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呪われの旅仕度編
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店内ではバスターソード談義が続く。
「モニカさんは片刃と両刃どっちが好みでしたっけ?」
「私はーーーーまあ、特にこだわりがある訳じゃないけれど、やっぱり片刃かな。一太刀の斬撃で殲滅したいじゃない? 峰に体重乗せてガンガン押して押してさ、どんなぶっとい肉塊だって一刀両断よ。だから、刺突に優れた両刃は私には必要ないと言えばないんだよね。それにーーーー」
モニカさんは拳を顔の前で掲げて、かなり得意げな表情で、
「それがバスターソー道って奴でしょう?」
「はっはは! バスタードさんの決め台詞! さっすがモニカさん、わかってるー!」
週刊武具ブック、バスターソー道、バスタードさんなる謎の人物。
わからん。
全くわからん。
全く会話についていけねぇ……。
長年勇者やってりゃ嫌でも耳にしそうな名前ではあるけれど、これまで一度たりとも聞いた事のないワードだ。
そうなると、今まで長年勇者として培ってきた俺の経験知識も実は大したことのない浅いものなのか?
ふむ。
考えてみれば、エルフの存在は知っていたが見たことはなかったし、ましてハーフエルフの存在に関して言えば予想だにしなかった俺である。
数百年、この世界で勇者としてやってきたくらいの俺がこの世界の全てを知っているような気になるのは、あまりにもおこがましい話か。
この世界はまだまだ俺の知らない物事で溢れかえっているのだ。
そう考えれば、未だ見ぬ未知を知るための勇者生活というのも……無いな。
未知な事には興味があるが、その時は、そうだなーーーートレジャーハンターとかがいいかな。
《1回目のトレジャーハンター転生~そしてお宝は未だに見つからない》
せめて見つけさせてくれ……。
いつまで経ってもお宝を見つける事も出来ずに、様々なトラップに苦しめられるような気がしてならない名前である。
考えるだけでも憂うつになってしまう。
恐ろしい未来予想図から逃げるように俺はアリシアに助けを求めてちらりと視線を送ると、つい先ほどまでいた場所にアリシアの姿は無く、入り口から入って右側の防具品売り場辺りで何やら物色している。
その後ろ姿を見るに、何やら上機嫌そうである。
「やっぱり、ファーストインパクトって大事ですよねーーーー」
「刀身は貫通タイプのものでないと、インパクトの際の手に伝わる感触が分散されてぶった斬った感がーーーー」
「うんうん、分かります! 実際にぶった斬った事はないけどソードの構造上、そうなる筈ですもん! あと切り返しの時のーーーー」
こちらは相変わらずの盛り上がりをみせているし、パティの頭の上のじろうも入店後二分経ったあたりから余裕の熟睡っぷりである。それに俺も話に入れて貰えそうに無いので、ここは諦めてアリシアの方へと行ってみる事にする。
「アリシアー? 何か気になるものはあったかい?」
「全部気になりますっ!」
「ぜ……全部とは……?」
なんだ、なんだ? パティに続いてアリシアの様子も変だぞ。
「だってタケルさん、見てくださいよコレ! このチュニック。花柄レースパフ袖で可愛くて、ドルマンスリーブになってるから動きやすくて、色も私の好きなミドリとピンクで、しかも今なら十パーセント引きなんですよ⁉︎ それにほら! こっちのローブなんて落ち着いたアンティーク調なのにも関わらず、全然古臭くなくてむしろ新しささえ感じてしまいます。特にこの、胸の所に引かれたラインとワンポイントのマークが全体の印象をグッと締めていて、女性のみならず男性からも高い人気が出そうですねー! 私、装備品ってなんだか地味で暗い物だってイメージしてたんですけど違ったんですね。あれもこれもみんな、華やかで可愛くってスタイリッシュで驚きました! いやぁ、それにしても流石にこんなに沢山あると目移りしちゃって困りますねー……あ! あのスカート可愛い! あ! そっちのバックも丸くて大きくて可愛い! うわぁ、うわぁ……可愛いなぁ、可愛いなぁ。私、何時間でもここにいられる!」
若い子達はみんなお買い物が好きなのである。
楽しそうでなによりなのである。
いや、本当。
「モニカさんは片刃と両刃どっちが好みでしたっけ?」
「私はーーーーまあ、特にこだわりがある訳じゃないけれど、やっぱり片刃かな。一太刀の斬撃で殲滅したいじゃない? 峰に体重乗せてガンガン押して押してさ、どんなぶっとい肉塊だって一刀両断よ。だから、刺突に優れた両刃は私には必要ないと言えばないんだよね。それにーーーー」
モニカさんは拳を顔の前で掲げて、かなり得意げな表情で、
「それがバスターソー道って奴でしょう?」
「はっはは! バスタードさんの決め台詞! さっすがモニカさん、わかってるー!」
週刊武具ブック、バスターソー道、バスタードさんなる謎の人物。
わからん。
全くわからん。
全く会話についていけねぇ……。
長年勇者やってりゃ嫌でも耳にしそうな名前ではあるけれど、これまで一度たりとも聞いた事のないワードだ。
そうなると、今まで長年勇者として培ってきた俺の経験知識も実は大したことのない浅いものなのか?
