繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

文字の大きさ
上 下
132 / 135
呪われの旅仕度編

しおりを挟む
 振り返ると着替えを済ませたアリシアがモニカさんと共に戻ってきた。

「おぉぉっ! パティ君、よく似合ってるじゃない! その格好!」

「えへへへ、カッコイイでしょ。モニカさん」

「うーん、やっぱり一式揃えると印象がグッと変わってくるねー! 町の少年パティ君から、旅の少年パティ君になっちゃった!」

「それは……良くなったの、かな?」

「ん? あっはは! 分かんない! でもーーーー男らしくなったと思うよ?」

 と、自身のアゴに手を当て何やら含みのある笑いを浮かべるモニカさん。

「ーーーーっ⁉︎」

 パティは顔を真っ赤にしてうつむき、己が下唇を噛みつつ笑っている。

 そんな奇妙な行動からパティの心を読み解くに、恐らく一人の男として認められた事は嬉しいが、一人前の男がそのくらいの褒め言葉でへらへら笑うのはおかしいので、自身の下唇を噛んでどうにか静止を掛けようとしたのだが、喜びがどうにも抑えられず口元に漏れてしまい、この度のような奇妙な結果になってしまったのだろうと、俺はなんとなくそう思った。

 いや、

 たぶん当たりだな。

「あっはは! パティ君もそうなんだけど、こっちのアリシアちゃんもよく見てあげて。すっごい可愛いんだから! 私が十代の頃にそっくりなんだから!」

 そう、モニカさんに促され若干の疑問や違和感といったものを感じつつもアリシアを視界に捉える。

 すると、アリシアもアリシアでパティと同じくうつむいており顔を真っ赤にしている。

 恥ずかしさに耐えるアリシアの顔は見ているだけで、ついつい抱きしめてしまいたくなるほどの可愛いさなのだが、ドイルさんの例の手刀《豪快すぎる木こりの手斧ザ・ワイルド》が脳裏にちらつき、何とか思いとどまった。

 視界正面、アリシアを凝視する。

 深い森を想起させる落ち着いた雰囲気のグリーンマント、清潔感のある柔らかいベージュのビスチェ、各所に可愛らしく添えられた幼さを思わせるピンクがアリシアのイメージによく合っている。

「おぉっー! アリシア! よく似合っているよ!」

「そう……ですか? 何だか恥ずかしいです……」

「しかし、なんとなくイメージしていた感じと違うな……。もっと女の子っぽい感じの格好になるものだとばかり思っていたよ」

 俺の発言に対しアリシアは微かな苦笑いを浮かべて、

「町に遊びに行くんじゃないんですから……それに、」

 ディープグリーンのマントはお母さん達が普段から愛用している物でもありますから。と、ちゃんと小声で付け足すアリシア。

 ふむ。エルフ達はディープグリーンのマントを愛用しているのか。

 森の中で、グリーンマントを風になびかせているエルフの姿を想像すると、なんだかもの凄く神秘的で格好いい姿になってしまった。

 絵本に登場するエルフの印象がどうしても前に前に出てきてしまうので、そういう想像をしてしまうのは仕方のない事ではあるが。

 しかし、いつか会えるのなら会ってみたいものだ。

 伝説に語り継がれる奇跡の生命体ーーーーエルフ族。

「わぁ! パティ君、まるでお城の護衛騎士団みたい! それにじろうちゃんのスカーフも素敵!」

「えっへへへ!」

「おっほっほっー!」

「お姉ちゃんも前よりずっと大人っぽく見えて綺麗だよ!」

 それぞれの身なりの変化に嬉しさと恥ずかしさを織り交ぜつつ会話がよくはずんでいる。

 俺はそんな光景を少し離れた場所から見つめるのが好きだ。

 装備品は単に能力値を上げるものでなく、パーティー内の雰囲気まで変える効果がある。

 新しい格好、新しい気持ち、新しい目標。

 それらはパーティー内の行動力を高めてくれる重要なファクターなのだ。

「よーっし! それでは参ろうではないかっ! 心ときめく大冒険へ!」

「「はいっ!」」

 新たな装いになって、俺達は歩き出した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ
ファンタジー
名門貴族家に生まれながらも、妾の子として虐げられ、優秀な兄の下僕扱いだった貴公子ケイは正妻の陰謀によりすべてを奪われ追放されて、貴族からスラム街の最下層まで落ちぶれてしまう。 絶望と貧しさの中で母と共に海に捨てられた彼は、死の寸前、海の底で出会った謎のサラマンダーの魔法により過去へと回帰する。 回帰の目的は二つ。 一つ、母を二度と惨めに死なせない。 二つ、海の底で発現させた勇者の力を覚醒させ、サラマンダーの望む海底神殿の浄化を行うこと。 回帰魔法を使って時を巻き戻したサラマンダー・ピアディを相棒として、今度こそ、不幸の連鎖を断ち切るために── そして母を救い、今度こそ自分自身の人生を生きるために、ケイは人生をやり直す。 第一部、完結まで予約投稿済み 76000万字ぐらい ꒰( ˙𐃷˙ )꒱ ワレダイカツヤクナノダ~♪

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...