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呪われの旅仕度編
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「これでよしっ、と」
俺は購入したばかりの防具をパティに装着してあげた。
パティが選んできた防具品はどれも軽さを重視した軽装備ばかりで、ちゃんと自身の最大の武器を理解した上でのチョイスと言えた。
そしてその防具品はどうやらシリーズもののようで、全体的に一貫性が見てとれるデザインとなっていた。
《水龍騎士》という防具の名前からして、そのまま水龍様をモチーフにした防具だろう。
ーーーー水龍様。
遥か昔、天空より現れし水龍様は当時干ばつで死に絶えていたベネツィの土地に大雨を降らせ死に絶えた大地に命を吹き込んだ。大雨はしばらくの間降り続けこの土地に大きな湖を創ると、水龍様はそのまま湖の奥深くに潜っていき二度と出て来なかったという。なので水龍様は今もなお湖の奥深くに隠れ住んで二度とこの土地が干上がらないように見守ってくれていると信じられている。
なのでベネツィの町中をよく見てみると水路の側には小さな木製の祠がいくつもあって、そこには水龍様を象った石の彫刻が祀られている。町の人々は毎日、水路から汲み上げたお水を水龍様の彫刻にかけては手を合わせ感謝の祈りを捧げている。
今もなお、ベネツィの人々から厚く信仰されている守り神、水龍様。
なので、パティが身に纏う装備品のデザインはあくまで一般的な想像上の水龍様をイメージしたもので、青と緑を基調としたカラーリングで統一されており、各パーツの大部分には水龍様の鱗のようなデザインがうっすらと施されている。また、籠手のデザインは水龍様の頭部をモチーフとしていて、鋭い目つきのデザインがやはり格好いい仕上がりとなっている。水龍様に付き従う孤高の騎士を連想させるカラーリングとデザインのためパティのような子供にはドストライクな一品なのだろう。また、胸当てに刻まれた流線的なタッチが特徴的な水龍様の模様は、大人から見ても普通に格好いいと思えた。
「パティ、こっちにおいで。鏡見てごらん」
「ーーーーうん」
照れ笑いを必死に押し殺しながら、パティは小走りで鏡の前へと歩を進める。
俺は鏡の前に立ってパティに手招きし、パティが鏡の前にスタンバイ出来たことを確認してから、デイルさんの調子で言ってみる。
「ベネツィを遥かなる太古の時代より守り続ける偉大な水龍様。そんな水龍様に仕えるは弱きを助ける誇り高き水龍騎士。悠久の時を経てもなお脈々と受け継がれてきた騎士道を今、この地に立ち受け継ごうとする小さき少年。それでは紹介します! ベネツィが誇る、剣術の天才、小さき水龍騎士パティ君でーす!」
俺はゆっくりと鏡の前から移動して、パティのすぐ横に立った。
「うわぁ……」
「格好いいじゃないか。よく似合ってるよ、パティ」
「すごい、本当の騎士みたいだ……」
パティは鏡の前でくるくると回りながら、自身の全身を隅々までよく観察している。
また、定期的にガッツポーズなのか決めポーズなのかをする辺りが案外、可愛かったりする。
そして忘れてはいけない。
ペット用高級スカーフなる物を首に巻いたじろうは野良猫感が一掃され、どころかお金持ちの家にいそうな雰囲気が漂う容姿となった。
また、やはりポジションは相変わらずパティの頭の上なので、側から見ると水龍騎士を操縦する何だか高級そうな猫感はどうやっても否めない。
パティ同様、じろうもじろうで少し興奮気味に鏡に映る自分の姿を見ていて、いつもより鼻息が荒くなっている気がする。
そんな愛らしい二人の姿を眺めていると、後ろから抑揚の効いた元気な声が響いた。
「おんまたせー!」
突如、店内に響き渡った声に少しドキリとし、俺達は声のした方を振り返る。
俺は購入したばかりの防具をパティに装着してあげた。
パティが選んできた防具品はどれも軽さを重視した軽装備ばかりで、ちゃんと自身の最大の武器を理解した上でのチョイスと言えた。
そしてその防具品はどうやらシリーズもののようで、全体的に一貫性が見てとれるデザインとなっていた。
《水龍騎士》という防具の名前からして、そのまま水龍様をモチーフにした防具だろう。
ーーーー水龍様。
遥か昔、天空より現れし水龍様は当時干ばつで死に絶えていたベネツィの土地に大雨を降らせ死に絶えた大地に命を吹き込んだ。大雨はしばらくの間降り続けこの土地に大きな湖を創ると、水龍様はそのまま湖の奥深くに潜っていき二度と出て来なかったという。なので水龍様は今もなお湖の奥深くに隠れ住んで二度とこの土地が干上がらないように見守ってくれていると信じられている。
なのでベネツィの町中をよく見てみると水路の側には小さな木製の祠がいくつもあって、そこには水龍様を象った石の彫刻が祀られている。町の人々は毎日、水路から汲み上げたお水を水龍様の彫刻にかけては手を合わせ感謝の祈りを捧げている。
今もなお、ベネツィの人々から厚く信仰されている守り神、水龍様。
なので、パティが身に纏う装備品のデザインはあくまで一般的な想像上の水龍様をイメージしたもので、青と緑を基調としたカラーリングで統一されており、各パーツの大部分には水龍様の鱗のようなデザインがうっすらと施されている。また、籠手のデザインは水龍様の頭部をモチーフとしていて、鋭い目つきのデザインがやはり格好いい仕上がりとなっている。水龍様に付き従う孤高の騎士を連想させるカラーリングとデザインのためパティのような子供にはドストライクな一品なのだろう。また、胸当てに刻まれた流線的なタッチが特徴的な水龍様の模様は、大人から見ても普通に格好いいと思えた。
「パティ、こっちにおいで。鏡見てごらん」
「ーーーーうん」
照れ笑いを必死に押し殺しながら、パティは小走りで鏡の前へと歩を進める。
俺は鏡の前に立ってパティに手招きし、パティが鏡の前にスタンバイ出来たことを確認してから、デイルさんの調子で言ってみる。
「ベネツィを遥かなる太古の時代より守り続ける偉大な水龍様。そんな水龍様に仕えるは弱きを助ける誇り高き水龍騎士。悠久の時を経てもなお脈々と受け継がれてきた騎士道を今、この地に立ち受け継ごうとする小さき少年。それでは紹介します! ベネツィが誇る、剣術の天才、小さき水龍騎士パティ君でーす!」
俺はゆっくりと鏡の前から移動して、パティのすぐ横に立った。
「うわぁ……」
「格好いいじゃないか。よく似合ってるよ、パティ」
「すごい、本当の騎士みたいだ……」
パティは鏡の前でくるくると回りながら、自身の全身を隅々までよく観察している。
また、定期的にガッツポーズなのか決めポーズなのかをする辺りが案外、可愛かったりする。
そして忘れてはいけない。
ペット用高級スカーフなる物を首に巻いたじろうは野良猫感が一掃され、どころかお金持ちの家にいそうな雰囲気が漂う容姿となった。
また、やはりポジションは相変わらずパティの頭の上なので、側から見ると水龍騎士を操縦する何だか高級そうな猫感はどうやっても否めない。
パティ同様、じろうもじろうで少し興奮気味に鏡に映る自分の姿を見ていて、いつもより鼻息が荒くなっている気がする。
そんな愛らしい二人の姿を眺めていると、後ろから抑揚の効いた元気な声が響いた。
「おんまたせー!」
突如、店内に響き渡った声に少しドキリとし、俺達は声のした方を振り返る。
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