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第1章 親から幸せを…
第11話 最悪の宣告
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「ねぇ…ぼくってしんじゃうの?」
「え?……なんで?」
重々しい空気の中、必死に声を絞り出した。
「さっきかんごしさんがいってた」
それを聞いた途端、かつてない怒りを覚えた。頭が一気に熱くなり、力が湧いてくるような感覚。その人を見つけ次第、殴りたくなるようなイライラした感覚。進吾はまた泣き出しそうな表情で見つめており、声も震えている。
「進吾、どんな人だったか覚えてるか?」
旦那は普段よりも声が低く、目つきも鋭かった。表情には大きく出さないものの、声と雰囲気だけで怒りが伝わってくる。
「いつもとちがうひと、おばさん」
どうやらいつも進吾の担当をしている若いお姉さんの看護師ではなかったようだ。するとそれらしき人物が病室に入ってきた。
「あっ、親も来てたんだ」
ニヤニヤとそれだけ言い、立ち去ろうとしていた。
「すみません、お話ししたいことがありまして、よろしいですか?」
旦那は怒りを沈めながらも丁寧に話しかけた。病室を出て、廊下で問い詰めることにした。そして余命について言ったのか尋ねた。すると
「あらすいません、もうすでに伝えてるのかと思って~」
このおばさんはなぜか笑っていた。皮肉そうな言い方、鼻につくような言い方に私たちはイラッとした。しかしこちらが言う隙も与えず、おばさんは自己保身に走った。
「でもそろそろ言おうとしてたんでしょ?誰がいつどこで言おうと変わらないじゃな~い」
「なんでそんなに笑ってられるんですか?先ほどから態度が悪いと思うのですが」
私は冷たく注意をした。しかしそれでもおばさんは態度を改めようとしなかった。むしろ態度は悪化した。
「え、怒ってるの~?目の下にクマもあるし、寝れてないんですね」
ついに堪忍袋の緒が切れた旦那が一歩前に踏み出そうとした時、後ろから声をかけられた。
「どうなさいました?」
「あっ、いつもお世話になっております」
その人物は進吾の担当のお医者さんだった。私は一連の出来事を全て話した。すると医師は一度おばさん看護師を睨んだ後すぐに頭を下げた。
「それは大変失礼しました。申し訳ございません。私らの責任です」
「先生が悪いわけではないですし、頭を下げないでください」
「おい、お前も謝りなさい」
医者が看護師の頭を下げさせようとする。しかし、その手を強く振りほどき、暴言を吐きまくった。
「触るな、キモい」
そう言われた医者は深いため息をつき、私たちに言葉を発した。
「後程謝らせに参らせますので…」
頭を再び下げ、問題の看護師を引き連れてどこかに向かった。
「進吾は……?」
病室のドアを開けると布団にくるまり、小さな声で泣いていた。
数十分後には、涙目のあの看護師と医者、いつもの看護師さんが謝りに来た。
詳細を聞くと驚きの理由だった。どうやら私たちがコミュニティスペースで話していたことを聞いていたようだ。それでストレス発散のために、面白半分で息子に言ったとのこと。もちろんその看護師を許すわけもなく、二度と息子に会わないように警告をした。
しかし、一番の問題は進吾のメンタルである。待っている間も進吾は泣いていて、私たちと話そうともしなかった。
「進吾さんのメンタルケアもこちらで行います」
と医者は言ってくれたが、安心はできず、不安だけが積もっていく。進吾への伝え方は最悪の宣告になってしまった。
「え?……なんで?」
重々しい空気の中、必死に声を絞り出した。
「さっきかんごしさんがいってた」
それを聞いた途端、かつてない怒りを覚えた。頭が一気に熱くなり、力が湧いてくるような感覚。その人を見つけ次第、殴りたくなるようなイライラした感覚。進吾はまた泣き出しそうな表情で見つめており、声も震えている。
「進吾、どんな人だったか覚えてるか?」
旦那は普段よりも声が低く、目つきも鋭かった。表情には大きく出さないものの、声と雰囲気だけで怒りが伝わってくる。
「いつもとちがうひと、おばさん」
どうやらいつも進吾の担当をしている若いお姉さんの看護師ではなかったようだ。するとそれらしき人物が病室に入ってきた。
「あっ、親も来てたんだ」
ニヤニヤとそれだけ言い、立ち去ろうとしていた。
「すみません、お話ししたいことがありまして、よろしいですか?」
旦那は怒りを沈めながらも丁寧に話しかけた。病室を出て、廊下で問い詰めることにした。そして余命について言ったのか尋ねた。すると
「あらすいません、もうすでに伝えてるのかと思って~」
このおばさんはなぜか笑っていた。皮肉そうな言い方、鼻につくような言い方に私たちはイラッとした。しかしこちらが言う隙も与えず、おばさんは自己保身に走った。
「でもそろそろ言おうとしてたんでしょ?誰がいつどこで言おうと変わらないじゃな~い」
「なんでそんなに笑ってられるんですか?先ほどから態度が悪いと思うのですが」
私は冷たく注意をした。しかしそれでもおばさんは態度を改めようとしなかった。むしろ態度は悪化した。
「え、怒ってるの~?目の下にクマもあるし、寝れてないんですね」
ついに堪忍袋の緒が切れた旦那が一歩前に踏み出そうとした時、後ろから声をかけられた。
「どうなさいました?」
「あっ、いつもお世話になっております」
その人物は進吾の担当のお医者さんだった。私は一連の出来事を全て話した。すると医師は一度おばさん看護師を睨んだ後すぐに頭を下げた。
「それは大変失礼しました。申し訳ございません。私らの責任です」
「先生が悪いわけではないですし、頭を下げないでください」
「おい、お前も謝りなさい」
医者が看護師の頭を下げさせようとする。しかし、その手を強く振りほどき、暴言を吐きまくった。
「触るな、キモい」
そう言われた医者は深いため息をつき、私たちに言葉を発した。
「後程謝らせに参らせますので…」
頭を再び下げ、問題の看護師を引き連れてどこかに向かった。
「進吾は……?」
病室のドアを開けると布団にくるまり、小さな声で泣いていた。
数十分後には、涙目のあの看護師と医者、いつもの看護師さんが謝りに来た。
詳細を聞くと驚きの理由だった。どうやら私たちがコミュニティスペースで話していたことを聞いていたようだ。それでストレス発散のために、面白半分で息子に言ったとのこと。もちろんその看護師を許すわけもなく、二度と息子に会わないように警告をした。
しかし、一番の問題は進吾のメンタルである。待っている間も進吾は泣いていて、私たちと話そうともしなかった。
「進吾さんのメンタルケアもこちらで行います」
と医者は言ってくれたが、安心はできず、不安だけが積もっていく。進吾への伝え方は最悪の宣告になってしまった。
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