繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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ベネツィ大食い列伝

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「さ……さあー! 始まりました! ベネツィ大食い大会、その記念すべき第一回大会予選であります。特別町長たるカルロスちゃんの言葉で突如始まった予選ですが、選手、スタッフ共に大混乱で一番街大広場はまさに地獄絵図と化しています! 引き続き実況は私、ベネツィ護衛騎士団副団長デイルが務めさせていただきます。よろしくお願い致します。そして私の隣には今大会の解説をしてくださる、普段は木こり業を営んでおりますドイルさんが来てくれています。ドイルさん、今日はよろしくお願いします!」

「おぉよ。任せときな!」

「ここでまず、なぜドイルさんが今回コメンテーターに選ばれたのかと言いますと、この度の大食い大会の事の始まりを説明しなければなりません。それは特別町長カルロスちゃんが数十年前に見た、肉塊に食らいつく食欲旺盛な一人の子供の姿をつい先日、突然思い出したのが事の始まりであります。あの子供のように皆、元気にお腹いっぱいご飯を食べて笑顔で毎日を過ごせたらどれだけ素晴らしい事か、皆もぜひそうであって欲しいとの願いを込めて開催されたのが今大会という訳であります。そして、あの子供のイメージキャラクター的存在としてお越しいただいたのが、そのあまりのワイルドさが巷でも有名なドイルさんという訳であります。ドイルさんはその、謎の少年については何かご存知なのでしょうか? キーワードとしては肉塊を食べていたそうですが……」

「俺がガキの時は皆、肉塊を食ってたからな一人一個が当たり前だったっけ……。男も女も皆一人一個肉塊を手に持って町中駆け回っていたよ。あの頃はそんな時代だった……」

「なるほど。ではその時代の子供は皆そうであったから、ドイルさんとしてはいったいどこの誰が、あの謎の少年なのかは皆目見当がつかない、と言ったところな訳ですね?」

「ああ、全くもってその通りだ。今回コメンテーターなんて大層な役どころを任されてはいるが、その謎の少年については気の利いたコメントの一つも出来そうにない。いつもはワイルド、ワイルドと持て囃されてはいるが、今回ばかりは知識の少ない半端者の謗りを免れねぇな。ったく、さっそく恥かいちまったぜーーーーったくよぉ!」

「そうですか。カルロスちゃんが目撃した謎の少年の正体はもはや掴むことは出来そうにありませんね……残念ですーーーーあーっとぉ! テキーラ従業員が転倒してしまいましたぁ! これで何度目の転倒でしょうか! 安全のため、ぜひとも落ち着いた行動を心がけて貰いたいものです。戻りまして、さて……ドイルさん。今回の大食い大会予選なんですが、どうでしょう? 勝敗を分けるポイントはどこにあるとお思いでしょうか?」

「ふむ。今回は大食い対決という事で選手達の顔ぶれもやっぱり男達が大半を占めてるようだからな、どれだけ男らしくワイルドに振る舞えるのかが重要になってくるわな、やっぱ。あ、あと女達も侮れねぇ。あの細い身体のどこに詰め込みやがったんだってくらいに食いまくる時があるからな、男達も油断してると足元すくわれるぜ? 女の女らしさ、女版ワイルドってところか……」

「なるほど、それでは自身のワイルドさを究極まで高める事が出来たチームが優勝する、という考えでよろしいでしょうか?」

「十中八九そうだな」

「言い換えれば、今大会は大食い対決というよりも、ワイルド量を競い合う対決でもある訳ですね⁉︎」

「俺はそう見てる」

「さすが、ワイルド界の大御所。ギングオブワイルド。我々とは目の付け所が違うようですーーーーおぉっと! 選手の一部から早くしろとクレームが上がり始めました。テキーラ従業員、このクレームに対し腰を綺麗に九十度折り曲げて丁寧にクレームを迎え撃ったぁぁぁ! この丁寧な対応に選手達もたまらず再び椅子に腰を下ろしました。戻りまして、さて、今回予選で提供される揚げ物屋テキーラのミックス揚げですが、我がベネツィの町のB級グルメ10年連続一位の人気メニューでありましてーーーーあーっと! 今、揚げ物第一陣が出来上がった模様です! 地獄の釜の如きフライヤーの油の中からは、こんがりとキツネ色をした熱々の揚げ物達が今まさに産声を上げました! 流れ作業ですぐさま皿に盛られて控えていたスタッフによってすぐさま選手達の待つテントへと運ばれていきます。戻りまして、毎日オープン前の店先には長蛇の列が出来るほどの大人気で、ベネツィの町に毎年何千人も訪れる旅人達が持つ冒険者ガイドブックのグルメ欄、その一・二ページに堂々と紹介されるほどの大人気店なのであります。ドイルさんは揚げ物屋テキーラを召しが上がった事は?」

「はっ! 赤ん坊の頃からしょっちゅうよ!」

「それはまたワイルドな事でーーーーあーっと、大広場に動きがあったぁぁぁ! 揚げ物を運ぶスタッフとそれを待ち兼ねた選手が大広場中央付近にてぶつかり合っています!」




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