上 下
14 / 42
第1章 親から幸せを…

第14話 写真撮影

しおりを挟む
「ん……しゅじゅつは……?」
「もう手術終わったよ。お疲れ様、頑張ったね」

手術で眠っていた進吾が目を覚ました。寝ている間に治療を済ませたため、受けた実感はないだろう。

「ふーん、ぜんぜんだいじょうぶじゃん」

ニコッと笑った。その反応に少し違和感を覚えた。今までと違う反応だと気づいたのだ。どこか大人びているような、私たちを安心させるような対応をしている気がする。

「そういえばいつたいいんできるの?」
「あー、2週間後だな。つまり最初の予定と変わってないな」
「そっか……まあ、のびてないならいいや」
「入院してから今日でちょうど1週間だって。早いようで長いねー」
「えー、ながいしひま」

病院のベッドの上で3週間生活するというのは確かに酷だ。自由に身体を動かすこともできず、好きな場所にも行けない、友達とも遊べない。しかも入院を2ヶ月前にも経験しているため尚更退屈だろう。

「暇だったらお友達呼んでみる?」
「でもじゅみょうとかびょうきのこととかどうするの?」
「病気とか余命とかを友達に隠しておきたい?」
「うん。なにかいわれるかもしれない」
「何も言わせないし、もし変なこと言ったら、私が本気で怒るから」

小学生だと持病によるいじめやいじり、嫌がらせでトラウマを覚えてしまう子も少なくない。特に小学2年生なら相手の気持ちを考えられる子と考えられない子で別れやすい。進吾にはそうなって欲しくない。

「呼んで欲しかったらいつでも言ってね?連絡してみるから」
「うん。かんがえとくー」

進吾はハッと何かを思い出したかのように、あるものを取り出した。

「そういえばこれやりたい」

見せてきたのは例のやりたいことノートだ。内容が新たに追加されていた。指で指してるところを見た。

やりたいこと
・しゅじゅつする
・かぞくみんなでしゃしんをとる

"かぞくみんなでしゃしんをとる"に指を置いていた。

「いつもカメラとってるときはパパかママのどっちかしかうつってないじゃん」
「おー、そういやみんなで撮ってなかったな。せっかくだし、手術頑張った記念で撮っとくか」
「セットするよー、ポーズ考えといてねー?」

カメラを台に置き、時間差で撮れるように設定をする。真ん中にはベッドの上にいる進吾、左右に私と旦那がいるような画角にした。

「よし、撮るよー?」

撮影ボタンを押し、カウントダウンの音が鳴り始めた。私は押してすぐにササッと進吾の左隣に移動した。段々音が鳴る間隔が早くなり、カシャッとシャッターを切った音がした。

「どれどれー?」

撮れた写真を確認してみる、旦那の目が半開きになっていたことぐらいで、他は笑顔で上手く撮れていた。

「タイミング悪すぎだろー」
「これはこれで面白くていいじゃん」
「これすきー」
「そーかなー…もう1枚撮ろ、ね?」

そう言われて撮り直したが……

「私どこ向いてんのよー、もっかい」

この後旦那と私の気が済むまで何枚も撮り直した。一方進吾はノリノリで色んなポーズをとって楽しんでいた。

翌日、机の上にあった旦那のキーホルダーを見ると昨日撮った写真が飾られていた。しかも例の半開きの写真だ。

「案外気に入ってるんだ、この写真」

その横にはやりたいことノートが広げられていた。だが、その時妙な違和感を感じた。数ページめくると、切り離された跡を見つけた。しかも3ページ分程だ。

「最近絵書いてるし、そのために切ったのかな?」

不思議に思いながらもそこまで気に留めなかった。開いていたノートを閉じると、裏表紙には昨日撮った写真を貼っていた。旦那とは違い、全員の表情が綺麗なものだった。

「相当嬉しかったんだね。旦那と本当に似てるわー」

父親似を感じながら、そっとノートを表に返し、その場を去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

強引な初彼と10年ぶりの再会

矢簑芽衣
恋愛
葛城ほのかは、高校生の時に初めて付き合った彼氏・高坂玲からキスをされて逃げ出した過去がある。高坂とはそれっきりになってしまい、以来誰とも付き合うことなくほのかは26歳になっていた。そんなある日、ほのかの職場に高坂がやって来る。10年ぶりに再会する2人。高坂はほのかを翻弄していく……。

処理中です...