繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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呪われの旅仕度編

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 パーティー内になんとも言えない悲壮感が漂う中、俺達は当初の目的であるパティの行きつけ(ではないと思うが)の武具屋へと来ていた。

 三番街の一角、パティの通う剣術道場から二番街、一番街を挟んだ直線上の辺り、カルロス城にでかでかと設置された時計塔で言えばちょうど十二と六の位置関係か。
 
 そこには、ぱっと見ではとても武具屋に見えない店構えの武具屋があった。

 真新しく、小綺麗で、武具屋独特の物騒な雰囲気がなく、ムダに清潔感さえ感じる店構え。だが、正面入口の少し上の壁に取り付けられた鉄製の看板にはデザインこそ斬新な感じではあるが、しっかりと剣が二本バツ印に交差され、交差する剣の中央には盾が描かれているので、どうにか武具屋だと判断する事が出来る。

 パティは小走りで店に近寄ると、店を指差しながら嬉々とした笑顔ではしゃぐ。

「ここ、ここ! ここだよ! 早く、早く!」

 幼い子供のようにはしゃぐパティの姿に俺とアリシアは自然と目が合って、同時に呆れ笑いを浮かべる。

 俺とアリシアも小走りでパティに続き、店内に入る。

「うわぁ、うわぁ! カッコイイなぁ。あっ! 新作出てる! すご……何この刀身⁉︎ 虹色だよ⁉︎ レインボーソードって名前なのかな⁉︎ うははは!」

 店先にいる時よりも、パティはかなりはしゃぎ回っている。

 いささかテンションが上がりすぎていて、子供といえど普通に心配になってしまう。

「……ん?」

 と、そこで唐突にある事を思い出した。

 そういえば数時間前、パティは武器関係の事は全然詳しくないとか言っていた気がするが……俺の気のせいだったか?

「うわっ! 出たよ、バスターソード・タイプⅣ! 前作のタイプⅢは行き過ぎた軽量化による重量不足で、極端に攻撃の際の重量感、つまりは叩き斬るような感覚が著しく損なわれたって週刊武具ブックに書いてあったから、次作は材料を軽金属のチタンから重金属のモリブデン辺りに変更して重量を増してくるとは思っていたけれどやっぱり増やしてきたかぁー! しかも何気に両刃に戻ってるし。でも、刀身に刻まれたこの模様はすっごいお洒落でカッコイイな。あーあ……このまま計量化が進めば子供の僕でも振り回せるかなーって思ってたんだけど残念だよ……ぶった斬り無双乱舞は大人になってからのお楽しみかな、やっぱり……」

 パティはガラスケースの中に並べられた武器を食い入るように見つめ、肩を落としている。

「…………」

 やっぱり、誰がどう聞いても武具に詳しいとしか思えないが……。

 と言うかそれ以上に、武具が好きで好きでたまらない! というパティの気持ちがひしひしと伝わってくる。

 そして何より、ぶった斬り無双乱舞って……今、道場で教わっている流儀とはかなり異なる戦闘方のようだが……。

 まあ、でっかい剣振り回して戦ったらそりゃ気持ちよさそうだけれど。

 ふむ。

 次の転生時はバスターソード乱舞で行ってみるかな?

 いやいや! 待て自分! 何で自然な流れで101回目も勇者やろうとしているんだ。バスターソードに引っ張られ過ぎだろう。

 いかんいかん。気をしっかりと引き締めないと。

 それはそうと、パティはいったいどうしてしまったのだろう。

 今現在の保護者として普通に心配になる状況である。

 何か特定の物事にもの凄い興味や集中力を見せるのは子供特有というか、そう珍しい事ではないのだけれど、パティのコレは他の子達とは一線を画しているように感じてしまう。

 俺の気のせいならいいんだけど。

 と、その時。店内の天井から吊り下げられた薄手の白い布がふわりと持ち上げられ、布の奥から細身の長身な女性が出てきた。

「あら、パティちゃん。いらっしゃい!」

 長身な女性の呼び掛けにパティはすぐさま、声のした方へと視線を投げる。

「あ、モニカさん! こんにちは!」

 モニカさんと呼ばれた女性は活発そうな笑顔でパティに近づき、ガラスケースへと視線を落とす。

「あー、バスターソード・タイプⅣね。Ⅲの時より約八キロ弱くらい重くなっているから、パティちゃんのご希望にはそぐわないかな? だからどちらかと言えば、私の希望通りになったって事かな? と言っても、完璧に私の希望通りになった訳じゃない。私の希望へと傾いただけ。私の中ではバスターソードはタイプⅠが一番好みかな。重くて、荒々しくて。ぶった斬る! って、言葉がしっくりくる。そんなタイプⅠの切れ味をとことん落として、錆だらけのギザギザ状態にして、斬ると言うよりも、! って感じが私の希望のドスライクなんだけどね!」

 ガラスケース越しに何だか猟奇的な話が展開されだしたのだが、大丈夫なのであろうか。




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