ふむ。
考えてみれば、エルフの存在は知っていたが見たことはなかったし、ましてハーフエルフの存在に関して言えば予想だにしなかった俺である。
数百年、この世界で勇者としてやってきたくらいの俺がこの世界の全てを知っているような気になるのは、あまりにもおこがましい話か。
この世界はまだまだ俺の知らない物事で溢れかえっているのだ。
そう考えれば、未だ見ぬ未知を知るための勇者生活というのも……無いな。
未知な事には興味があるが、その時は、そうだなーーーートレジャーハンターとかがいいかな。
《1回目のトレジャーハンター転生~そしてお宝は未だに見つからない》
せめて見つけさせてくれ……。
いつまで経ってもお宝を見つける事も出来ずに、様々なトラップに苦しめられるような気がしてならない名前である。
考えるだけでも憂うつになってしまう。
恐ろしい未来予想図から逃げるように俺はアリシアに助けを求めてちらりと視線を送ると、つい先ほどまでいた場所にアリシアの姿は無く、入り口から入って右側の防具品売り場辺りで何やら物色している。
その後ろ姿を見るに、何やら上機嫌そうである。
「やっぱり、ファーストインパクトって大事ですよねーーーー」
「刀身は貫通タイプのものでないと、インパクトの際の手に伝わる感触が分散されてぶった斬った感がーーーー」
「うんうん、分かります! 実際にぶった斬った事はないけどソードの構造上、そうなる筈ですもん! あと切り返しの時のーーーー」
こちらは相変わらずの盛り上がりをみせているし、パティの頭の上のじろうも入店後二分経ったあたりから余裕の熟睡っぷりである。それに俺も話に入れて貰えそうに無いので、ここは諦めてアリシアの方へと行ってみる事にする。
「アリシアー? 何か気になるものはあったかい?」
「全部気になりますっ!」
「ぜ……全部とは……?」
なんだ、なんだ? パティに続いてアリシアの様子も変だぞ。
「だってタケルさん、見てくださいよコレ! このチュニック。花柄レースパフ袖で可愛くて、ドルマンスリーブになってるから動きやすくて、色も私の好きなミドリとピンクで、しかも今なら十パーセント引きなんですよ⁉︎ それにほら! こっちのローブなんて落ち着いたアンティーク調なのにも関わらず、全然古臭くなくてむしろ新しささえ感じてしまいます。特にこの、胸の所に引かれたラインとワンポイントのマークが全体の印象をグッと締めていて、女性のみならず男性からも高い人気が出そうですねー! 私、装備品ってなんだか地味で暗い物だってイメージしてたんですけど違ったんですね。あれもこれもみんな、華やかで可愛くってスタイリッシュで驚きました! いやぁ、それにしても流石にこんなに沢山あると目移りしちゃって困りますねー……あ! あのスカート可愛い! あ! そっちのバックも丸くて大きくて可愛い! うわぁ、うわぁ……可愛いなぁ、可愛いなぁ。私、何時間でもここにいられる!」
若い子達はみんなお買い物が好きなのである。
楽しそうでなによりなのである。
いや、本当。
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