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第1章 親から幸せを…

第8話 肉レポ

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この日は進吾のやりたいことでもある、美味しいご飯を食べに行くことにした。そして旦那の誕生日だ。今日も旦那は仕事なため、夜に食べに行き、帰ってきてプレゼントを渡すと計画を立てていた。夏休みに入った進吾は昼からゆったりと過ごしており、ゲームをしている。今は夕方で、そろそろ旦那が帰ってくる時間帯だろう。

「きょうのよるなにたべるのー?」
「今日は焼き肉にするよー」
「ほんとー!たのしみー!!」

夏になると食欲が極端に減ってしまう進吾のために、旦那も大好きな焼き肉に行くことに決定したのだ。

「そろそろパパ帰ってくるから待っててねー」

そう言った途端に玄関からガチャリと音がした。

「ただいまー」
「おかえりー!」
「おかえり、ちょうど話をしてたら帰ってきたね」
「いやー、タイミング合わせて帰ってきたんだよー」

そんな談笑を少ししていたら、出発する予定の時間になっていた。私たちは車に乗り、予約してある焼き肉屋さんに向かった。


「おー!いいにおい!」

お店の中はお肉のいい匂いでいっぱいで、余計にお腹が空いてしまう程だった。店員さんに席まで案内され、席に座った。

「なにたべようかなー」
「進吾ー、いっぱい食べろよー」
「パパよりたべるから!」
「そうかー、負けないぞー」

そうして何個か注文し、しばらくしたら頼んでいたものが運ばれてきた。

「よーし、たくさん食べるぞー」
「「「いただきまーす」」」

ジュワッと焼いてる音が大きくする。手前にあったお肉を取り、一口食べてみる。

「んー、めっちゃ美味しい」

噛んだ瞬間に柔らかい感覚と肉の旨みが口に広がる。熱々でザ・炭火焼きというような味がする。

「どんどん焼いてくから食えよー」
「はーい!」

旦那はお肉を網の上に置いていった。一応今日の主役のはずが、それを私は忘れてパクパクと食べ進めていた。

1時間程たった頃だろうか。お肉は全部食べきり、皆箸を止めていた。

「今日は久々にたくさん食べたなー、進吾」
「おいしかったー!!」
「それなら良かった」

お会計をして外に出た。外はセミの声が聞こえ、夜にもかかわらず、とても暑かった。

「おいしかったー!ありがとー!」
「いやー、俺食べすぎちゃったかもなー」
「あれだけ食べてればねー」

すると旦那がポケットに手を突っ込み、首をかしげた。

「えーっと、車の鍵はどこだったっけ……?」

それを聞いて一瞬ヒヤッとした。車の鍵を落としたと思った。しかし、よく失くすためこの状況には慣れていた。

「またなくしたのー?」
「いや……さっきまでは持ってたんだけど……」
「どうせ後ろのポケットとかじゃない?」
「あっ、ほんとだ。良く見てるねー」

なんとか鍵を見つけて車のドアを開けた。席に座り、エンジンをかける。そのまま駐車場を出て、無事に家に着いた。先に私たちを降ろして、旦那は車を停めるようだ。私たちは家の扉を開けた。

「よし、そろそろだよ」

進吾に耳打ちで合図を出した。進吾はうなずいて、急いでリビングに隠してあったクラッカーを2つ取ってきた。

「玄関のドアを開けたら鳴らすんだよー?」
「うん!たのしみー!!」

ニコニコしながら2人で旦那が入ってくるまで待っていた。そしてドアに向かって近づいてくる音が聞こえた。

「じゃあ構えてー」

小声で指示を出し、いつでもクラッカーを鳴らせる体勢に構えた。
ドアがガチャっと開いて旦那が半分家に入ってきた。その瞬間にパンと音を鳴らし、カラフルなテープが飛び出てきた。

「うわぁ、ビックリした」

旦那は目を丸くし、いつもより大きめの声で叫んだ。状況が分かっていない様子だったのでネタばらしをすることにした。

「たんじょうびおめでとー!!」
「おぉ、覚えててくれたのか。忘れられてると思ったよー」

ホッとした一息ついた後、笑顔で進吾の頭を撫でる。そしてリビングに移動し、お待ちかねのプレゼントを渡す時がきた。

「はい、これ。いつもありがとう」
「えっ、くれるのか?ありがとー」

ラッピングされた箱を丁寧に剥がし、中身を開けた。

「お、かっけー。ハンカチとキーホルダーじゃん」
「進吾が全部選んだんだよねー?」
「うん。これでかぎ、さがさなくなるね」

旦那はそれを聞いて大きく笑った。息子から心配されるとは思わなかっただろう。

「そーだな。これで探すことはなくなりそうだよ」

旦那は貰ってすぐに鍵をつけ始めた。結構気に入ったのだろう。これ以降、鍵を探すことは"減った"のであった。
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