まだ余命を知らない息子の進吾へ、親から生まれてきた幸せを…

ひらりくるり

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第1章 親から幸せを…

第2話 やりたいことノート

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翌日の朝、いつも通り進吾の元へ行くと、例のノートを広げていた。ノートには大きな文字でびっしりとやりたいことが書かれていた。

「おはよー、たくさん書いたね?」
「うん!やりたいことたくさんある!」

そう言って、あるゲームの名前を指して意気揚々と話し始める。私はスマホを取り出し、その名前を検索してみた。

「これさいきんのゲームで、みんなであそべるんだよ」
「んー?これは車のゲーム?」
 「そう!くるまにのって1いになるの!」
「あー、この真ん中にいるキャラってパリオとブッパね」

とあるゲーム会社の人気シリーズ、"ハイパーパリオ"のカーレースゲームらしい。恐らくテレビのCMでやっていたのを見たのだろう。

「最近のゲームってすごいね。昔よりも絵がきれいになってる」

数年前まではドット絵だったものが、鮮明になっていることに衝撃を受けた。

「ちょっとノート見させてねー?」
そう言い、ノートを受け取りしっかりと内容を確認してみた。

やりたいこと
・おいしいごはんをたべたい
・ともだちとあそびたい
・どうぶつえんにいく
・おさかなさんをみる
・げーむしたい
・はなびみたい
・せをのばしたい
・がっこうにいく

昨日の夜から朝という短い時間の間にもかかわらず、何個も書かれていた。
進吾はチラッとノートを覗き込み、今度は他の言葉を指した。

「あとはどーぶつえんもいきたい」
「なんのどうぶつさん見たいの?」
「ぞうさん!」
「じゃあ退院したら見に行こうね」

そう言って指切りをし、約束をした。
すると突然、ドアをノックされた。
そこには看護師さんが扉を開けて立っていた。

「三河様、今お時間大丈夫でしょうか?」
「はい、どうしました?」
「お医者さんが呼んでいます」

その瞬間、少し固まってしまった。
次は何を言われるのか不安になった。とある話を聞いたことがある。見た目は元気でも症状は進行していて悪化するなんてことがあるらしい。私はその話が頭によぎってしまった。

「進吾、じゃあ…ちょっと待っててね」
(大丈夫…退院の話かもしれない…もしかしたら余命なんて間違いだったとか……)

そう自分に言いきかせた。
案内された先は医者のいる診察室だった。私はノックをし、扉を開けて入った…
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