それを追うように旦那も走り、あっという間に進吾に追いついていた。
「そんなに足速いなら代わりに走ってよー」
「ほら頑張れー」
「もー、せめて早く言っておいてくれたら……練習できたのにー……」
こんなに走ったのは久々な気がする。進吾と旦那の元へと駆けていった。数分走り、休憩、そしてまた走り、帰宅することになった。
「あがったよ。全員お風呂入ったねー?」
「あぁ。進吾寝ちゃった」
「そりゃあんなにはしゃぐからだよー」
「そうそう、今日はやけに元気だったよな」
「良いことでもあったのかね」
「いつもは俺だけだったからか?今日は家族3人で出来たから楽しかったとかかもな」
その言葉が不思議と心に残った。なぜだか、とても重要なことのような気がして、今でもその感覚、情景を覚えている。
「まあ何はともあれ、進吾とも仲良さそうにしてるし、良かったよ」
「いつも仲良くいいでしょ」
「いや前距離置かれてるみたいなこと言っただろ?最近は無いわけではないけど、減ったなーって」
「そうなんだ……まだあるのね」
「今日も新橋の神社行ったときも、進吾嬉しそうだったな」
旦那の言う"距離を置く"ということ自体、私自身ピンときていないのだ。実感はないが、旦那から見たらそう見えるようだ。もし旦那の言うことが本当ならば、なぜ進吾は距離を取っているのか。それが全く分からない。
「まあ、まだ幼いんだし、そんな気にすることでもないか。変なこと言ってすまんな」
「私は特に感じてないし、進吾も意識してないんじゃない?」
「やっぱそうだよな。色々考えすぎちゃう癖何とかしなきゃだなー……」
「私と一緒じゃん」
「そりゃお互い似た者同士だからな。とりあえず俺らも寝るか」
刻一刻と一緒にいられる時間が減りつつあることだけは実感していた。
「うん。あるくー」
あれから毎日旦那が帰ってきては、一緒に散歩をしに行くようになった。私も時間に余裕があるときは、進吾たちと共に歩くことにした。夜は物静かで、虫の鳴き声と私たちの笑い声だけが聞こえる。夜風も心地よく、街の明かりもあってか、なんとも幻想的な空間だ。
「でんききれー」
周りを見ると、街灯や家の明かりが暗い夜の空間を、ポツポツと照らしている。歩き始めて十分も経たないでいると進吾が歩みをゆっくりと止めた。
「つかれたー」
「ちょっと休憩するか」
近くにあった公園のベンチに腰をかけた。この様子にひしひしと辛い現実が見えてくる。それはきっと旦那も同じ気持ちだ。約1ヵ月でどこまで体力を戻せるのか……それが私たちの大きな課題になってくる。
「だんだん歩けるようになってきたな」
「そお?あんまかわってないきがする」
たとえ距離が伸びたとしてもほんのわずかだだろう。
「調べてみたんだけど、家でも簡単なストレッチが出来るらしいし、やってみるか」
「かえってゆっくりしてからね」
「はい、わかりました」
気のせいだろうか、日に日に、旦那の立場が低くなってきている気がする。
「そういえば運動会なにやるの?」
「えーっと……はしるやつと玉入れと……あとは、ほごしゃリレー」
「保護者リレーもあるの?」
「うん。いっしょにはしるらしい」
「あっ、一緒に走るんだ?」
最初は出ても良いかなと思ったが、走るとなると運動音痴の私には到底無理だ。だが、旦那は笑顔でこう言い始めた。
「それはママに出てもらおうか」
「えっ、私!?ムリムリ」
「いっしょにやろ」
「やれるだけやるけど、本当に無理だったらパパと交代するからね?」
こうして私も練習しなければならなくなった。全く運動をしてこなかった弊害か、走る速度も体力もない。高校のときはもっと早く走れていたはずだが、年を取り、なおかつ体力も落ちたことが原因だろう。
「ふっかつしたよー。つぎははしりたい」
「よーし頑張るかー」
「帰ったら私絶対寝るから……」
進吾は元気よく走っていった。それを追うように旦那も走り、あっという間に進吾に追いついていた。
「そんなに足速いなら代わりに走ってよー」
「ほら頑張れー」
「もー、せめて早く言っておいてくれたら……練習できたのにー……」
こんなに走ったのは久々な気がする。進吾と旦那の元へと駆けていった。数分走り、休憩、そしてまた走り、帰宅することになった。
「あがったよ。全員お風呂入ったねー?」
「あぁ。進吾寝ちゃった」
「そりゃあんなにはしゃぐからだよー」
「そうそう、今日はやけに元気だったよな」
「良いことでもあったのかね」
「いつもは俺だけだったからか?今日は家族3人で出来たから楽しかったとかかもな」
その言葉が不思議と心に残った。なぜだか、とても重要なことのような気がして、今でもその感覚、情景を覚えている。
「まあ何はともあれ、進吾とも仲良さそうにしてるし、良かったよ」
「いつも仲良くいいでしょ」
「いや前距離置かれてるみたいなこと言っただろ?最近は無いわけではないけど、減ったなーって」
「そうなんだ……まだあるのね」
「今日も新橋の神社行ったときも、進吾嬉しそうだったな」
旦那の言う"距離を置く"ということ自体、私自身ピンときていないのだ。実感はないが、旦那から見たらそう見えるようだ。もし旦那の言うことが本当ならば、なぜ進吾は距離を取っているのか。それが全く分からない。
「まあ、まだ幼いんだし、そんな気にすることでもないか。変なこと言ってすまんな」
「私は特に感じてないし、進吾も意識してないんじゃない?」
「やっぱそうだよな。色々考えすぎちゃう癖何とかしなきゃだなー……」
「私と一緒じゃん」
「そりゃお互い似た者同士だからな。とりあえず俺らも寝るか」
刻一刻と一緒にいられる時間が減りつつあることだけは実感していた。
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