上 下
4 / 42
第1章 親から幸せを…

第4話 似てるね

しおりを挟む
燦々と照らす太陽に、青い空、そして入道雲がもくもくと存在している。いかにも夏が来ることを感じさせるような景色だ。
「ついたー!どーぶつえん!どーぶつえん!」
そんな休日、私たちは多摩にある動物園にやってきていた。進吾は行きたかった動物園に着いて、絶賛大はしゃぎ中だ。
「1人でどっか行かないでよー」
「はーい!わかってるよ~」
そう言いつつも、ゲートの方へ走っていく。
「おい待て待てー、進吾ー」
それを見て旦那も追いかける。
そんな私はカメラで2人を追いかける。

「はい、いってらっしゃ~い」
係のお姉さんに明るく挨拶をされ、ゲートをくぐり抜ける。その先には木々に囲まれた道、その間を走る列車、そしてツルやガンなどの鳥類の住みかが広がっていた。

「わー!でんしゃだー!」
「危ないから走らないでー…」

子供の無邪気さには驚きと疲労、尊敬すら感じる。大人になるとそこまで元気にはしゃぐことはなくなってきた。

「父さんから離れちゃダメだぞー?迷子になるだろー?」
「はーい!」
「返事だけは良いんだけどなぁ…」

そう思った数時間後…

「あっ、ゾウさんいるよー!進吾ー!」

旦那は私たちよりも先に進んでおり、笑顔でこちらに手を振っている。

「なんで息子よりはしゃいでるのよあの人…」
「わーい!」

旦那のもとへ喜んで駆け寄る。旦那は進吾を肩車し、良く見えるようにしていた。

「流石親子だよね。似てるなー」

先ほど大人ははしゃぐ体力がないと思っていたがすぐに覆された。むしろ息子より楽しんでる気さえしてくるほどだ。私にはそんな体力なく、ゆっくりと2人の元へ歩いていった。 

その後もペリカン、ライオン、キリンを見て回った。すると進吾が突然立ち止まった。

「つかれたー」

進吾は病気の影響により、前よりも疲れやすくなっていた。そのため何度か休憩を取ったり、園内を走る列車に乗ったりしながら回ってきたのだ。

「ここは電車ないからしょうがないよねー」
「じゃあ近くの休憩所で休もうか」

私たちは近くにあった休憩所に行き、イスに座った。そこで旦那はとある看板が目に入り、進吾に問いかけた。

「アイス、食べるか?」
「たべる!」

進吾は普段よりも元気良く返事をした。それもそのはず、アイスクリームは進吾の大好物だからだ。
旦那は返事を聞くや否や、すぐに買いに行った。数分経ち、バニラアイスを3つ持って戻ってきた。

「はい、進吾!」
「ありがとー」

受け取り、パクパクと食べ始める。

「ほい、愛美」

旦那は私にアイスを差し出す。

「私には聞かなかったのに…ありがと」
「どうせ食べるだろ」
「良くわかってるじゃん」

進吾のアイス好きも恐らく私の影響だろう。私が大のアイス好きだということを理解していて聞かなかったのだと察した。

「つめたーい!おいしー!」
「今日は暑いしちょうどいいかもね」

食べ終わると、私たちは列車に乗って他の動物を見に行った。途中旦那がオランウータンにガン見され威嚇されたり、レッサーパンダに癒されたりしていた。気づけばもう夕暮れ。閉園が近くなると、私たちはお土産を選び始めた。

「このゾウさんほしいー!」

進吾が手に取ったのはアフリカゾウのぬいぐるみ。触ってみるともふもふしていてとても癒されるものだった。

「進吾はゾウさん好きだなー。いいぞー買っちゃおうか」
「やったー!ありがとお!」

旦那もノリノリで承諾していた。
すると進吾が私にニヤニヤと笑い、話しかけてきた。

「これ、パパ」
「え?パパ、ハシビロコウ?」

息子曰く似ているらしく、2人でクスクスと笑っていた。それを聞いて気に入ったのか、こっそりハシビロコウのグッズを買っていたことは秘密にしておこう。

私は進吾用にパンダのフォークとスプーン、旦那と私でネコとハシビロコウのコップをそれぞれ買った。きっとこれは1番幸せだった頃の形見になるだろう。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...