繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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ベネツィ大食い列伝

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「パティくーん、アリーちゃーん、ねえちょっとだけでもいいから、出場してみようよー。こういうのは商品が欲しいから出るとか、優勝出来きそうだから出るとかじゃあ無いんだよー。自分自身の限界を知るため、能力を向上させるために出るものなんだからさー。こういうのは積極的にチャレンジしていかないとさー、何事にも挑戦しないつまらない毎日を送る事になっちゃうんだよー? やっぱりほら、常に少しづつでも成長し続けたいじゃないかー。だからさー、出ようよー、頑張ってみようよー」

 と、何とか二人がやる気になってくれるように食い下がっていると、

「はぁ……分かったよ、出るよ。出ればいいんでしょ?」

「そこまで言われてしまうと、こちらとしても断る理由はないと言えば無い訳ですし……タケルさんが言うように何事にもチャレンジする心は大事だと思います」

「君達……」

 ようやく二人がやる気になってくれた。と言っても、あまりに控えめなやる気だが。

 そして、なんだか子供のように駄々をこねて無理矢理に付き合ってもらった感は否めないが、そこは俺の考えすぎだろう。

 そうに違いない。

「では諸君、開催場所に向かおうではないか!」

「ふぅ。でもついさっき遅めの朝ご飯を食べたばかりだよ? 食べ過ぎて気持ち悪くなっちゃうんじゃない?」

「それもそうだよね。食べ過ぎは身体に毒って言うし、気を付けないといけないね」 

「波を乗り越えるたび、壁を乗り越えるたび、君達はどんどん強くなるのさ……」

「そんな急に格好つけて言われても……」

「ええ。反応に困ります……」

 くっそう、なんなんだこの温度差はこれじゃまるで俺が子供みたいじゃないか。

 しっくり来なくもない例えだった。

「行くぞ! パティ君、案内よろしくさん!」

 そうして俺達は気持ちを一つにして大食い大会の会場がある一番街へと向かった。

 ベネツィの町の中心部に位置するタイクーン城。そのタイクーン城の根元の部分が割と近くに見ることが出来る一番街の大広場。その広場は普段から解放されており、天気が良い日はお弁当を持ってピクニックをしたり、気の合う仲間と集まりスポーツに興じたり、のんびりと日向ぼっこを楽しんだりしている。そしてカルロス陛下がときおりふらりと現れては大の字なって大きなイビキをかきながら眠る場所でもある。

 そんな一番街の大広場には大きな特設会場が設営されていた。

 それは町民による大運動会などで度々姿を現す天井だけが取り付けられた特大のテントがいくつも立てられていて、真上から見るとちょうどカタカナの『コ』の字型のように立ち並んでいる。テントの中には長テーブルがあって、若い男性が各テントを繋ぐように綺麗にテーブルを並べている。『コ』の字型に立ち並ぶテントの中央部の広場では子供達が大はしゃぎでかけまわっており、大食い大会の実況本部なのか、全体を見渡せるように長テーブルが二つ並べられている。テーブルと一緒に椅子が六脚置かれていて、六脚のうち四脚は使用中である。実況本部のやや後方では美味しそうな匂いが立ち込める特設のキッチンがあって、数十人の奥様方とお姉様方が大鍋をかき混ぜ、せっせと料理の支度を行なっている。

 ぎゅるりと、腹の虫が匂いにつられて飛び起きたようだ。
 
 全体をざっと見渡しただけでおよそ五百人くらいの人がいるんじゃないかと思わされるほどの人でごった返している。

 が、

 そんな大勢の人がいるのにも関わらず、この一番街大広場は全くと言っていいほど狭苦しい印象がなく、更に五百人、なんなら千人の収容も余裕でこなしそうなほどその広大な土地面積を誇っていた。

「うわぁ! なんかすっごい人! なんだかお祭りみたい!」

「すごい……こんなに大勢の人達が一箇所に集まるだなんて、なんだか凄くドキドキしてきた。ちょっと怖いくらい……」

「ぬわはっはっはっはっは! そうだろうそうだろう。こういうイベントごとは多くの人が集まるからもの凄いエネルギーを帯びるんだよ。魔法とは違う見えないエネルギー。ここにいるだけで何だか胸がドキドキしてワクワクして、今すぐ走り出したくなっちゃうだろう?」

「うんっ! 何だか僕、元気になってきた!」

「にゃー!」

「あ、じろうちゃんも起きたみたい。じろうちゃんにも見えないエネルギーが伝わったのかな?」

「かもしれないね。見えないエネルギーはここにいる皆に作用する筈だから。さてさて、締め切られてしまう前に早く大会のエントリーを済ませてしまおう!」

「「はい!」」

「んにゃー!」

 俺達は高鳴る胸の鼓動をそのままに大広場へと向かって走り出した。






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