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ベネツィ大食い列伝
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「さてさて……」
お買い物をするのはいいが、この巨大なベネツィの町に所狭しと建ち並んだ数多くの武器防具屋さんの中から、どうやってお店を選べば良いのだろう?
店ごとに特徴やコンセプトがある筈だから、適当に入った一件で全ての買い物が終わるとはさすがに考えにくい。
となると、ここはやはり地元民に聞くのが一番か。
「パッティーくーん! お買い物はどこのお店がいいのだろう?」
「うん……地元民だけど僕も詳しい方じゃないからね……」
ふむ。それもそうか。パティの様な子供には普通何の縁もないようなお店だろうからな。それでも将来、騎士になるのを夢見るパティであれば武器に対する憧れのような物は少なからずある筈だから、もしかしたらと思ったのだがあてが外れたか。
「予算の面も当然あるけど、とりあえず僕の知ってるお店に行ってみる? 僕やお姉ちゃんが装備出来そうな、軽装備を主に扱っているお店なんだけど……」
「なんだ、知ってるんじゃないか。いいよ、とりあえずそのお店に行ってみよう」
そういう訳でパティの案内により、三番街にある軽装備を主に扱っているお店へと向かった。
その道中、宿から約10分ほど歩いたところで壁一面に貼り出されたチラシを発見し足を止めた。
「なになに……?」
チラシにはこう記されている。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
《第一回ベネツィ大食い大会開催のお知らせ》
大食い自慢の紳士淑女の皆様、育ち盛りのお子様方、老若男女問わず奮ってご応募ください。
チャレンジメニュー、地元の食材を使った特盛りコース料理。
開催場所、一番街大広場の特設会場。
一組三人まで。
※料理の量は変わりませんが一組一人でも二人でも構いません。
当日飛び込み参加大歓迎!
優勝商品、屋台(博多一号)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーーっんなにぃ⁉︎ 屋台だと⁉︎」
「あー。そう言えば確か今日だね、この大食い大会。特別町長のカルロス様の思い付きで今年から始まるんだよ」
「紳士淑女の大食いって、なかなか想像出来ませんね……」
「あれ?」
なんか反応薄いな……ならばもう一度。
「んなにぃ⁉︎ あの! 屋台だとぅぅぅ⁉︎」
「どうしたのアニキ? また構って病が出たの?」
またとは何だ。またとは。
「どうしたんです? タケルさん」
ふむ。屋台の重要性、価値を知らないこの子達に期待通りのリアクションを求めるのは、いささか可哀想か。
「この大会の優勝商品である屋台という物なのだが……実はとんでもなく高価で、旅をするにおいてとんでもなく重要な物なんだ」
「そうなの? どのくらい重要なのさ? もの凄いの?」
あまり興味がないといった具合にパティは聞いてくる。
ふふん。そうしてられるのも今のうちだけだぜ? 屋台の実力を知ったが最後、喉から手が出るほど欲しくなっちゃうぜ?
俺はパティとアリシアを視界正面に捉えて、ややドヤ顔で言う。
かなりドヤ顔になっているかも知れない。
「屋台とは、簡単に言うと動く宿屋である!」
「えー⁉︎ 宿屋が動くの⁉︎ どうやって⁉︎」
「えぇっ⁉︎ いくらなんでもそれは冗談でしょう? まさか宿屋から羽根が生えて空を飛ぶとか……それは流石にないか。じゃあ、でっかい鳥の背中に建てた宿屋とか⁉︎」
うむむ。
期待通りのリアクションは頂けたが、屋台に対する想像がもの凄い事になってしまった。
せっかくの夢を壊すようだが、軌道修正しないと。
「あ……あのね、ごめん。比喩が的確ではなかったから語弊があったみたい。正確には宿屋ではなく、食堂……かな? 動く食堂。だから近くに町が無くても、いつでもどこでも温かい食事を頂く事が出来るらしいんだ。戦いで疲れた身体も温かい食事を食べる事で回復出来る。長旅にはもってこいのアイテムだね」
「食堂に羽根が生えてるの?」
「鳥の上に食堂を建てたんですか?」
ぬぅ。
屋台の外観ばかりに注目して、一番重要な食事システムについては全くと言っていいほど目を向けてくれない。
「いや……俺もまだ見たことはないんだけど、さすがに空は飛ばないんじゃないかな? あくまでも恐らくだけど……」
「そうなの? つまんないの。じゃあ、いらないんじゃない?」
「私の中ではかなり可愛い感じに仕上がっていたんですけど、どうやら想像とは大きくかけ離れていそうですね。残念です」
なかなか乗り気になってくれない二人であった。
お買い物をするのはいいが、この巨大なベネツィの町に所狭しと建ち並んだ数多くの武器防具屋さんの中から、どうやってお店を選べば良いのだろう?
