まだ余命を知らない息子の進吾へ、親から生まれてきた幸せを…

ひらりくるり

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第1章 親から幸せを…

第5話 幸せの違い

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この日はただの平日。進吾は退院後、学校へ復帰しており、今はちょうど3時間目が始まった頃だろう。
私は洗濯物を畳みながらお昼のニュース番組を見ていた。しばらく見ていると、ある母親がインタビューが放送されていた。
"闘病中の娘にできること"
そのような特集がされていた。私は思わず手を止め、ジッと内容を見ていた。

「娘になにをしてあげられるだろうってずっと考えていて……病気に対する不安ばっか考えちゃいますね…」

内容はどれも共感することばかりだった。"何をすれば良いのか"、"余命をどう伝えてあげれば良いのか"、"最期に何を言ってあげれば良いか"……
見ていると、とある発言に目を留めた。

「子供の思ってる幸せと親の考える幸せって、違うのかなって不安になりまして…」
「ほう?具体的にどのような意味なんですか?」
「子供ってまだ未熟ですから、物事の視野が狭いと思うんですよ。でもどれくらい狭いかなんて私たちはわからないじゃないですか?意外に大人びてるところもあるし、子供っぽいところもあるしで良くわからないんですよ。」
「なるほど…?」
「つまり、見ている範囲が狭いからこそ、子供の思う幸せのハードルが低いと思うんですよ。子供にとって見ているものが全てであり、世界ですから…」

最初は何を言ってるのか良くわからなかった。しかし、考えてみると、少しだけ言っていたことが理解できた気もする。1つ心に残ったのが"子供と大人の幸せの違い"
本当にそんなものがあるのか……私としてはどの世代でも幸せと思う基準は共通していて、"自分がしたいことを自由にできる"だと思っている。
子供ならなおさらだ。

「はぁ……なんだかなー」

それ以降は特に言及もなく、スタジオの人たちの意見交換でその特集は終わってしまった。煮え切らない終わり方で、それを見てからは少し心がモヤモヤしている気がした。

ふと進吾の机の上に置いてあったやりたいことノートを見てみることにした。開いてみるとやりたいことが増えていた。

・じゅぎょうさんかんでてをあげる
・うんどうかいのリレーで1いをとる

「授業参観って明日だよね」

カレンダーを確認すると明日は授業参観の予定が入っていた。

「進吾友達とか勉強とか大丈夫かな…」

登校再開をしたときからずっと心配をしていた。新学期が始まって2ヶ月後ぐらいに入院となったため、特に不安に思っていた。

「でも確か来週は友達と遊んでくるって言ってたし、友達はいるのかも」

しかし問題なのが運動会についてだ。

「夏休み明けたら運動会だっけ…10月かー。体調良くなってると良いんだけど…」

病気の影響で体力も落ち、運動もあまりしていないため、これを叶えられるか不安なところだ。リレーで1位を取ることはもちろん簡単ではない。さらに一緒に走る子の速さ次第という運要素も持っている。

そんな不安な気持ちと期待を抱えながら、洗濯物を畳み直した。
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