繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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ベネツィ大食い列伝

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「どうしたのでしょう! 何が起こったのでしょう! いったいどうなるのでしょう! 配膳スタッフと選手達が広場中央にて大乱闘を巻き起こしているー! いや、違う……これは、これはぁぁぁ! 配膳スタッフが配ろうとしている揚げたての揚げ物を待ち兼ねた選手達が我先にと奪い取ろうとしているぅぅぅ!」

「なっはははは! なんだなんだ、ワイルドじゃねぇかよおい。俺もちくっと混ざってこようかな」

「まさかの出来事に配膳スタッフは揚げ物を奪われまいと必死になって選手達の荒波を躱して走り抜けていくぅぅぅ! 配膳スタッフの華麗なフットワークで置き去りにされた選手達は後を追いかける者と特設キッチンに向かう者の二手に分かれた模様です! と、私ここでようやく気付いたんですが配膳スタッフも必死になって躱さず、ここは素直に揚げ物を渡せば済む話なのではないでしょうか? これについてはどうお思いですか? ドイルさん」

「まあ、あんだけ必死に奪いにくれば誰でも逃げるわな! なっはははは!」

「なるほど。つまりあの行動はごく自然な正当防衛であると、そういう事ですね?」

「おお。よほどワイルドな奴じゃなきゃ、正面きって向かっていかねぇだろうな!」

「ふむ、達見です。さて、特設キッチンへと向かった選手、あれは工事現場で働く筋骨隆々お父さんチームですね。配られる揚げ物に脇目もふらずキッチンに向かっていったい何をすると言うのでしょうか? と、ここで実況席にも揚げ物が届けられましたので私達も試食したいと思います。では頂きましょう、ドイルさん」

「…………」

「…………」

「うん! 柔らかくしっとりとした豚肉の旨味がたまりませんね! 程よくカットされた脂身が口の中でとろけて優しい脂の甘みが口いっぱいに広がります! そしてその上で全くしつこく無く、あっさりとして何枚でも食べる事が出来そうです。私、今日家族に買って帰りたいと思います。ドイルさんはいかがでしたか?」

「うんー。まあ、食べ慣れたいつもの味だわな。しかし中に入ってたのはあれ、何なんだろうな? 歯応え的に餅だと思うんだが、ガキの頃からしょっちゅう食ってるけど未だに分かりゃしねぇ。まあ、具材がなんだか分からねえようにわざとああやって衣で包んで作ってるんだろうけどな。具材の正体がなんだか分かっちまったら店に行く必要なくなっちまうもんな! なっははははは!」

「……はい。えー、予選の状況はいかがでしょう。おっと、特設キッチンへと向かっていた筋骨隆々お父さんチームがキッチンの中へと入っていきましたが、いったい何をするつもりなのでしょうか。フライヤーを取り囲むようにして三人の屈強な男達が並びましたが……あーっと! 何という事なのでしょう! 信じられません! 筋骨隆々お父さんチームがフライヤーの中に手を突っ込んだぁぁぁ! そのまま油の中に沈む揚げ物を鷲掴みにして無理矢理に産ぶ声をあげさせーーーーだぁぁぁっとぉぉぉ! これは、産ぶ声では無い! 悲鳴だ! お父さんチームが断末魔の叫びを上げ始めたぁぁぁ! 誰もが予想していた事態に陥ってしまいました! いくら鍛え上げた筋肉があれども、煮えたぎる油は熱かったぁぁぁ! 手元に届けられる前に自ら取りに行くというスタンスは良かったが、最後の詰めを誤ってしまったようです。お父さんチームは控えていた医療スタッフによって手当てを受けます。これはもう続行不可能でしょうか。ドイルさん。筋骨隆々お父さんチームですが、かなりのワイルドっぷりだったんじゃないでしょうか?」

「あれはワイルドじゃなくて、ただの無謀だな。ただ闇雲に危険に身を投じればいいってもんじゃねえんだ。男らしく、奥ゆかしく、大胆じゃなきゃダメなのよ。そこのさじ加減がプロと素人じゃ雲泥の差なんだろうな。なっははははは!」

「……そうですか。さあ、波乱に満ちた大食い大会その予選。今後どんな展開になって行くのでしょうか⁉︎」





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