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呪われの旅仕度編
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新しい風が轟々と吹き荒れる雰囲気のお店ではしゃぐ若者二人。
おじさん、と言うには流石に時期尚早だとは思うが、タケル二十歳(お兄さん)は孤立してしまった。
別段、このお店の雰囲気が嫌いだとか落ち着かないとかって訳ではないんだけれど、さっきアリシアも言ったように装備品って地味で暗いっていうのが、やはり俺の中のイメージであってどうにもこの店に並ぶ明るくて、華やかで、若者風な印象が強い装備品を身に纏うのはどうにも憚られるものがある。
どうしても人目が気になっちゃってしまいそうである。
なので、というか。まあ、俺の装備品に関してはこの先で手に入る宝箱の中身などで適当に整えるとして、みんなの装備品は一流の物を揃えてあげなくては。
だってみんなは俺と違って戦闘経験が乏しい、村人や町人といった一般人なのだから。戦闘能力において不備があるのは当たり前なのだから、それを補う装備品は一流の物を揃えるのが当たり前なのだ。
それでようやく、イーブンと言ったところか。
だから見た目重視ではなく、装備品が持つや機能性などを重視して選んでくれるとありがたいのだが……。
パティがキラキラした目でバスターソードを引きずって来たらどうしよう……。『アニキ! 僕、コレがいい! コレを振り回せるように毎日頑張るから!』とか、
アリシアが、『コレとコレ、どっちが私に似合ってますか? タケルさん的には……その……どっちの方が、好き……ですか……?』とか言われてしまったのでは、あまりの嬉しさと緊張が相まって気を失ってしまいそうである。
まあ、後半の方のセリフは俺の願いが強烈に、そして鮮明に反映されている気がするが……まあ、気のせいだろう。
とにかく、
そのような事を言われてしまったら、いくら俺だって装備品は憧れやオシャレ感覚でするものじゃなく、戦闘を最重要視して選ぶように。なんて言うのは結構辛いところだぞ。
何より、その後の場の空気感が心配でならない。そんな状態から二人を笑顔にするのは至難の業だ。きっと。
さて、どう上手く誘導したものか……。
「アリシア、何時間もお店の中にいちゃあ流石にご迷惑だよ? お買い物はまだまだあるんだし、他のお店の物をじっくりと見てからでもいいんじゃない?」
「そうですね……分かりました。じゃあ、これに決めます!」
と、アリシアが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。
話……聞いてた? この子。
「あ……あの……アリシア? まだお店は他にも……」
「いえ! 私もベネツィの町を隅々まで知ってる訳じゃないですけど、このお店の商品は他よりも群を抜いて可愛いです! それは私が保証します!」
「あ……いや……だから。可愛いとか、そういうのじゃあ……」
何とか俺の気持ちを分かってもらおうと言葉を探すが、状況に即した言葉が一向に見つからない。
深い深い言葉の迷宮に迷い込みつつある俺を、やや上目遣いの幼い笑顔でアリシアは見つめる。
……可愛いじゃねぇか。
もういっその事、可愛いならどんな装備品でもいい! なんて。とんでもない事を言い出しそうになる自分を必死に抑え込む。
バカな考えを理性でぐるぐるに包んで喉の奥へと押し込む。
「ア、ニ、キ!」
と、突如として背後から元気なパティの声が俺を呼ぶ。
若干肩をびくつかせ、慎重に背後を振り返る。
パティが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。
「…………」
パティに関してはどんな装備品を買うべきか、何を重視して装備品をチョイスするべきか事前に話してなかったから仕方がない事なのだが、こちらもこちらで安定のフルセットで来やがったか。
だがまあ、フルセットとは言ったがパティが両手に持つ商品一式を見るに例のバスターソードは含まれていないようなので一安心だ。
あんな重い大剣をパティが持ってしまったら、あの子の良さが光らなくなってしまう。
パティの、あの子の最大の武器は、その持ち前のスピードなのだ。
「……ん?」
と、そこで不意に気付く。
ちらりアリシアの方へ視線を送り、両手に抱えている商品をもう一度よくよく見てみると、こちらもこちらで武器類が含まれていない。
まあ、アリシアにはあの鞭があるので武器はこれ以上必要ではないのだが、しかしそれでも杖の一本ぐらいは所持していてもらいたいところではある。
アリシアは猛獣使いではなく一応、魔法使いのタイプのようなので。