店ごとに特徴やコンセプトがある筈だから、適当に入った一件で全ての買い物が終わるとはさすがに考えにくい。
となると、ここはやはり地元民に聞くのが一番か。
「パッティーくーん! お買い物はどこのお店がいいのだろう?」
「うん……地元民だけど僕も詳しい方じゃないからね……」
ふむ。それもそうか。パティの様な子供には普通何の縁もないようなお店だろうからな。それでも将来、騎士になるのを夢見るパティであれば武器に対する憧れのような物は少なからずある筈だから、もしかしたらと思ったのだがあてが外れたか。
「予算の面も当然あるけど、とりあえず僕の知ってるお店に行ってみる? 僕やお姉ちゃんが装備出来そうな、軽装備を主に扱っているお店なんだけど……」
「なんだ、知ってるんじゃないか。いいよ、とりあえずそのお店に行ってみよう」
そういう訳でパティの案内により、三番街にある軽装備を主に扱っているお店へと向かった。
その道中、宿から約10分ほど歩いたところで壁一面に貼り出されたチラシを発見し足を止めた。
「なになに……?」
チラシにはこう記されている。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
《第一回ベネツィ大食い大会開催のお知らせ》
大食い自慢の紳士淑女の皆様、育ち盛りのお子様方、老若男女問わず奮ってご応募ください。
チャレンジメニュー、地元の食材を使った特盛りコース料理。
開催場所、一番街大広場の特設会場。
一組三人まで。
※料理の量は変わりませんが一組一人でも二人でも構いません。
当日飛び込み参加大歓迎!
優勝商品、屋台(博多一号)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーーっんなにぃ⁉︎ 屋台だと⁉︎」
「あー。そう言えば確か今日だね、この大食い大会。特別町長のカルロス様の思い付きで今年から始まるんだよ」
「紳士淑女の大食いって、なかなか想像出来ませんね……」
「あれ?」
なんか反応薄いな……ならばもう一度。
「んなにぃ⁉︎ あの! 屋台だとぅぅぅ⁉︎」
「どうしたのアニキ? また構って病が出たの?」
またとは何だ。またとは。
「どうしたんです? タケルさん」
ふむ。屋台の重要性、価値を知らないこの子達に期待通りのリアクションを求めるのは、いささか可哀想か。
「この大会の優勝商品である屋台という物なのだが……実はとんでもなく高価で、旅をするにおいてとんでもなく重要な物なんだ」
「そうなの? どのくらい重要なのさ? もの凄いの?」
あまり興味がないといった具合にパティは聞いてくる。
ふふん。そうしてられるのも今のうちだけだぜ? 屋台の実力を知ったが最後、喉から手が出るほど欲しくなっちゃうぜ?
俺はパティとアリシアを視界正面に捉えて、ややドヤ顔で言う。
かなりドヤ顔になっているかも知れない。
「屋台とは、簡単に言うと動く宿屋である!」
「えー⁉︎ 宿屋が動くの⁉︎ どうやって⁉︎」
「えぇっ⁉︎ いくらなんでもそれは冗談でしょう? まさか宿屋から羽根が生えて空を飛ぶとか……それは流石にないか。じゃあ、でっかい鳥の背中に建てた宿屋とか⁉︎」
うむむ。
期待通りのリアクションは頂けたが、屋台に対する想像がもの凄い事になってしまった。
せっかくの夢を壊すようだが、軌道修正しないと。
「あ……あのね、ごめん。比喩が的確ではなかったから語弊があったみたい。正確には宿屋ではなく、食堂……かな? 動く食堂。だから近くに町が無くても、いつでもどこでも温かい食事を頂く事が出来るらしいんだ。戦いで疲れた身体も温かい食事を食べる事で回復出来る。長旅にはもってこいのアイテムだね」
「食堂に羽根が生えてるの?」
「鳥の上に食堂を建てたんですか?」
ぬぅ。
屋台の外観ばかりに注目して、一番重要な食事システムについては全くと言っていいほど目を向けてくれない。
「いや……俺もまだ見たことはないんだけど、さすがに空は飛ばないんじゃないかな? あくまでも恐らくだけど……」
「そうなの? つまんないの。じゃあ、いらないんじゃない?」
「私の中ではかなり可愛い感じに仕上がっていたんですけど、どうやら想像とは大きくかけ離れていそうですね。残念です」
なかなか乗り気になってくれない二人であった。
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