きっとその方が安全に戦闘に取り組めると思う。
「あ……」
さらに気付く、
と言うか思い出す。
魔界一の刀匠に依頼した武器の事を。
おじさん、と言うには流石に時期尚早だとは思うが、タケル二十歳(お兄さん)は孤立してしまった。
別段、このお店の雰囲気が嫌いだとか落ち着かないとかって訳ではないんだけれど、さっきアリシアも言ったように装備品って地味で暗いっていうのが、やはり俺の中のイメージであってどうにもこの店に並ぶ明るくて、華やかで、若者風な印象が強い装備品を身に纏うのはどうにも憚られるものがある。
どうしても人目が気になっちゃってしまいそうである。
なので、というか。まあ、俺の装備品に関してはこの先で手に入る宝箱の中身などで適当に整えるとして、みんなの装備品は一流の物を揃えてあげなくては。
だってみんなは俺と違って戦闘経験が乏しい、村人や町人といった一般人なのだから。戦闘能力において不備があるのは当たり前なのだから、それを補う装備品は一流の物を揃えるのが当たり前なのだ。
それでようやく、イーブンと言ったところか。
だから見た目重視ではなく、装備品が持つや機能性などを重視して選んでくれるとありがたいのだが……。
パティがキラキラした目でバスターソードを引きずって来たらどうしよう……。『アニキ! 僕、コレがいい! コレを振り回せるように毎日頑張るから!』とか、
アリシアが、『コレとコレ、どっちが私に似合ってますか? タケルさん的には……その……どっちの方が、好き……ですか……?』とか言われてしまったのでは、あまりの嬉しさと緊張が相まって気を失ってしまいそうである。
まあ、後半の方のセリフは俺の願いが強烈に、そして鮮明に反映されている気がするが……まあ、気のせいだろう。
とにかく、
そのような事を言われてしまったら、いくら俺だって装備品は憧れやオシャレ感覚でするものじゃなく、戦闘を最重要視して選ぶように。なんて言うのは結構辛いところだぞ。
何より、その後の場の空気感が心配でならない。そんな状態から二人を笑顔にするのは至難の業だ。きっと。
さて、どう上手く誘導したものか……。
「アリシア、何時間もお店の中にいちゃあ流石にご迷惑だよ? お買い物はまだまだあるんだし、他のお店の物をじっくりと見てからでもいいんじゃない?」
「そうですね……分かりました。じゃあ、これに決めます!」
と、アリシアが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。
話……聞いてた? この子。
「あ……あの……アリシア? まだお店は他にも……」
「いえ! 私もベネツィの町を隅々まで知ってる訳じゃないですけど、このお店の商品は他よりも群を抜いて可愛いです! それは私が保証します!」
「あ……いや……だから。可愛いとか、そういうのじゃあ……」
何とか俺の気持ちを分かってもらおうと言葉を探すが、状況に即した言葉が一向に見つからない。
深い深い言葉の迷宮に迷い込みつつある俺を、やや上目遣いの幼い笑顔でアリシアは見つめる。
……可愛いじゃねぇか。
もういっその事、可愛いならどんな装備品でもいい! なんて。とんでもない事を言い出しそうになる自分を必死に抑え込む。
バカな考えを理性でぐるぐるに包んで喉の奥へと押し込む。
「ア、ニ、キ!」
と、突如として背後から元気なパティの声が俺を呼ぶ。
若干肩をびくつかせ、慎重に背後を振り返る。
パティが俺の方へ差し出した品々。数多くの装備品。上から下までフルセット。
「…………」
パティに関してはどんな装備品を買うべきか、何を重視して装備品をチョイスするべきか事前に話してなかったから仕方がない事なのだが、こちらもこちらで安定のフルセットで来やがったか。
だがまあ、フルセットとは言ったがパティが両手に持つ商品一式を見るに例のバスターソードは含まれていないようなので一安心だ。
あんな重い大剣をパティが持ってしまったら、あの子の良さが光らなくなってしまう。
パティの、あの子の最大の武器は、その持ち前のスピードなのだ。
「……ん?」
と、そこで不意に気付く。
ちらりアリシアの方へ視線を送り、両手に抱えている商品をもう一度よくよく見てみると、こちらもこちらで武器類が含まれていない。
まあ、アリシアにはあの鞭があるので武器はこれ以上必要ではないのだが、しかしそれでも杖の一本ぐらいは所持していてもらいたいところではある。
アリシアは猛獣使いではなく一応、魔法使いのタイプのようなので。
きっとその方が安全に戦闘に取り組めると思う。
「あ……」
さらに気付く、
と言うか思い出す。
魔界一の刀匠に依頼した武器の事を。
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